目次
はじめに
皆さん、こんにちは。株式会社 ウェルス・パートナー 代表の世古口です。
今回は、2024年の米ドル債券投資・完全攻略ガイドとして、米ドル債券ポートフォリオ最新設計例についてお話いたします。
米ドル債券ポートフォリオ最新設計例(2023年12月20日時点)
2023年12月20日時点の債券の条件を持って私が組んだポートフォリオをみていただければと思います。
この表は、16の債券に2,000万円ずつ投資しており、全体で3.2億円の債券ポートフォリオ設計になっています。
発行会社は、業種や国(①)が左側の列になっていて、さまざまな業種がありますが、比較的銀行や保険会社、ITの会社が多くなっています。それから、自動車関連の会社もあり、国でいえばアメリカが多く、他にはイギリスや日本、メキシコもあります。
債券の種類(②)は、基本的に国債の次にリスクが低い普通社債が多く、一部に期限付き劣後債も含まれているのが特徴です。16の債券中、5債券が劣後債です。
通貨はすべて米ドル(③)で、金額は先ほどお伝えした通り2,000万円ずつです。
債券の格付け(④)をみると、一番上の債券はBBで、2つ目の債券はBB+、つまり先ほどお伝えした低格付け債ということです。4つ目の債券はBB+で、低格付け債も16債券中3債券含まれています。
ただし、このような格付けの低い債券が多いわけではなく、ポートフォリオ全体でいえば、一番下のBBB+という格付けになっています。
この格付けのリスクイメージとしては、先ほど格付けごとの倒産確率でみていただいた表を思い出してください。10年間保有したとして、BBBの格付けは倒産確率が3%程度なので、これくらいのリスクをとって投資するポートフォリオということです。
発行体格付け(⑤)は平均でA-です。債券格付けより高くなっているのは、劣後債の債券格付けが、発行体格付けよりも低くなっているためです。
右側の残存年数(⑥)、お金が返ってくるまでの期間は、年数が短い順に並べてあり、上から4年、6年、7年、8年、9年、13年、16年・・・とバラバラにお金が返ってくる設計になっているのですが、この点については後ほど詳しく説明します。
全体的に期間の長い債券が多く、9債券が残存年数10年以上の債券になっていて、ポートフォリオ全体の残存年数は平均で12.4年です。
年利回り(⑦)は、ポートフォリオ全体の平均で5.1%です。運用している金額が3.2億円なので、3.2億円×5.1%が利回りベースの収益性ということになります。
つまり、為替の水準が変わらなければ、大体年利回りベースで1,632万円というのが、このポートフォリオ全体の収益になります。
設計ポイント
それでは、紹介した債券ポートフォリオ設計のポイントについて、お伝えしたいと思います。
ポイントは4つあります。
平均年利回り5.1%(米国債上乗せ+1.2%)
1つ目は、ポートフォリオ全体の平均利回りが5.1%という点です。
なぜ、平均利回りを5.1%に設定したかといえば、米ドル債券投資を行う方の多くが、概ね5%程度の利回りを目標としているからです。
5.1%といえば、現在(2023年12月20日)のアメリカ10年国債の利回りが3.9%なので、1.2%を上乗せするということです。社債や劣後債を少し織り交ぜた内容となっていますが、米国債より過度にリスクをとることなく、1%強の利回りをとりにいっているということです。
低格付け債と劣後債を活用し利回り底上げ
2つ目は、低格付け債と劣後債を活用して利回りを底上げしているという点です。
今回のポートフォリオをみると分かるように、16債券のうち低格付け債が3債券、劣後債が5債券入っています。
現在(2023年12月20日)のアメリカ10年国債の利回りが3.9%なので、低格付け債や劣後債を活用して、この利回りを作り上げているということです。
問題は、2024年に10年国債の利回りが3.9%から下がった時です。
私の予想どおり、2014年12月末までに3.0%程度まで下がった場合、米国債プラス2%でないと5%の目標を達成できません。
したがって、より低格付け債や劣後債をうまく活用していく必要が出てくるわけです。
低格付けは期間10年以内、高格付けは期間20年以上
3つ目は、低格付け債や劣後債を活用する際のポイントなのですが、「低格付け債は期間10年以内、高格付け債は期間20年以上」という点です。
ポートフォリオをみると分かるのですが、格付けがBB+以下の低格付け債に関しては投資リスクが高いため、期間があまり長くない債券を中心に組み入れ、基本的に期間10年以内に返ってくる債券だけに限定しています。
一方、格付けがA-以上など高格付けの債券、AAやAAAの債券は倒産リスクが低いため、基本的に期間20年以上の債券が多くなっています。
したがって、ポートフォリオ全体で期間をバラバラに組むのではなく、意識して期間が短い債券は格付けが低いものを組み込み、利回り全体を底上げする。期間が長い債券に関しては、高格付け債で固めポートフォリオの土台を作って、全体の平均格付けを上げるというのが大事なポイントになると思います。
