はじめに
2018年末から2019年年初にかけて株式市場は嵐のような相場急落に見舞われました。
波瀾の幕開けとなった2019年の世界経済ですが、今年の見通しは一体どうなるのでしょうか。
世界経済の見通しをまとめてみました。
米国経済
・景気は持続するものの減税効果は薄れ減速
・最大のテーマは米中貿易摩擦
昨年の米国経済はトランプ大統領の減税施策により好景気がもたらされました。
税制改正の効果により、企業収益が大幅に増加、株価は上昇し設備投資も促すとともに、雇用者数の増加による個人消費の増大にもその効果が波及しました。
今年度もこうした好景気は持続するものと思われますが、その減税効果も一巡するため減速感は免れません。GDP成長率は2018年の2.9%から2.5%程度を見込みます。
一方でリスク要因も増えています。
一つめは米中貿易摩擦の行方です。米国及び中国は世界で第一位及び第二位の消費国であり輸出国です。
昨年から起こっていた関税障壁の引き上げ合戦は、世界中が密接に関係している貿易取引のなかでは中国だけでなく米国企業にもブーメランとして影響を及ぼすこととなります。
また貿易摩擦の行方が不透明な中では積極的な投資に向かいにくいという声も聞かれます。世界経済の減速や株式市場の動向により影響がさらに広がる懸念もあり引き続き目の離せない展開が続きます。
二つめは「トランプリスク」です。選挙戦において一定の効果を表したトランプの発言やディール手法も、FRB議長の解任騒動や有力閣僚の相次ぐ退任、壁建設を巡る民主党との対立による議会の閉鎖などここに来て、裏目にでています。こうした「トランプリスク」が認識され、金融市場にも影響が懸念されます。
三つめは金利上昇です。FRBは景気の過熱感の抑制から今年度二回の金利引き上げを検討しています。QOE(金融緩和)からQTE(金融引き締め)へ移行するなか、金融政策の方向性が株式市場の不安要素となっていました。
株価の下落を受け、年明けからはFRBボルカー議長の発言のトーンも修正され、マーケットには安心感が漂ってきたものの、引き続きリスク要因ではあります。
欧州経済
・欧州経済は堅調
・英国のEU脱退をめぐり「合意なき離脱」が最大のリスク要因
欧州経済は基本的にはドイツ・フランス経済が輸出を中心に堅調に推移するものと見込まれます。経済成長率は2018年の1.6%程度から1.5%程度での推移が見込まれます。
一方で欧州には政治リスクが気になります。
フランス経済は1.6%程度での推移が見込まれますが「ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト)」運動の広がりで、改革を進めたいマクロン政権にとっては大きな打撃となっています。
ドイツはメルケル首相が引退を表明しており、各国ではポピュリズムが台頭し排他的な主張が国内で強まっているなど、EU内のパワーバランスに影響が懸念されます。
最大の懸念材料は英国です。EU離脱の正式な離脱を定めたリスボン条約50条の交渉の期限を迎える2019年3月を控え、英国内及びEU内でどのような合意が行われるのか、もしくは合意が得られないまま離脱を迎えるのかに注目が集まります。
2018年11月には英国政府とEU間では離脱協定案で合意が行われたものの、英国議会での承認が難航しています。
「合意なき離脱」が起こった場合、経済界・金融界の混乱が懸念されています。ポンドの大幅な下落やユーロ全体の信任も低下するものとみられます。
反対に合意に至ることができれば、近年様子見とされてきた欧州への投資が一気に再開する可能性もあります。「合意なき離脱」には英国、EU双方の悪影響が大きいことから回避に向けた動きが予想されますが予断を許しません。
新興国経済
・中国経済の減速は強まる。対中輸出国経済に波及の恐れ
・米中貿易摩擦・世界的なマネー減少の余波が各国に波及する懸念在り
中国経済の成長率は10%を超えていた2000年代から緩やかになり2018年度は6.6%台、2019年度は6.3%台に減速する見込みです。米国との貿易摩擦激化に伴い、貿易量の減少や情報通信産業への投資減少などで景気の減速感がクローズアップされています。デレバレッジ(与信・債務の抑制)政策によりシャドーバンキングの増加も抑制され、資産の膨張にも歯止めがかかっています。
また先進国各国中央銀行による金融緩和からの脱却、資産減少は投資マネーを逆流させます。昨年は金利引き上げに端を発したトルコリラの急落でインフレが進むなど市場には不安定さが残っています。
また投資マネーの減少と米中貿易摩擦の激化による投資マネーの減少は、新興国の債券市場や株式市場における買い手不在の状況を作りかねません。
資源国では世界経済の減速による中国向け輸出の減少や、原油価格の急落な下落など懸念材料が多くなっています。