目次
はじめに
不動産投資を成功させるためには、的確な物件選びはもちろん、取引をスムーズに進めるためのサポートも重要です。その大きな役割を果たすのが不動産仲介会社です。しかし、不動産投資の仲介には注意すべき点もあり、それを理解せずに取引を進めるとリスクを抱える可能性があります。
本記事では、不動産仲介の基本的な仕組みや役割、仲介を利用するメリット・デメリット、東京市場の動向、信頼できる不動産仲介会社の選び方について解説します。不動産投資を検討している方や、これから仲介を活用した取引を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
不動産取引における仲介の仕組みと役割
不動産の売買や賃貸契約において、多くの人が「仲介」を利用します。仲介とは、売主と買主、貸主と借主の間に入って取引をサポートするサービスです。不動産は高額な資産であり、取引には法的な知識や市場の動向を理解する必要があります。そのため、仲介会社のサポートを受けることで、スムーズで安全な取引が可能になります。
不動産仲介の定義
不動産仲介とは、売主・貸主と買主・借主の間に立って取引の成立をサポートする業務を指し、宅地建物取引業法では「媒介」と定義されています。仲介会社は、物件情報の提供、契約手続きの支援、価格交渉の代行などを行い、取引の安全性を確保します。
不動産仲介には、「売買仲介」と「賃貸仲介」の2つの種類があります。売買仲介は、不動産を売りたい人と買いたい人をつなぎ売買契約を成立させるもので、賃貸仲介は、貸主と借主の間に入り、賃貸借契約をサポートします。
不動産仲介会社の役割
不動産仲介会社は、単に売主と買主をつなぐだけではなく、取引の円滑化やリスク管理を担う重要な役割を果たします。
不動産市場は常に変動しており、適正な価格で取引を行うためには市場調査が不可欠です。仲介会社は、過去の成約事例や現在の市場動向を分析し、適正価格の査定を行います。
売主と買主の間で行われる価格交渉や契約条件の調整も、仲介会社の重要な役割です。特に、不動産売買契約では「重要事項説明書」の作成が義務付けられており、専門知識が必要になります。仲介会社を利用することで、法的なリスクを軽減することができます。
自分で取引するリスク
不動産仲介会社を利用せずに自分で不動産売買を行うことも可能ですが、契約トラブルや価格交渉の難しさなど、多くのリスクがともないます。不動産売買契約書の作成や法的手続きを誤ると、後のトラブルに発展する可能性が高いため、仲介会社の活用が一般的です。
収益物件を仲介で売却するメリットと不動産買取
不動産投資において、物件の売却は収益を最大化する上で非常に重要な局面です。収益物件の売却においては仲介を利用するのが一般的ですが、そのメリットを3点にまとめて解説し、不動産買取についても紹介します。
物件を高く売却できる
仲介を利用すると、物件を高値で売却できる可能性が高まります。不動産投資市場への投入で多くの買主にアプローチでき、適正価格での売却が期待できます。売却価格を最大化するためには、適切なタイミングでの市場投入が重要です。
多くの買主にアプローチできる
不動産仲介会社を利用すると、ポータルサイトやSNSなどを活用した広告戦略により、多くの投資家に物件情報を届けられます。適切なマーケティングで、売却のスピードが向上し、競争が生まれやすくなります。
交渉のサポートが受けられる
不動産の売却では、買主との交渉が重要になります。価格交渉や契約条件の調整は、専門的な知識と経験が求められるため、不動産仲介会社のサポートでスムーズに進められます。
仲介会社は、買主の希望や市場動向を踏まえた上で、最適な売却条件を提案し、交渉をサポートします。交渉の際には、仲介会社と密に連携し、自分の希望条件を明確に伝えます。
不動産買取会社を利用するケースもある
早期に売却を希望する場合は、不動産買取を利用するのも一つの方法です。仲介と買取の違いを理解し、自分の状況に応じた選択をします。
買取を利用するメリットとして、短期間で現金化できる点が挙げられます。急いで資金を確保したい場合や、複数ある物件の整理などには適しています。契約不適合責任を免責できるため、売却後のトラブルを避けられるのも利点です。
一方で、買取価格は市場価格より20~30%低くなるため、高値で売却したい場合には不向きです。
収益物件を仲介で購入するメリット
不動産投資においては、売却は仲介の利用が一般的と述べましたが、購入の局面ではどうでしょうか。
