元プライベートバンカー世古口が語る、私がプライベートバンクを辞めた本当の理由

はじめに

ウェルス・パートナーの代表である私(世古口)は以前にプライベートバンカーの仕事をしていました。現在はプライベートバンカーを辞めてウェルス・パートナーの代表になりました。

この仕事をしていると、富裕層の方からよく「どうしてプライベートバンカーを辞めたの?」と訊かれることがあります。

そこで今回は、私がなぜプライベートバンカーを辞めたのか、理由についてお話ししたいと思います。

▼今回の内容はYouTubeでもご覧いただけます

プライベートバンカーとは?

ドラマ『プライベートバンカー』は2025年1月から放映されているドラマです。

唐沢寿明さんが主演のプライベートバンカー役を演じており、私も元プライベートバンカーということもあり、興味を持って見ることのあるドラマです。

ドラマは「富裕層のプライベートバンカーが富裕層ならではのお金や世襲などの問題解決にあたる」といった内容になっています。

プライベートバンカーは「バンカー」という言葉から分かるように、銀行員です。

プライベートバンカーの仕事は富裕層の資産管理や資産運用になっています。銀行の中でも富裕層や資産家の資産にまつわる仕事をしている「銀行の一員」です。

ドラマでは「それって銀行員の仕事?」「もはやプライベートバンカーじゃなくて執事だよね」とツッコミを入れたいところも多々あるものの、あくまでフィクションとして楽しく見ています。

私のプライベートバンカーとしての経歴を簡単にご説明

私は新卒で日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)のプライベートバンカーになり、それからスイスの方でプライベートバンカーを勤めました。

それから三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレー証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画しました。

2016年にクレディ・スイスのプライベートバンカーを退職し、同年にウェルス・パートナーを設立して現在に至ります。

プライベートバンカーの良いところ

プライベートバンカーには「良いところ」もあり、一緒に仕事をする方やこれから金融系の仕事を目指す新卒の方などには、ぜひ良い面も知っていただきたいと思っています。

まずはプライベートバンカー経験者が感じている良い面についてお話しします。

  • 顧客が基本的に数億円以上の社会的な成功者や経営者なので、「自分もこうなりたい」とリスペクトできる
  • 優れた経営者も多く、お話しするだけでかなり勉強になる。視野も広がる
  • 会社を長年経験している方ややり手のビジネスマン、ビジネスの成功者ばかりなので自分も成長できる。優れた方はプレイベートバンカーにも一流を求めるので、仕事を任せてもらえるよう自然に成長できる
  • 富裕層の方と資産管理などを通じて仲良くなれる。イベントに招いてもらったり、旅行に誘われたり、など。普通に生活していたらなかなか行かないようなところに足を運ぶこともあり、勉強になる
  • 顧客が一度できると、その顧客はずっと顧客である。数億円以上預けてくれるお客様も少なくないので、多くの顧客を担当するより「ひとりのお客様に多くの時間を割く」仕事ができる
  • 数少ないお客様と「人と人」の付き合いができる
  • 証券会社などだと「売りたい金融商品」「提案すべき金融商品」が決まっているが、プライベートバンカーは自由度が高い。そのお客様に合ったものを時間をかけて練り、提案できる
  • 顧客の作り方も会社側から一任されるので、営業方法も自由度が高い。自分に合った営業方法を自分で考え、自分で選べる
  • 外資系のプライベートバンカーであれば結果を出せばそれなりの報酬がもらえる(私の場合は数千万もらっていた。プライベートバンカーで億はまず聞かない)

など、プライベートバンカーには魅力的な側面が多々あります。

こういった面に魅力を感じる方や、ぜひ金融系で働きたいという若い方は挑戦してみてはいかがでしょう。私自身はプライベートバンカーを辞めてしまいましたが、「やって良かった」「良い経験になった」と思っています。

私がプライベートバンカーを辞めた理由

私がプライベートバンカーを辞めた理由は3つあります。

理由①プライベートバンカーは不動産にタッチできないから

富裕層の方は資産の多くを「不動産」として持っています。しかしプライベートバンカーは原則的に不動産にはノータッチです。

お客様の金融資産の管理を任せていただく際「不動産にノータッチ」というのは、非常に辛いことです。不動産に触れないということは「不動産を含めてこうした方がより良い資産運用ができる」という提案ができません。また、金融資産全体の最適化も提案できません。

不動産も含め金融資産全体のことを考えて提案したかったからこそ、プライベートバンカーを辞めました。

理由②プライベートバンカーは超富裕層に特化し過ぎだったから

私が勤めていた外資系のプライベートバンカーでは、5億円に満たない預け金の顧客をスモールクライアントと位置付けていました。サービスもそれ以上の金額を預けてくれる顧客、つまり超富裕層に特化していました。10億円以上の預け金が普通の顧客、30億円越えが優良な顧客という感じでしょうか。

日本のプライベートバンカーにも言えることですが、10億円や100億円を出してくれる有名企業の創業一族や大株主などがメインの顧客で、数億円くらいの規模の顧客はあまり相手にしていない印象を受けます。

私個人としては「そこまで超富裕層に特化すべきか?」「超富裕層だけを顧客として見るのは、サービス提供側としてどうなのか?」と疑問があり、プライベートバンカーを辞めました。もっと広くいろいろな方とビジネスをしたいと思い、現在の会社設立に繋がっています。

理由③プライベートバンカーはあくまで社員のひとりだから

プライベートバンカーは自由度の高い仕事ではありますが、あくまでひとりの社員であり、ひとりの営業です。本社や経営者の方針には逆らえません。

私は外資系のプライベートバンカーをしていましたが、はじめは仕事や提案内容の自由度が高かったものの、5年くらい経つと「日本部門としてはこれくらいの利益を生まなければならない」「そのためには、顧客にもっとお金を出してもらわなければならない」という方針が薄く見えてくるようになりました。個人的にそのせいで、お客様に無理をさせること、意に沿わない資産運用や資産管理をさせることが嫌だったのです。

良い面で「提案や営業の自由度が高い」というお話をしました。ただ、経営者が変わると、どうしても自由度や方針が変わってきます。急に会社都合で「あれをやれ」「これをやれ」と言われるようになるわけです。会社の方針や利益のためにお客様に提案しなければならないとなると、それはもうプライベートバンカーではなく、証券会社と同じです。

プライベートバンカーとして仕事をしていて「自由度が変わってしまったな」と感じたからこそ、辞めてしまいました。

理由④プライベートバンカーという仕事に疑問を感じた

私はプライベートバンカー時代から「富裕層に、その方に合った最高の提案を」という理念で仕事をしてきました。ですが、勤め先の方針などの変化から私の理念で仕事をすることが難しくなりました。

自分の理念を大切にしながら仕事をしたいなら、その理念を活かした会社を作るのが一番である。そう考え、プライベートバンカーを辞めて現在のウェルス・パートナーを設立しました。

まとめ

私がプライベートバンカーを辞めた理由は、

  • プライベートバンカーは不動産にタッチできないから
  • プライベートバンカーは超富裕層に特化し過ぎだったから
  • プライベートバンカーはあくまで社員のひとりだから
  • プライベートバンカーという仕事に疑問を感じたから

の4つです。

ただ、プライベートバンカーには良い面もあります。

プライベートバンカーに興味のある方は、良い面と私の経験した悪い面の両方を参考にしていただければと思います。

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