目次
はじめに
皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
本日のテーマは、「【最新版】富裕層が選んだ米ドル社債の発行会社」です。米ドル債券の中でも会社が発行している債券のことを社債といいます。このような米ドル社債に投資するときは、その発行会社(社債を発行している会社)にお金を貸すことになるので、その発行会社が破綻するリスクを取るわけです。ですから、この発行会社がどのような会社なのか、どのような信用力で、どのような財務状況で、本当にお金を貸していいのかどうか、その社債に投資していいのかどうかが非常に大事です。
そこで今回は、2024年の1年間を通して、当社富裕層のお客様[※1]のポートフォリオへの組み入れ割合[※2]が高かった米ドル社債の発行会社をランキング形式[※3]でご紹介します。
情報ソース
- ※1: 当社顧客データ(2024年1月1日~12月31日集計)
- ※2: ポートフォリオへの組み入れ割合は、顧客全体の米ドル社債投資額に占める各発行会社の投資額割合で算出
▼今回の内容はYouTubeでもご覧いただけます
富裕層が選んだ米ドル社債の発行会社
お伝えするのは、発行会社・格付け・時価総額の4項目です。
発行会社は個別名をお伝えします。格付けとは、発行している会社の信用力を表します。どのくらいの確率で破綻するのかを計測するために使う、債券投資において一番のリスク判断材料になっています。ここでは、アメリカの大手格付け会社S&Pの格付けをお伝えします。時価総額は、会社の株式を発行している価値の総額です。その会社の規模感や利益感、どれぐらいの会社のイメージなのかを表しています。
例えばトヨタ自動車の場合、皆さんよくご存知だと思いますが、時価総額が日本で一番大きい自動車会社です。時価総額は40兆円くらいなので、同程度の時価総額の会社であれば、会社の株式価値が同じくらいなので、トヨタ自動車と同じくらい存在感がある会社と考えられます。三菱UFJグループは日本で一番大手の銀行グループです。時価総額は22兆円なので、それに近いような会社であれば、同じぐらいの規模感と考えることができます。そのような参考のために、時価総額をお伝えします。
では、2024年の富裕層が選んだ米ドル社債の人気発行会社ランキングTOP5の5位からお伝えしていきましょう。
ソフトバンクグループ
ソフトバンクは携帯の通信事業を行っているソフトバンクと、その親会社(持株会社)であるソフトバンクグループの2つがあります。こちらは、その持株会社のソフトバンクグループですのでご留意いただければと思います。
格付けはBB+なので、この発行会社の格付けにおいては低格付けとなっています。BB+以下は低格付けに分類されます。非常に人気は高いのですが、低格付けの格付けBB+というのがソフトバンクグループのイメージです。
時価総額は約13.2兆円です。日本の中ではかなり時価総額が大きい方ではありますが、海外の大手企業と比べると、それほど大きくない規模の時価総額といえると思います。
では、なぜこのソフトバンクグループが5位で、2024年に富裕層の方に人気だったのでしょうか。ソフトバンクグループの社債は格付けが低い分、結構利回りが高いからです。利回りがある程度高く、2024年は劣後債ではなく普通社債でも利回り5%以上であることが非常に多くありました。また、残存期間(お金を投資してから返ってくるまでの期間)が5年以内など短い残存期間の債券が非常に多く、短期間で高い利回りが得られる発行会社になっています。
意外かもしれませんが、そのように残存期間が短めで高めの利回りが得られるような債券を発行している発行会社はあまりありません。ですから、残存期間が短めの5年や10年以内の債券でどれにするか選ぶのは結構難しいことです。その中でソフトバンクグループの債券を短めの残業期間で組むことによって、短い債券でも高い利回りを得ることに貢献してくれるということもあり、2024年は結構人気だったのかと考えています。
さらに普通社債よりもリスクを取っている劣後債の中でも、永久劣後債という債券があります。満期がなく、会社が倒産したときにお金が返ってくる順番が普通社債よりも遅くなりますが、そのようなリスクを取ることによって、さらに普通社債よりも高い利回り+1%や1点数%という高い利回りを得るという債券です。この永久劣後債という選択肢も、このソフトバンクグループの場合は、発行している債券によってはあります。ですから、そのように高い目標利回りの富裕層の方に人気だったのがソフトバンクグループとなっているのです。
属性では、特に経営者の富裕層の方に絶大な人気があると思っています。日本の経営者の中でもソフトバンクグループの孫社長はカリスマ的な存在なので、孫社長が経営している会社であれば、債券に投資してもよいだろうと考え、投資される方が多いというのが特徴かと思います。
コカ・コーラ
皆さんご存知のコカ・コーラで、大元のアメリカ本国の会社です。格付けはA+と非常に高格付けで、日本国債と同等です。時価総額は約41.6兆円なので、日本で一番時価総額が大きいトヨタ自動車と同程度の時価総額を持っています。コーラの会社ですが、規模感でいうとグローバルな企業といえると思います。
