【今更聞けない?!】米中貿易摩擦の本質的な問題は何か?〜米中の思惑の違い〜

オバマ前大統領の対中政策

オバマ前大統領の対中政策のマズさについては、早くから指摘されていて、当初、親中派と見られていましたが、台湾に武器売却を行うなど、その方向性が揺れ動いていました。

ヘンリ・キシンジャーは「新たな米中の冷戦時代に突入しつつある」と指摘しましたが、そのきっかけを作ったのがオバマ大統領と言われています。

急激な経済力をつけてきた中国を放置してきたかつてのアメリカ政府は、その警戒感から対中政策の見直しを求める動きが活発化する中、ようやく2011年にオバマ大統領は中国への抑止政策を進めると宣言しました。

その動きの具体化が、台湾への武器輸出であったり、ダライ・ラマ14世との会見であったり、キューバとの国交正常化交渉であったりします。これには、中国政府は猛反発をしました。

ところが、オバマ前大統領は、中国の軍事的覇権が東南アジア諸国に拡大しつつあることを問題視したのみで、対中貿易赤字は据え置かれたままでした。
トランプ大統領時代になり、大統領選の時から、対中貿易不均衡を是正すると公言していたトランプ大統領は就任後もそのことを外交の主軸に置いた政策を行うと宣言し実行してきました。

現在の米中関係は?

現在の米中関係を見たとき、中国には「世界中の製造業のサプライヤーとして貢献してきた」という自負があり、アメリカには知的財産権の侵害や、意図的な為替操作による外貨還流のやり方で世界中の富を収奪しているではないか、という言い分があります。

そこから硬軟入り混じったアメリカの対中戦略は、新たな局面に入ったと見るべきでしょう。言い換えれば、トランプ大統領になりはじめてアメリカが本腰で対中戦略の練り直しと踏み込みを始めたという言い方も出来ると思います。

そこが、とても重要な視点です。過去の大統領とその政権は、中国を軽視していたとは言いませんが、中東問題や対ロシア政策に傾注していた感が強く、東アジアの軍事的、戦略的問題には日本が防波堤になるだろうとの見立てでした。ところが、中国が原因で経済的に実害が発生したことがアメリカを動かすきっかけになりました。

また、軍事衝突は無いものの、中国による南沙諸島を含めた外洋進出政策は、東アジア全体の問題のみならず、アメリカの覇権を揺るがす問題に発展しかねません。

自由主義陣営、資本主義陣営の雄であるアメリカにとって、共産主義国家がのさばることは絶対的に阻止しなければいけない事態ですし、そのこと自体が新たな冷戦時代に突入することにも繋がります。

鄧小平の時代から、「世界に相対する最も効果的な手段は経済力である」ことに目覚めた中国は、改革開放の旗印を掲げ、世界の工場としての役割を担うことにより、世界に影響力を拡大しつつ国家の繁栄を築いてきましたが、同時にそれは、中国人が世界に進出することでもあったわけです。

グローバルサプライヤーとしての役割を担うには、諸外国の技術を積極的に取り入れながら、独自に技術革新を行なっていく必要があり、それはまた、新たなイノベーションを生むきっかけでもありました。

こうして力をつけてきた中国に対し、アメリカはその国民性や共に反映していく戦略をとる筈が、アメリカの富を収奪しているではないか!という思いになったのは、一つの大きな要因があります。それは、戦後復興を成し遂げ、世界第2位のGDPを実現した日本です。日本の技術力、国民性がアジア人のそれであるとアメリカ人が感じ取ったのは、当然と言えば当然かも知れません。日米安保を実現し、日本各地に米軍基地を配し、対東アジアの重要拠点となる日本は、その意味では戦後から現在にいたるまで二人三脚で歩んできたとも言えるでしょう。

中国が経済力をつけてくることで、あらゆるサプライヤーが米国企業とも連携を持ってきました。中でも、通信機器やIT産業全般で中国が果たしてきた役割は大きく、それ自体がアメリカのIT産業を支えてきたとも言えるでしょう。

トランプ大統領が中国との貿易摩擦はアメリカがゆるがせに出来ない段階に来ていると表現したのは、元を正せばアメリカの責任も大きいのですが、America Firstを掲げて大統領になったトランプは、国内世論に応える意味でもアメリカの国益に反すると思われる中国の台頭を野放しには出来ないのです。

また、北朝鮮のミサイル開発や、北朝鮮と繋がるイランの核開発も放置できない段階を迎えており、それらの国々を牽制する意味でも、北朝鮮の背後にいる中国に強硬な姿勢で臨むのは当然と言えます。
アメリカは対中関税の引き上げを行い、中国は報復関税をしかけていますが、実際にはその取引額において圧倒的に差があるため、どこまで中国が持ちこたえられるか?が焦点になっています。大統領選当時から対中貿易に対して強硬な姿勢で臨むと公言していたトランプ大統領に対し、中国は形だけの商談の覚書を交わすなど、実際に実現可能性の低いものばかりでしたが、トランプ大統領は2017年の対中貿易赤字が2750億ドルにのぼったことをキッカケに、対中関税の発動を行うこととなりました。

米中の貿易額の差は?


米中の貿易額の差が、これほどの関税対象額の開きを見せているのは、それはそのまま貿易不均衡を表していると言えるでしょう。

これらの差を抱えながら、アメリカは日本に対しF35の導入を促し、台湾に新たな武器売却を進めています。そして、更に中国を牽制するように、北朝鮮との融和の姿勢を見せています。

経済での圧力を高めながら、中国包囲網を狭めている印象があり、その一つの要因が、インドカシミール地方の国境問題であったり、太平洋からインド洋を経由する一帯一路構想への牽制とも言われています。

また、大阪で開催されたG20サミットに見られるような強固な日米同盟体制が大きな影響を与えていると見られます。最も象徴的だったのが、安倍総理を中心に、両脇にトランプ大統領と習近平首席が座っていた画像ではないでしょうか?

日本は韓国との関係に対し、毅然とした対応を見せています。日韓関係が悪くなることは中国を利するのは間違いないのですが、韓国は北朝鮮からも中国からも批判され、同盟関係であるアメリカとの関係にも齟齬が生じています。

米中の関税合戦が起きている中、朝鮮半島問題に手が出せない中国は、香港問題も一つのアキレス腱となっています。

まとめ

このような状況で米中のどちらがこの関税合戦のチキンレースに勝てるでしょうか?

中国が窮状を見せ始めると、アメリカは軟化して押し引きを見せるでしょう。

今のところ、中国が打てる手は限られていますし、最も中国が憂慮しているのは、為替操作国認定された人民元に対する扱いです。

仮に、アメリカが言うように人民元を完全自由化すれば、元安のタガが外れ、中国経済が雪崩を打って崩れていくことが予想されます。
習近平の本心は、それだけは回避したいというところではないでしょうか?

参照元
※https://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1605H_W1A111C1MM8000/
※https://ecodb.net/exec/trans_country.php?type=WEO&d=NGDPD&c1=CN&s=&e=
※https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/04/69f4a76b37a951e5.html
※https://www.cfr.org/backgrounder/china-north-korea-relationship
※https://www.unitedagainstnucleariran.com/north-korea-iran
※https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-48211304
※https://g20.org/jp/

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