2019
06/18
経済・マーケット

 

はじめに

2019年6月9日福岡市で開催されたG20にて、GAFAなどのIT企業の課税逃れを防ぐ国際的な「デジタル課税」の統一ルールを策定する方針を経済協力開発機構(OECD)が決めました。

OECDは2020年末を目途にルールを策定する予定ですが、米国のGAFAだけでなく中国のBATHのようなIT企業は金融市場の中でかなりの時価総額を占めているので日本・米国・欧州・中国・インドの利害が一致するにはかなりの時間がかかりそうです。

本記事では、「GAFAとは何か」からGAFAの「税逃れの実態」、「各国当局のコンセンサス」までを解説していきます。

GAFAとは?

GAFA(ガーファ)とは、米国の多国籍IT企業であるGoogle、Apple、Facebook、Amazonの頭文字をとったものです。

2019年2月時点でのGAFAの時価総額合計は日本円にして約300兆円(グーグルは82兆円、アップルは80兆円、フェイスブックは50兆円、アマゾンは86兆円)あります。
例えばGAFAの中で1番時価総額の低いフェイスブックは時価総額およそ50兆円(2019年2月時点)ですが、日本トップの時価総額を誇るトヨタ自動車は時価総額およそ20兆円です。

これだけ見てもGAFAの4社はかなり巨大な企業だと分かりますが、その他にも「アップルがつぶれるよりも先に日本がつぶれる」と言われるほどの規模です。

問題の「税逃れ」の実態


今回G20で話し合われたのはIT企業に課税するために「最低課税率を設ける」とのことです。
問題は有形固定資産を持たずタックスヘイブンを用いることもあるIT企業には法人税の抜け穴を通れるため税逃れをできるのです。

例えば、欧州委員会は既存企業の平均実効税率23.2%に対して、デジタル企業は9.5%と半分以下になっていることを問題視していて、2019年1月にはフランスは大手IT企業を対象に、ネット広告や個人情報の売買などに課税を始めることにしました。

2016年にも欧州委員会が、アップルがアイルランドで脱税を行っていたとして、アイルランド政府にアップルへ追徴課税するよう命令しました。欧州委員会はアップルが低税率のアイルランドに子会社を集め、不当に税負担を逃れていたと判断しました。

その後の2018年9月、アップルが総額143億ユーロ(約1兆7875億円)をアイルランド政府に支払いました(ちなみに法人税の実効税率は、日米や欧州主要国では約20%前後から30%前後であるのに対して、アイルランドなどの法人税率は10%台です)。

そして2019年4月にはイギリスとインドもデジタル税を始めるとのことです。

米アマゾンの2018年の税引き前利益は約113億ドルで、法人税負担は約12億ドル。税率は10%程度で済んでいるというのが現状です。
米国の非IT企業は、収入に占める納税率が平均で20%~30%なのに対し、IT企業は平均で10%弱といわれています。

日本でもグーグルの日本法人が利益をシンガポールに移していたとして、約35億円の脱税があったと指摘していたことが1月に判明しました。

このようなIT企業の低税率問題はリーマンショック以降の各国中央銀行による金融緩和でマネーが大量にIT企業に流れ込み、強者が弱者からマネーを奪っているという論理での課税になります。

IT企業は低税率の国に会社を置いて、高税率国の整ったインフラにタダ乗りしていると批判されています。

デジタル課税の統一ルール

OECDは2020年末を目途にルールを策定する予定ですが、各国当局や世論のより難航しそうです。

ちなみに、2020年からイギリスではデジタル課税の一環として無形資産の利用対価として支払額の2%の税を課しています。

そのような背景の中で6月8日にシンポジウムに参加したムニューシン米財務長官は、フランスや英国の税制案に懸念を示した上で、法人税の課税方式がIT企業のみに「狙い撃ち」になるので、不公平にならないようにどの企業に対しても同じ論理を持った課税ベースにすべきだとの意思を示しています。

中国の劉昆財政相は、IT企業に対する課税のための統一ルール策定に固執しすぎて課税方式が「各国当局の能力を超えてしまうのであれば問題」だとしています。

おわりに

このような一連の租税回避に加えアメリカ政府はGAFAに対し、独占禁止法(反トラスト法)違反の有無を調べる準備をしていることが6月5日のロイター通信により明らかになりました。

グーグルについては検索結果の表示で自社製品を優遇したり、オンライン広告市場における市場支配力を乱用したりしたという疑いがかかっています。
アマゾンは同社を利用する販売業者に対して大きな支配力を持っています。

独占禁止法問題が懸念される中、今回の問題も一段と加速したのでしょう。

IT企業は有形固定資産をほとんど持たずタックスヘイブンに子会社を置いて租税回避していたという事実もあるので、非IT企業と比較すると不公平に見えるかもしれません。

しかし、だからと言って課税ベースを企業ごとに変えるのは理論的に不公平を生むうえ、さらなるIT業界におけるイノベーションを阻害する可能性があります。
できるだけ政府が介入しない方が良いのではないでしょうか。

本記事の著者

世古口俊介
世古口俊介 代表取締役
プロフィール
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者3万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
当社での役割
超富裕層顧客の資産配分と税務の最適化提案。
特に上場会社創業者の複雑な相続対策や優良未上場企業の組織再編に注力。
同社の代表として書籍の出版や日本経済新聞、週刊東洋経済、ZUUonlineなど各種メディアへの寄稿、投資教育普及のために子供向けの投資ワークショップなどを開催。

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