はじめに
「シリコンバレー」という単語を耳にされた方は、多いと思います。
グーグルやアップルなどが本社を置き、革新を生み出し続けることで世界中の産業が注目しているシリコンバレーでは、そこで働く従業員の給料が非常に高いことで知られており、それは新卒社員も例外ではなく、日本円換算で1,000万円を下回ることはないとも言われています。
このコンテンツでは、シリコンバレーでは新卒社員でも1,000万円を超える収入を得ることのできる背景について、探っていきたいと思います。
1.シリコンバレーとは?
シリコンバレーとは、サンフランシスコなど約40の都市から構成された地域の総称であり、公式な地名ではありません。
シリコンバレーは、世界でも先行してデジタルエコノミー(デジタル化により全産業が構造変化を余儀なくされる社会)が到来しており、ICT(情報通信技術)を活用したイノベーションによる先端的な産業への新陳代謝が拡大している地域です。
まさに、アメリカのみならず世界の経済成長を牽引している地域と言っても過言ではないでしょう。
2.シリコンバレーの高給の要因を分析する
冒頭で申し上げたとおり、シリコンバレーの産業の中心的な存在であるテクノロジー企業の給与水準は、大学新卒を含め非常に高いことが知られています。実際に、米国の高額給与上位10社のうち、実に6社がシリコンバレーに本社を置く企業なのです。
この要因については、米国経済の底堅さを反映したマクロ的な要因と、シリコンバレーの産業界にフォーカスしたミクロ的な要因に分けれられます。
2-1_マクロ的要因
米国経済のファンダメンタルズを一言で表現すると、「好調」です。
6月12日に発表された消費者物価指数の統計に見られるとおり、雇用・所得改善を背景に個人消費は堅調であり、これが内需を支え理想的とも言えるほど緩やかなインフレを維持しています。トランプ減税の効果もあり、企業の設備投資も活況です。
そして労働市場に着目すると、全体的に賃金も非農業部門雇用者指数も前月比で好調に伸びており、6月の米国雇用統計では非農業部門雇用者がついに20万人を超えました。特にシリコンバレーに本社を置いている多くの企業が属するサービス業や製造業において、賃金と雇用者数の伸びは顕著です。
中国との貿易摩擦による原材料価格の上昇など、米国の産業界に間接的な悪影響が生じる可能性は指摘されていますが、それがただちに景気や賃金を含む雇用環境を悪化させるという懸念は僅少と言えるほど、米国経済は底堅い状況にあります。
2-2_ミクロ的要因
急激な成長を遂げているシリコンバレーの産業界では、どの企業も競合他社を凌ぐ競争力と事業の継続性を得るうえで、「エンジニア獲得」が大きな経営課題となっています。
そしてこれはコンピュータ産業に限らず、自動車・製造業・通信等の各産業に共通しており、シリコンバレー全体がこぞってエンジニア獲得競争を加速させていると言っても過言ではありません。
特に大学で一定の基礎と応用を習熟しており、ポテンシャルが高いと企業が認める新卒のエンジニアは、今後の伸びしろが大きいことと若さとシリコンバレー産業固有の風土である何事にもオープンな文化の相乗効果によりイノベーションを起こすことが期待できることなどから、どの企業からも引く手あまたです。
シリコンバレー特徴のひとつに多様な人種構成が挙げられますが、世界各地から数多くの優秀な新卒がシリコンバレーに赴いているにも関わらず供給が需要に追いついていないというのが現状です。
産業の急激な成長にともなう人材の需要に新卒の供給が追いついていない需給ギャップ、これがシリコンバレー全産業の賃金インフレーションを引き起こし、ひいてはシリコンバレーの企業に就職する新卒の高給を実現ならしめているのです。
まとめ
以上のように、内需失速を伴わない緩やかなインフレに見られる米国経済の力強さと、その恩恵を多大に受けているシリコンバレーの労働市場における需給ギャップが、シリコンバレーの高い大卒初任給を支えているのです。
これに加えて、すべてが横並び初任給体系を採る日本企業と違い、成長著しいシリコンバレーの企業では優秀な新卒には相応の報酬を出すという合理性が一般化していることが根底にあります。