このコカ・コーラが2024年に富裕層の方に人気だった理由は、圧倒的な会社の知名度が大きいと思います。コカ・コーラを知らない方はいないでしょう。お子様から老若男女まで皆さんご存知という圧倒的知名度と共に、日本国債同等の非常に高格付けで高い信用力、このようなところが人気の理由だったのではないかと思います。
また、実はこのコカ・コーラは、残存期間30年前後や30年以上の債券や40年近い債券など、残存期間が非常に長い債券を発行していることが多いです。2024年は非常に利回りの水準が高く、今後は下がっていく可能性が高いと予想されていました。そのため、残存期間が長い債券に投資して高い利回りを長期間フィックスしたいという富裕層の方が多かったので、残存期間が長い債券を発行しているコカ・コーラは特に人気だったわけです。
アマゾン
皆さんもご存知のアマゾンです。ネットショッピングで注文したら翌日に届くアマゾンプライムを経営している、大元の会社のアメリカのアマゾンです。アマゾンの格付けは非常に高格付けでAAです。アメリカの国債がAA+なので、アメリカの国債よりも一つ格付けが低いのがアマゾンの格付けになっています。一企業ですが、ほぼアメリカ国債同等の高格付けの会社です。
それが表れているのが時価総額です。時価総額は約357兆円とかなり大きく、トヨタ自動車8社分ほどの時価総額です。また、先進国のGDPと同等の時価総額があるということなので、GAFAMといわれるアメリカの超大手IT企業全体がそうですが、並外れた規模感になっています。その中の1社がアマゾンになっているわけです。
アマゾンが2024年に人気だった理由は、発行会社としての信用力が絶大だからです。AAなので、社債ではあまり見ない格付けといえます。このように格付けが高くて信用力も高いですが、実は利回りも高いというのがポイントです。格付けが高くて利回りが低いのが普通で、格付けが高ければ高いほど利回りは低くなります。
アマゾンの場合、格付けが高いけれども、実は利回りもある程度高いです。当然米国債よりも高いですし、GAFAMといわれるアメリカ超大手企業のGoogleやAppleなどより、格付けは同等ですが利回りは1つ抜けて高くなっています。ですから、高い信用力である程度高い利回りの債券に投資したいという富裕層の方に人気だったわけです。
その他の理由としては、アマゾンもたくさん社債を発行しており、かなり銘柄が豊富でいろいろな残存期間の債券を発行していて残存期間が選べるので、ポートフォリオで債券を個別に組み合わせて作るときに非常に選びやすいということが挙げられます。保守的で安全性を重視したい富裕層の方に人気だったということです。
ウォルト・ディズニー
日本ではオリエンタルランドが運営しているディズニーですが、その大元のアメリカが本国のウォルト・ディズニーが2位になっています。ウォルト・ディズニーの格付けはAということで、非常に格付けが高いです。2024年後半までA−でしたが、そこから一段階格付けが上がって現時点ではAになっています。
時価総額は約30.5兆円です。先ほどお伝えしたトヨタ自動車と三菱UFJのちょうど間くらいの時価総額なので、その程度の規模の会社だと思っていただければと思います。
ウォルト・ディズニーが2024年に富裕層の方から人気だった理由は、コカ・コーラと同様に圧倒的な会社の知名度と、それによる安心感があるからです。また、Aという高い格付けですが、その割に結構利回りが高くなっていることも理由の一つです。アマゾンなどよりも一段階利回りが高く、アマゾンはAAですが、それより三段階くらい格付けが低いAなので、その分利回りは高くなっています。
利回りとリスクのバランスがちょうどよく、多くの富裕層の方が求めている目標利回りとリスク許容度に合致していたため、2024年に高い人気が得られたのかと思います。特に、GAFAMが発行している債券では利回りが物足りないという富裕層の方に人気でした。
プルデンシャル
日本でも有名なアメリカの保険会社、プルデンシャル・ファイナンシャルというのが正式名称です。プルデンシャルの本国アメリカの大元の会社となっています。格付けはAで、ウォルト・ディズニーと同じ格付けです。時価総額は約6.5兆円と、今回発表させていただいた時価総額の中では一番小さく、規模感はそれほど大きくないイメージです。
2024年に富裕層が一番選んだ理由をお伝えします。プルデンシャルは、時価総額は大きくないですが、大手の金融機関でかつ保険会社というのが結構大きいと思います。
2023年は金融不安がありましたが、あれは主に銀行です。銀行は業績を大きく落とした年でしたが、大手の保険会社はほぼ無傷でした。金融機関は全体的に安心感がありますが、その中で銀行は人気がなくなり、一方で保険会社は2023年のような状況でもしっかりと安心して債券として持っていられるという印象を持った富裕層の方が多かったのかと思います。大手保険会社という絶対的な安心感です。
