はじめに
債券投資は株式投資に比べて比較的安定したリターンが期待できるため、多くの投資家にリスク分散の手段として選ばれています。特に、長期債は満期までの期間が長いことから高い利回りが期待されますが、金利変動の影響を受けやすく価格リスクも増大します。そのため、選択には慎重さが求められます。この記事では、債券投資初心者が長期債を選ぶ際に考慮すべきポイントを詳しく解説します。
長期債のメリットとデメリット
長期債は投資ポートフォリオにおいて重要な役割を果たすことがありますが、それには明確なメリットとデメリットが存在します。ここで、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
長期債のメリット
高い利回り
長期債の最大の魅力は、他の債券と比べて高い利回りを得られることです。一般的に、債券の償還期間が長いほど、発行体が支払う利息は高くなります。これは、長期にわたって資金を貸し出すリスクに見合った対価として、投資家により高い利息を提供する必要があるためです。この高い利回りを活用することで、投資家は資産を増やせるのです。
金利変動に伴う価格上昇の可能性
長期債のもう一つの魅力は、金利変動に伴う価格上昇です。金利が下がると、市場に出回っている高利回りの債券の価値が相対的に上がります。これは、新しく発行される債券の利回りが低くなるため、既存の高利回りの債券により高い需要が集まるからです。この需要の増加により、長期債の価格が上昇し、債券保有者は元本の価格上昇による利益を得られる可能性があります。
安定した利息収入
長期債を満期まで保有する場合、定期的な利息収入を得られることも大きなメリットです。利払いのタイミングと金額が予め決まっているため、将来の収入を予測しやすく、長期的な資金計画を立てやすくなります。例えば、退職後の生活資金の一部を長期債で運用することで、安定した収入を確保できます。
リスク分散
長期債は、株式市場の変動に左右されにくいという特性があります。これは、株価が下落した際に、長期債がマイナスを緩和する効果を発揮することを意味します。そのため、長期債を組み入れることで、ポートフォリオ全体のリスク分散を図ることができます。適切な割合で長期債を組み入れることで、安定性の高いポートフォリオを構築できるのです。
以上のように、長期債は高い利回り、価格上昇のポテンシャル、安定した利息収入、リスク分散効果など、投資家にとって魅力的なメリットがあります。投資目的や市場環境を見極めつつ、長期債を効果的に活用することが、賢明な投資家の選択肢の一つといえるでしょう。
長期債のデメリット
金利変動リスク
長期債は、金利変動の影響を大きく受けます。金利上昇局面では、既発行の債券価格が下落するため、投資家は評価損を被るリスクがあります。長期債ほど、金利変動による価格変動幅が大きくなる傾向にあります。
売却の困難さ
長期債は償還期限が長期に及ぶため、投資家が必要な時期に債券を売却しにくい場合があります。市場環境によっては、適切な価格での売却が困難となり、流動性リスクが高まります。長期債投資では、売却タイミングの見極めが重要となります。
インフレリスク
長期的なインフレは、債券の実質的な投資リターンを圧迫する要因となります。特に固定金利の長期債では、将来のインフレ率上昇によって、受取利息の購買力が低下するリスクがあります。インフレ対策として、物価連動国債などの活用も検討すべきでしょう。
再投資リスク
長期債は償還までの期間が長いため、満期を迎えた際の金利環境によっては、利息収入の再投資先を低金利な商品に頼らざるを得ない可能性があります。再投資リスクを踏まえ、償還期限の分散を図ることが長期債投資では重要です。
長期債の選び方のポイント
クレジットリスクの評価
長期債は満期が10年後や20年後でかなり先になります。満期保有前提であれば投資した発行体が破綻することが一番のリスクです。
そのため破綻リスクが低い発行体を選ぶ必要があります。そこで発行体の信用力を客観的に示したものが格付けです。
格付けBBB-(Baa)以上の債券を投資適格債といい、相対的に信用力が高く、債務不履行(デフォルト)リスクの低い債券のことを指します。債券投資の際は基本的には投資適格債への投資をおすすめします。