このような工夫は、2つ目のポイントであげたように、より低格付け債や劣後債をうまく活用する場面で必要になってくると考えています。
平均残存12.4年と長く、償還時期は適切に分散
最後に、4つ目のポイントは、残存年数は長く、償還時期は適切に分散させるという点です。
今回のポートフォリオの平均残存年数は、12.4年ということで比較的長くなっています。
何も考えずにポートフォリオを組むと、10年あるいは10年弱になることが多いのですが、意識的に長い債券を組み込むことで、12.4年という平均残存年数になっています。
これは、投資戦略ででもお伝えした通り、現在の高い金利で長期間固定したいということで、超長期債を比較的多く組み込んでいるためです。
加えて、ポートフォリオでもお伝えしたように、数年ごとにお金が返ってくるような債券を組み合わせているのもポイントです。
つまり、償還のタイミングを分散しているということです。
例えば3年後に返ってくるような債券ばかりだった場合、償還時にコロナ禍の時のような10年国債の利回りが1%や2%となっていたら、再投資する際の投資先がないか、もしくはポートフォリオ全体の利回りが大幅に低下してしまいます。
このようなことにならないように、償還のタイミングをずらすことによって、再投資する際の利回りを分散できるような効果を得ているわけです。
以上、これらの工夫をしながら、ポートフォリオを設計していくことが大切なのだと考えています。
とりわけ、2024年はアメリカの金利低下が予想される中で、債券ポートフォリオ全体の利回りを底上げするため、いかに低格付け債や劣後債を活用していくのか。また、これらを活用するのはリスクをとることなので、いかにリスクを最小化するのかという点がポイントになってくると思います。
まとめ
最後に、「2024年の米ドル債券投資・完全攻略ガイド 【年末特別版】」をまとめていきたいと思います。
ポイントは4つあります。
2024年は利回りが低下傾向と思った方がいい
1つ目は、何度かお伝えしたとおり、2024年は米ドル債券の利回りが低下していくと考えた方がよいということです。
実は、1年前の2022年の年末にも「2023年は金利が低下するだろう」という予想があったのですが、予想に反して2023年は金利が上がるということがありました。
しかし2024年は、より高い確率で、概ね8割くらいの確率で金利が下がると考えておいた方がよいと思います。
期間が「長い」債券にできるだけ「早く」投資する
2つ目は、金利が下がって行く中で、期間の長い債券に可能な限り早く投資するということです。
現在(2023年12月20日)の金利が一時期より下がったとはいえ、4%程度あって普通よりは高い状態にあるので、できるだけ早く今の高い金利で長く固定する、超長期債などで高金利の恩恵を享受できるような設計にするのがポイントになると思います。
希望利回り高い場合は劣後債、低格付債の活用がカギ
3つ目は、希望の利回りが高い場合には、劣後債や低格付け債の活用がカギになるという点です。
現在(2023年12月20日)の利回り4.0%より低い、3.5%や3.0%に下がった時の方が、劣後債や低格付け債を使わないと希望利回りを達成できない可能性があるので、金利が下がれば下がるほど、劣後債や低格付け債の活用がカギになってくると思います。
2024年の米ドル債券投資はIFAの腕の見せどころ
最後の4つ目は、2024年の米ドル債券投資はIFAの腕の見せどころであるという点です。
基本的に劣後債や低格付け債は、ネット証券で購入できない場合が多いです。
したがって、2024年はIFAや証券会社、プライベートバンクなど、金融や債券のアドバイザーの腕の見せどころといえるかと思います。
逆に、2023年は米国債や日本のメガバンクの債券を買っておけば、普通に5%の利回りがとれたので、ある意味でIFAや金融アドバイザーのアドバイスは不要な場合も多かったと思います。
これが、2024年には同じような債券に投資しても、利回りは3%や4%くらいになる可能性が高いので、劣後債や低格付け債を組み込まなくてはならないと考えています。
劣後債や低格付け債は、リスクもそれなりにあり、そもそもIFAや証券会社の力がないと購入すらできないので、2024年はIFAの腕の見せどころなのだと考えています。
以上、今回は「2024年の米ドル債券投資・完全攻略ガイド「米ドル債券ポートフォリオ最新設計例」という内容をお届けさせていただきました。
株式会社ウェルス・パートナー
代表取締役 世古口 俊介
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。
2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者1万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
メディア掲載情報:「m3.com」「ZUU online」「MONEY zine」「マネー現代」でコラムを連載中