収益物件を購入する場合、不動産会社が自ら売主となって販売する「売主物件」と、不動産仲介を通じて購入する「仲介物件」があります。仲介物件、つまり収益物件の仲介での購入で得られるメリットは数多くあります。
ここでは、収益物件を仲介で購入するメリットについて解説します。
市場に多くの物件が出回っている
仲介を利用すると、一般市場に流通している多くの物件情報を入手できます。これにより、投資家はより多くの選択肢の中から、自分に合った物件を見つけやすくなります。
売主物件よりも安く購入できる
不動産会社が売主となる売主物件の場合、会社の販売利益が上乗せされるため、一般的には価格が割高になります。一方、仲介を利用して個人や一般法人が売主の物件を購入する場合、より市場価格に近い金額で取得できる可能性が高くなるのです。
売主物件には、デベロッパーやハウスメーカーが新築した投資用の一棟マンション、一棟アパート、区分マンション、戸建て賃貸住宅などがあります。また、不動産会社が中古住宅を仕入れ、リノベーションをして販売する「買取再販物件」もあります。いずれも物件価格には、一定の利益が上乗せされているのです。
不動産投資においては、購入時のコスト抑制が賃貸経営全体の成功につながるため、仲介物件のほうが有利になるケースが多いといえます。
収益物件を仲介で購入するデメリット
仲介物件の購入は、多くのメリットを得られる一方で、デメリットも存在します。ここでは、収益物件を仲介で購入する際の主なデメリットについて解説します。
物件選定の難易度が上がる
市場には多くの収益物件が流通しており、選択肢が多いのはメリットでもありますが、逆に「どの物件を選べば良いのか分からない」という問題が発生します。投資初心者の場合、どのエリアの物件が良いのか、利回りや賃貸需要をどのように判断すれば良いのか分からず、迷ってしまうでしょう。
物件選びの際は以下の点に注意します。
・物件が建つエリアの賃貸需要と将来性をしっかり分析する
・不動産仲介会社1社の提案を鵜呑みにせず、自分でも市場リサーチを行う
・物件選びの基準(利回り、管理状況、立地など)を明確に持つ
契約不適合責任が免責されるケースが多い
契約不適合責任とは、物件の売買契約後に発覚した瑕疵(雨漏りや設備の不良など)について、売主が買主に対して責任を負う制度です。実需では契約不適合責任が適用されるケースがほとんどですが、投資用の収益物件ではこの責任が免責されるケースが多くあります。
売主が個人・買主が個人のパターン、売主が一般法人(宅建業者ではない)・買主が法人(宅建業者・一般法人)のパターン、売主が個人・買主が法人(宅建業者・一般法人)のパターンでは、契約不適合責任免責の特約が有効です。
収益物件の売買では契約不適合責任免責の契約が少なくありません。そのため、買主としては物件購入前に建物・設備の老朽化や管理状況の調査を徹底し、不動産売買契約書の内容も詳細に確認する必要があります。
仲介物件のリスクを考えると、投資初心者は売主物件を購入したほうが良いケースもあるといえるでしょう。
東京での不動産投資の状況と市場動向
出典:国土交通省 不動産価格指数(令和6年10月・令和6年第3四半期分)
東京の不動産市場は、国内外の投資家からの注目を集める大規模な市場です。人口の集中や安定した賃貸需要があるため、投資用不動産の取引も活発に行われています。また、日本の経済・ビジネスの中心地である東京は、資産価値が比較的安定しており、不動産投資の対象としての魅力が高い都市です。
安定した賃貸需要
東京は日本国内でもっとも人口が集中している都市であり、単身者からファミリー層まで幅広い賃貸ニーズがあります。都心部のビジネスエリア周辺では、仕事の利便性を求める単身者や共働き世帯の需要が高く、賃貸市場が安定しています。
大学や専門学校が多いエリアでは、学生向けのワンルームや1K物件の需要が継続的に存在します。さらに、東京は全国からの転勤者や海外からの駐在員も多く、グローバルな視点でも賃貸需要が底堅い市場となっています。
資産価値の維持・上昇傾向
東京の不動産は、都心部を中心に資産価値が上昇する傾向にあります。東京オリンピックや都市再開発の影響を受け、都心だけでなく周辺エリアの地価も上昇しており、今後も発展が見込まれるエリアが多く存在します。
インカムゲインとキャピタルゲインの両方が狙える