なるべく普通社債から選ぶ
債券投資においては、債券の種類によってリスクと弁済順位(債務者が破綻した際の返済優先順位)が異なることを理解しておくことが重要です。一般的に、普通社債は他の種類の債券と比べて弁済順位が最も高く、リスクが低いと言えます。一方で、リスクが上乗せされた債券ほど、弁済順位は低くなる傾向にあります。
投資の意思決定を行う際には、将来の不確実性を考慮に入れる必要があります。現在は財務状況が安定していても、10年後や20年後の状況を正確に予測することは難しいでしょう。長期的な視点に立って投資を行う際には、あらゆる可能性を想定しておくことが大切です。
以上のことから、20年以上の長期債投資を行う場合は、弁済順位が最も高い普通社債を中心に選ぶことをおすすめします。これにより、将来の不確実性に備え、リスクを最小限に抑えながら、安定的なリターンを目指すことができます。ただし、投資家の個々の状況や目的に応じて、適切な債券の選択は異なる場合があることにも注意が必要です。
債券ポートフォリオは長期債の比率を高めすぎない
債券ポートフォリオの長期債の比率を高めるということは償還までの長い期間、発行体の破綻リスクを背負い続けることになります。
コロナショックやリーマンショックのような局面は10年に1度くらいはきますし、身動きが取れなくなる可能性があるので、債券ポートフォリオ構築の際は、長期債が中心ではあるもののメリットに飛びついて集中投資することは避けた上で、様々な年数の債券へ投資をしてバランスの良いポートフォリオを作るようにしましょう。
長期債投資初心者の注意点
リスク管理の重要性
長期債投資にはリスクが付きものです。自身のリスク許容度に応じて投資を行い、ポートフォリオのバランスを保つことが重要です。
初心者向けの長期債選びの考え方
長期債投資を始める初心者の方には、信用力の高い発行体が発行する国債や地方債から始めることをおすすめします。これらの債券は、他の種類の債券と比べてデフォルト(債務不履行)のリスクが低く、比較的安定的な利息収入を期待できます。
初めての債券投資では、リスクの低い商品から始めることが賢明です。国債や地方債への投資を通じて、債券投資の基本的な仕組みや市場の動向を学ぶことができます。また、これらの債券は流動性が高いため、必要に応じて売却しやすいというメリットもあります。
そして、一定の経験を積んだ後は、徐々に投資対象を広げていくことを意識しましょう。信用力の高い企業が発行する社債や、利回りの高い債券などに投資の幅を広げることで、ポートフォリオの多様化を図ることができます。ただし、リスクの高い債券への投資は慎重に行い、自身の投資目的や許容リスクに合わせて判断するようにしてください。
長期債の購入手順
債券取引口座の開設
銀行や証券会社で債券取引口座を開設しましょう。口座開設には必要な書類があるので、事前に確認して準備しましょう。
適切な長期債の選定
自身の投資目標やリスク許容度に合った長期債を選定しましょう。金利環境や発行体の情報を十分に調査して、慎重に選ぶようにしてください。
取引の実施と管理
長期債を購入した後は、定期的にポートフォリオのチェックを行い、必要に応じて調整を行うことが大切です。
まとめ
長期債の選び方や投資においての注意点を押さえながら、長期的な資産形成に向けて債券投資を始めてみてはいかがでしょうか。リスク管理をしっかりと行いながら、着実に資産を増やす道を歩んでいきましょう。
株式会社ウェルス・パートナー
ポートフォリオマネージャー
成蹊大学法学部卒業後、三菱UFJモルガン・スタンレー証券へ入社。富裕層と会社経営者を中心とした資産運用のコンサルティング業務に従事。 証券会社では金融資産に対しての提案しかできないことに違和感を感じ、金融資産だけでなく実物資産や相続対策を含めた資産全体の最適化提案がしたいと思い株式会社ウェルスパートナーに入社。富裕層、会社経営者の資産配分最適化。 具体的な金融資産の投資実行サポート。 資産管理会社設立から相続対策など税務最適化。 超富裕層のインターネット企業創業メンバーに特化した新規顧客開拓。