資産1億円以上の資産家が気になる内容を抜粋! 2023年税制改正内容

はじめに

2022年12月に2023年税制改正が発表されました。特に資産家の方々は確定申告や法人決算が近くなると少しずつ考え出すのが税金の対策なのではないでしょうか。税金対策を行う上で、税制の変更点を知ることは切っても切り離せない関係にあります。一方で、どの改正内容が自分に関係があるのか分からないという富裕層の方も多いと思います。

株式会社ウェルス・パートナーに所属する税理士の三輪有香と申します。私は富裕層の方々の資産形成や税務最適化のお手伝いをしております。

今回は個人収入が高く、資産管理会社等の管理・検討を行う機会が多い富裕層の方々だからこそ、知っておいた方が良い税制改正の内容について絞ってご紹介したいと思います。税制は各年によって少しずつ変更されることが常ですので、知識をいれ、間に合う対策を行い、しっかり節税しましょう。

所得税

①【内容】NISAの抜本的拡充・恒久化

令和6年から制度が恒久化され、非課税期間は無期限となりました。現状の一般NISAとつみたてNISAの運用を一体化し、一般NISAは「成長投資枠」、つみたてNISAは「つみたて投資枠」として併用できるようになります。

主に、成長投資枠の年間投資上限額は240万円、つみたて投資枠の年間投資上限額は120万円、生涯非課税限度額は1,800万円(内成長投資枠1,200万円)となったため、富裕層の方々にとって投資額・非課税枠の増額が見込めます。

《生涯非課税限度額までのイメージ》
★つみたて投資枠のみを利用し、毎年上限額を投資した場合
120万円×15年=1,800万円 ⇒15年で生涯非課税限度額へ到達

★つみたて投資枠と成長投資枠を併用し、それぞれ毎年上限額を投資した場合
<つみたて投資枠> 120万円×5年=600万円
<成長投資枠> 240万円×5年=1,200万円
600万円+1,200万円=合計1,800万円 ⇒5年で生涯非課税限度額へ到達

【資産家へのポイント】
政府は現在1,000兆円とも呼ばれる家計に貯まっている現預金をいかに投資に回すかということに目を向けています。従来のNISAで既に投資している人も新たなNISAの利用は可能で、“累計1,800万円の生涯非課税限度額”を利用できます。特に資産1億円以上ある富裕層の方は、上記のイメージを参考に、この生涯非課税限度額を積極的に利用できると良いですね。

【内容】高額所得者の課税強化のための新たな所得税の仕組み創設

令和7年以降の株・不動産売却への影響に注意が必要です。

今までは特に富裕層、かつ、高所得者の方々ほど所得に占める株式等や土地建物の譲渡所得の割合が高いことから、高所得者層で所得税の負担率が低下するという逆転現象が生じていました。なぜなら、給与等は高額になるほど税率が上がる累進課税制度である一方、株式等や土地建物の譲渡所得の売却益に対する税率は一律で15.315%であるため、株式等の譲渡が多いほど税負担が低くなっていたのです。

そこで、今回の改正で新たに、極めて高い所得を有する方の所得税について最低限負担してもらう所得税を設定しようという趣旨で、課税強化税制が創設されてしまったのです。

具体的には、(基準所得金額*―3.3億円)×22.5%が基準所得税額を超える場合に、その差額金額に相当する所得税を課税するという仕組みが創設されました。

*ここでいう基準所得金額には、確定申告している給与所得、不動産所得、事業所得等の他、特定口座内の申告していない運用益等の所得も加算して計算する必要があります

【資産家へのポイント】
上記のことから、令和7年以降の株・不動産売却等の際には、今までより税負担を正しく理解し、資金管理する必要がでてきそうです。特に資産1億円以上の富裕層の方々にとって、株や不動産の所有を個人でするのか、法人でするのかの判断の見直しにも有用なタイミングといえるでしょう。

相続・贈与課税

①【内容】生前贈与の相続財産加算期間を3年から7年に延長

相続開始3年前までに生前贈与があった場合に相続財産に加算するという、相続開始前の生前贈与の期間が相続前3年間から相続前7年間に延長となりました。これらは、2024年(令和6年)1月1日以後の贈与より適用されますが、延長した4年間に受けた贈与については、合計100万円まで相続財産に加算はなしとなります。