その中でもプルデンシャルはかなり日本人に知名度が高いので、安心感があり、なおかつ格付けもAという格付けです。意外と大手の金融機関や保険会社でもAの格付けはそれほど多くありません。多くの銀行や金融機関はAほど格付けが高くないので、その中でこれぐらい高格付けというのは非常に魅力的に映るわけです。
また、金融機関は全体的に相対的に利回りが他の一般の事業会社よりも高めになるので、Aという格付けの割には高い利回りになっています。知名度があり、格付けもAで、利回りも普通の事業会社よりもかなり高いので、プルデンシャルであれば大丈夫ではないかということで、プルデンシャルが選ばれることが多かったと思われます。
それだけでなく、残存期間が20年以上の債券もあるので、高い利回りを長い期間フィックスしたいという富裕層の方のニーズを捉えていました。また逆に、残存期間が短い債券も結構あります。劣後債も多く、残存期間が短いのですが利回りがある程度高く、2024年もタイミングによっては5%前後ということも多くありました。
まとめ
本日のテーマである「【最新版】富裕層が選んだ米ドル社債の発行会社」をまとめます。ポイントは4つです。
ポイント1)2024年は比較的、高格付け発行会社が人気だった
2024年は比較的格付けが高い発行会社が人気でした。理由としては、米国債の利回りが高かったということに尽きると思います。すべての債券の利回りの大元である米国債の利回りが高かったので、仮に格付けが高い発行会社が発行している債券だとしても、債券の利回りがある程度高く、多くの富裕層の方の目標利回りを、格付けが高い発行会社の債券でも満たすことができていました。それであれば、わざわざ格付けが低い債券に投資するよりも、高格付けの発行会社に投資した方が安心感があるということで選ばれたのが理由だったのではないかと思います。
また、2024年は格付け間の利回り格差が小さかった点もポイントでした。つまりAAの債券・Aの債券・BBBの債券、それぞれ格付けの間はありますが、債券の格付け間の利回りがそれほど大きくありませんでした。その差が大きければ格付けが低い債券に投資して高い利回りを狙いにいく目的もあると思います。ところが格付け格差が小さいので、それほど利回りに差がないのであれば、高い格付けの債券に投資しようという思考に至ったことが多かったことから、2024年は比較的高格付けの発行会社に人気があったという結果に繋がったのだと思います。
ポイント2)格付けA台が利回りと信用のバランスよく特に人気
格付けA台の利回りと信用力のバランスが非常によくて特に人気だったのかと思います。先ほどのランキングでお伝えしたウォルト・ディズニーやプルデンシャル・ファイナンシャルはまさにA台ですが、このようなA台の債券の利回りがある程度高く、なおかつ安心感もあるという格付けと信用力で、多くの富裕層の方に受け入れられたのが人気の理由であったと思います。
ポイント3)格付けAA台のGAFAMも保守的な富裕層には人気
格付けAA台のGAFAMも、保守的な富裕層の方には非常に人気だったのが特徴ではないかと思います。富裕層の方の中には、「それほど利回りが高くなくてもよい」「それよりも安全性を重視したい」という方が多いです。そのような方はGAFAMのような米国債同等の格付けの社債に投資したいという方が多いので、そのような方に非常に人気だったのがGAFAMのような発行会社です。
ポイント4)格付けBB台も残存5年以内など短い期間で人気
格付けBB台、低格付けといわれるような、ソフトバンクグループのような債券、このような債券も残存期間が短い債券の銘柄に関しては非常に人気でした。残存期間5年以内などの債券限定ではありますが人気だったといえます。
残存期間が短い債券ほど、少し利回りが低くなるという傾向があります。残存期間10年以上はそれなりに利回りが高いのですが、残存期間が短い債券の利回りをどう高めるかというのは、債券ポートフォリオを作るときに課題になります。そのようなときにBB台の債券や低格付け債券をポイントで入れることによって、残存期間10年以上の債券と変わらない利回りを維持できるわけです。
格付けはBBですが、残存期間5年~6年くらいであれば、「リスクをとってもいい」「許容範囲である」ことが多かったので、残存期間が短めという条件が限定ではありますが、BB台の債券も相対的に人気だったのではないかと思います。
本日は「【最新版】富裕層が選んだ米ドル社債の発行会社」という内容でお届けさせていただきました。

株式会社ウェルス・パートナー
代表取締役 世古口 俊介
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。
2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者1万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
メディア掲載情報:「m3.com」「ZUU online」「MONEY zine」「マネー現代」でコラムを連載中