皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
はじめに
本日のテーマは、「否認リスクが高い会社オーナーの節税対策TOP3」です。会社を経営して利益が出ていると、当然、利益に対する税金がかかります。その税金を減らすための節税対策が、インターネットやいろいろなメディアで紹介されたり、コンサルティング会社などから提案されたりすることが多いと思います。そのような節税対策をすることで、税務調査が入り否認されてしまうと、税金を払うことになったり、+αで余分な税金を払う必要があったり、また、悪質性が高いと判断されると罪に問われるリスクがあり、さまざまな計画が狂ってしまいます。対策することによって、デメリットの方が多くなってしまう可能性もあるのです。今回は、節税対策を検討している会社オーナーの方が、改めてそのリスクを再認識するためにご参考にしていただければと思います。
TOP3発表
否認リスクが高い会社オーナーの節税対策TOP3の3位から順に発表します。
3位)個人との境界が曖昧になりがちな経費
経営者・オーナー・ご本人の出張費用、接待交際費、車両の利用や購入、役員の方がご自宅を会社で借りている場合は、法人負担が5割なのか8割なのかという負担割合、また、ご家族が会社でお仕事している場合の報酬水準などのように、個人と会社の境界線が曖昧になりがちな経費があります。このような個人の経費を法人に計上してしまうところが、よくある否認されやすいポイントではないかと思います。
接待交際費や報酬などの経費が合計で年間数百万円になることが多いと思います。仮に否認されたとしても、インパクトはさほど大したことはないかもしれません。少しはそういった費用があって、一部を会社の費用に入れている方はいらっしゃると思いますし、ほとんどの会社オーナーに関係があるという意味で、今回は、この個人との境界が曖昧になりがちな経費を3位に挙げました。
2位)国内不動産による相続税評価軽減
会社オーナーに限ったことではありませんが、会社オーナーがこの節税対策をすると、すごくインパクトのある相続税対策ができるという意味で、効果覿面であることも合わせてお伝えします。
会社オーナーの場合、資産の大半が自社株に偏っていることがあるので、自社株の相続税評価を下げることによって、大幅に相続税対策ができます。ご自身が保有している会社そのもので国内不動産を購入したり、持株会社で不動産を保有したりすることによって、相続税が大幅に軽減される可能性があるのです。
ただし、ご存知のように、2022年に最高裁で相続税評価は実際に否認され、納税者が敗訴した事例がありました。ですから、会社オーナーも、節税目的で国内不動産を保有することによって相続税評価が下がる効果を得るような対策は、否認されるリスクがそれなりに高いと思っていただいてよいと思います。
2位にしたのは、インパクトが大きいからです。どの程度投資するのかにもよりますが、例えば、国内不動産で一棟マンションを購入する場合は、かなり相続税対策になります。2022年に否認された事例では、追徴課税が3億数千万円でした。仮に否認された場合の金額のインパクト(ダメージ)は大きく、会社オーナーだけに限った話ではないので2位になりました。
1位)株式保有特定会社外し
会社の資産に占める株式に分類されるような資産の割合が50%以上の会社に関しては、相続税評価が高い方法で評価を計算しなければなりません。逆に、株式が50%未満であれば普通の評価方法になるので、相続税評価はさほど高くはなりません。
まずは、「株式保有特定会社外し」を説明しましょう。持株会社を運営していて、子会社があり、その子会社が利益を出し純資産がたくさんある場合は、この持株会社は「株式保有特定会社」になる可能性が高いです。この場合、相続税評価が高くなるので、持株会社で子会社の株式以外の資産をたくさん持つことによって、株式の保有割合を減らし、株式保有特定会社ではない状態にすることを、「株式保有特定会社外し(通称:株特外し)」といいます。
この対策も、利益が数億円以上、純資産が数十億円以上の会社オーナーという、一部の会社オーナーにしか関係のない内容になります。会社オーナー独自の節税対策で、仮に否認されると、インパクトも結構大きくなるでしょう。株特の状態から、株特ではない状態になった時の相続税評価は、多くの場合、数分の一程度に小さくなります。会社によっては、相続税や贈与税が数億~十億円単位で変わる場合も多くあります。金額のインパクトの大きさや、否認されるリスクの高さを考慮して1位としました。
今回の対策のようなことを検討している場合は、特に留意して、顧問税理士の先生とご相談しながら、あまりリスクがないような方法をいろいろと考えて検討される必要があると思います。
本日は「否認リスクが高い会社オーナーの節税対策TOP3」という内容でお届けさせて頂きました。
株式会社ウェルス・パートナー
代表取締役 世古口 俊介
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。
2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者1万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
メディア掲載情報:「m3.com」「ZUU online」「MONEY zine」「マネー現代」でコラムを連載中