つまり、2026年(令和8年)12月以前に相続開始の場合には加算期間は3年で今まで通りですが、それ以後(令和9年1月1日以降)に相続が開始した場合には最大で7年間遡り、贈与されたものは金額いかんに関わらず相続財産に加算されるので、特に富裕層の方は分散した贈与によって税負担を軽減するような対策はしづらくなってしまったといえます。

【資産家へのワンポイント】
ただし、7年先を見据え、相続で財産を取得しない孫世代への贈与は依然として、生前贈与加算の対象にはならないことから、より若年世代への早期・積極的な贈与対策の検討きっかけとなるのではないでしょうか。

②【内容】相続時精算課税の使い勝手が向上

相続時精算課税制度は、累計2,500万円の贈与までは、贈与時に贈与時の負担がなく贈与ができる制度ですが、相続時精算課税制度を選択してその方が亡くなった場合はその方の相続財産に相続時精算課税を用いて贈与した財産の全てを加算して相続税を計算することになります。

今までは、相続時精算課税制度選択後に追加の贈与があった場合には、1万円といった少額であっても、その都度贈与税の申告が必要でしたので、これがとても面倒なものでした。

今回の改正では、相続時精算課税制度を選択した場合、暦年贈与とは別に毎年110万円までの基礎控除が創設されたため、110万円までの贈与であれば贈与税の申告が不要、かつ、この110万円以下の贈与は相続発生時の相続財産への加算対象ともならなくなりました。
この基礎控除の取り扱いは、令和6年1月以後の相続時精算課税制度による贈与から適用されます。

また、相続時精算課税制度を選択して贈与した財産は、その「贈与時の評価額で相続財産に加算」されますが、令和6年1月以後、贈与財産が災害等により一定以上の被害を受けた土地・建物である場合には相続財産への加算額の再計算が今回の改正で行われることとなりました。

【資産家へのワンポイント】
基礎控除110万円という枠組みが導入されたことにより、相続時精算課税制度が今までより幅のある活用ができるようになったため、今一度、相続対策の見直しに検討してみるのも良いでしょう。

③【内容】教育資金等の一括贈与制度の延長

制度の廃止が検討されていた非課税特例である教育資金一括贈与の適用期限が、2023年3月末までから2026年(令和8年)3月末まで3年延長されることになりました。

教育資金の一括贈与は最大1,500万円(学校等以外への支出は500万円)まで非課税対象なのは変わりませんが、今回の改正で節税的な利用に繋がらないように、「相続時の課税価格が5億円を超える方の相続が発生した場合、かつ、その時に受け取った側が23歳未満である場合には、教育資金として費消していない残額について、相続税が課税される」ので注意が必要です。

その他にも、使い切れなかった教育資金等の残額に関して課される贈与税率も高くなった(一定税率を使用)ので、ご自身の年齢と状況・受け取る方の年齢と状況を吟味しつつ上手に活用できると良いでしょう。

【資産家へのワンポイント】
極端な話ではありますが、教育資金贈与に関して、残額が0になった場合には課税されません。そのため、まだ小さいお孫さん等、学校等の教育資金が必要な方へ、適正な金額の贈与を早めに行うことで、ご自身の相続対策になると共に、贈与した資金を有意義に次世代に渡すことができます。特に資産1億円以上の財産を持つ富裕層の方には、この制度の適用期限延長を上手に活用することお勧めしたいと思います。

④【内容】いわゆる「タワマン節税」について

マンションについては、市場での売買価格と相続税評価額が大きく乖離している(=相続税の評価額が低い)ケースが多数見受けられたため、乖離の適正化が検討課題であると挙げられています。これは、税法の改正ではなく、財産評価基本通達の改正の可能性が高いので、早ければ今年の春以降にも変更点が発表されるので、今後不動産による節税を考えている方には必見となります。

まとめ

今回は資産1億円以上を保有する資産家の方々に向けて関係のありそうな2023年税制改正内容に絞り、簡単に紹介しましたがご理解いただけたでしょうか。検討することが多く自分で考えるのが億劫という方は税理士など専門家に相談するのも良いでしょう。今回の記事が皆様の資産形成に少しでも役立つことをお祈りしております。