東京での不動産投資では、家賃収入(インカムゲイン)と物件価格の上昇による売却益(キャピタルゲイン)の両方を狙うことが可能です。都心部の一等地や、今後の発展が期待されるエリアでは、賃貸経営による安定収益を得ながら、将来的な売却時に利益を出せる可能性があります。
ただし、都心部の一等地は物件価格が高いため、購入時の投資額も大きくなる点には注意が必要です。また、キャピタルゲインに照準を絞った投資方法は、プロ向けの投資スタイルのため、場合によっては宅建業法に抵触するので注意が必要です。
インバウンド需要の期待
出典:日本政府観光局 訪日外客数(2024年12月および年間推計値)
東京では訪日外国人の増加により、民泊やマンスリーマンションなどの短期賃貸の需要が高まっています。ただし、民泊には法規制があり、営業日数の制限や管理規約の確認が必要なため、慎重に検討する必要があります
エリアごとの投資特性を理解することが重要
東京都内でも、エリアによって不動産投資の特性が異なります。例えば、山手線内のエリアは、賃貸需要が安定しており家賃収入も高額になりますが、物件価格が非常に高く利回りは低くなる傾向があります。一方、城東エリア(墨田区・江戸川区など)は、まだ物件価格が比較的抑えられており、将来的な価格上昇が期待できる地域もあります。
エリアごとの特性を理解し、自分の投資目的やリスク許容度に応じた適切な戦略が東京での不動産投資成功の鍵となります。
信頼できる不動産仲介会社を選ぶ方法
不動産投資を成功させるためには、物件選びだけでなく、信頼できる不動産仲介会社の選択も重要です。仲介会社によって、提供する情報の質やサポート体制が大きく異なるため、慎重に見極める必要があります。
収益物件の取引実績が多いか
不動産仲介会社を選ぶ際には、収益物件の取引実績が豊富かどうかを確認することが大切です。TVCMなどで有名な大手不動産会社であったとしても、実需物件中心で収益物件には慣れていない可能性もあります。
投資用不動産の売買は、実需物件とは異なり、利回りや管理状況、エリアの賃貸需要など、投資視点での専門的なアドバイスが求められます。
仲介会社の取引実績を確認する方法としては、自社サイトから過去の取引事例をチェックする、直接担当者からヒアリングするなどの方法があります。
リスクについても説明してくれるか
優れた仲介会社は、物件のメリットだけでなくリスクについてもしっかり説明してくれます。不動産投資には、空室リスク、家賃滞納リスク、修繕リスクなどさまざまなリスクがともないます。リスクを正直に伝えてくれる会社であれば、安心して取引を進められます。
リスクの説明が曖昧だったり、「この物件は絶対に儲かります」と断言したりするような会社には注意が必要です。
担当者が信頼できる人物か
不動産仲介会社の良し悪しは、担当者の質によって大きく左右されます。どんなに立派な会社でも、担当者の質が悪ければ、その取引がうまくいかない可能性が高まります
良い担当者を見極めるポイントとしては、以下の点が挙げられます。
・投資家の希望や投資方針をしっかりヒアリングしてくれるか
・質問に対して的確な回答をし、専門知識が豊富か
・強引な営業をせず、納得のいくまで検討させてくれるか
・宅地建物取引士の資格を持っているか
また、複数の仲介会社と連絡を取り合い、不安を感じたら別の会社にも相談するなどの対応もしておきます。
不動産投資は大きな金額が動く取引です。長期的な信頼関係を築ける担当者とのつながりが、成功への大きな一歩となります。
まとめ
不動産投資において、物件の売却は不動産仲介会社への依頼が一般的ですが、物件の購入についてはメリット・デメリットがあるため、事前にしっかりとリスクを理解しておく必要があります。
リスク許容度の高い投資上級者は仲介物件を狙い、リスク許容度の低い投資初心者は手堅く売主物件を購入するのが賢い選択といえるでしょう。
売却・購入、いずれの局面においても、信頼できる不動産仲介会社への依頼が重要である点に変わりはありません。
弊社・ウェルスパートナーでは、購入後のアフターフォローも充実させた不動産仲介を行っています。物件購入後のリスク管理や売却のサポート、相続・資産承継のご相談まで一貫したサポートを提供しています。まずはお気軽にご相談ください。

株式会社ウェルス・パートナー
リアルアセットマネージャー
早稲田大学商学部卒業後、大和ハウス工業株式会社へ入社。
富裕層・地主に賃貸住宅での土地活用ソリューション提案に従事。東急リバブル株式会社にて投資用不動産の売買仲介を経験後、株式会社ウェルスパートナーに入社。マネー現代など大手メディアでの記事執筆も行う。