はじめに
資産運用において、もっとも注意しなければならないのが資産配分です。特に、資産が株式に偏ってしまうと、株式相場のボラティリティの影響を大きく受けることになります。このため、株式市場の値動きが気になり「安定性重視の資産配分に見直さなけば」と考える方も多いでしょう。この記事では、資産が株式に偏っている場合のリスクとその具体的な対策について解説します。この記事を読むことで、分散投資の重要性やリスク管理の方法、長期的な資産配分の見直しについて理解を深めていただければ幸いです。
資産が株式に偏る理由
資産が株式に偏る理由としてまず挙げられるのは、株価の上昇です。
運用開始時に適切なポートフォリオを組んだとしても、株価上昇によって株式の時価評価額が大きくなり、ポートフォリオ内の株式比率が高まってしまうためです。
このため、資産が株式に偏った場合は株式を売却して、債券の割合を増やし、ポートフォリオのバランスを最適化する「リバランス」の作業が必要となってきます。
画像出典 : 京都銀行
株式投資の魅力と期待されるリターン
株式投資の魅力は、なんといってもキャピタルゲイン(値上がり益)が狙える点です。
特に長期保有によって企業や株式市場全体の成長が見込まれる点は大きな魅力です。
参考までに、直近10年間のNYダウ長期チャートをみてみましょう。
画像出典 : 日経smartchart
NYダウは2020年のコロナショックや、2022年の利上げなどの影響を受け大きく下落した局面もありましたが、右肩上がりで成長を続けています。
このように、株式は運用期間を長く取れる富裕層の方にとってはメリットの大きい投資対象といえるでしょう。
また、株式投資は配当としてインカムゲインが得られる点も魅力です。例えば米国株では、通信機器大手やバイオ医薬品大手などで高配当株も多く、配当利回り5%や6%といった企業も多数あります。
では、株式投資で世界各国に分散投資した場合に、どれくらいのパフォーマンスが期待できるのでしょうか?
ここでは、日本以外の先進国株式を対象にしたMSCI コクサイ・インデックスの過去のパフォーマンスをみてみましょう。
MSCI コクサイ・インデックスの年間パフォーマンス(年率平均)は、過去10年で15.2%、過去20年で11.3%、過去30年で11.4%です。
直近10年間は世界的に株式市場が好調だったこともあり、とても高いパフォーマンスが得られていますが、過去30年の平均でも年率11.4%のパフォーマンスが得られています。
このように、高いパフォーマンスを期待できる点が株式投資の大きなメリットといえるでしょう。
ただし、株式は債券などに比べると価格変動が大きいため、資産が株式に偏ってしまうとポートフォリオのリスク度合いも高くなってしまいます。
資産が株式に偏るリスクと資産再配分の例
資産が株式に偏ると、それだけポートフォリオが株式の価格変動リスクを受けやすくなります。
ここで、私たちウェルス・パートナーが実際に相談を受けた「資産が株式に偏っている方」の事例をみてみましょう。
相談を承ったお客様は70代女性、未亡人の方です。相続で得た4億円の資産のうち株式(先進国・新興国)が2億5千万円(62.5%)を占めており、「毎日、資産価格が大きく変動するため不安だ」というご相談でした。
ご相談を承る前の資産配分と、再配分後の資産比率は次のとおりです。
このお客様の場合、「ご高齢である」「株式運用を望まない」「インカムゲイン中心の安定運用をお望みである」という点から、株式を含まないポートフォリオへ資産内容を大きく変更しました。
この例では、「ご高齢で株式運用を好まないという点」を重視しましたが、理想的な株式の組み入れ比率はご年齢やご職業、資産背景などさまざまな要素で異なります。
例えば、30代や40代で「運用期間を長くとれる」「本業の収入が高い」「他の資産も多く持っている」といった場合は株式の割合を増やすのもよいでしょう。
一方、「リタイアが近づいている(収入が年金中心になる)」「安定したインカムゲインを得たい」ということであれば、価格変動が少なくインカムゲイン中心の債券の割合を増やすのがよいでしょう。
ただし、最適なポートフォリオはひとそれぞれです。自分でポートフォリオを組み、資産を管理していくのは難しい側面もあります。
このような場合は、IFA(資産運用アドバイザー)など、プロに相談するのもよいでしょう。
特定市場(米国株など)への依存
資産が株式に偏るリスクについて解説してきましたが、株式が特定市場(米国株など)へ依存する(偏る)ことも大きなリスクにつながります。
例えば2022年、アメリカでインフレ抑制を目的とした利上げが開始されましたが、これに伴い、アメリカの株式指数は軒並み大幅に下落。米国株の保有割合が高い投資家は、大きな損失を抱えることになりました。
このようなリスクを避けるためには、やはり投資対象国や通貨も分散させることが大切です。
また、保有株式が特定のセクター(業種・分野など)へ偏ることもリスクを増大する原因となります。
運用資金の関係で市場やセクターなど、十分に分散できない場合は、ETFやインデックス型投資信託を活用するのもよいでしょう。
資産配分の見直し方法
続いて、実際に私たちウェルス・パートナーが承った資産配分の見直し例を紹介します。
次の画像をご覧下さい。
こちらのお客様は、当初からウェルス・パートナーにポートフォリオ設計をご依頼いただきました。
「資産配分(2年前)」の通り、当初は株式と債券の割合を50:50でポートフォリオを設計し、運用を開始しました。
そして右側の「資産配分(現在)」が現状です。株価が高騰したことによって株式の時価額が膨らみ、株式比率が上昇。これにより、当初の理想的な配分が崩れました。
株式を一部売却して、債券やREITを購入。株式と債券の割合も当初とほぼ同等の約50 : 50に改善させました。
このようなリバランス(資産の再配分)は、定期的に行う必要があり、ウェルス・パートナーでは、年に1回程度の見直しを推奨しています。
また、このお客様は株式と債券の割合を50 : 50で設定していましたが、株式と債券の割合は年齢によって変わり、年齢が増すごと(リタイアが近づくほど)に債券の割合を増やしていくのが鉄則です。
この事例では、株式と債券の割合だけでなく「外貨比率」についても見直しを図り、理想的な資産配分を実現しています。
今回の事例は次の動画で詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧下さい。
まとめ
本記事では、「資産が株式に偏っているときのリスクと対策」について解説しました。
もう一度要点をまとめます。
- 資産が株式に偏る原因は株価上昇による株式時価額の増大
- 株式はキャピタルゲインが魅力。ただし、価格上昇により適度なリバランスが必要になる
- 株式は特定市場や特定セクターへ投資が偏ることもリスク要因になる
- 株式と債券の割合は年齢により異なる(年齢とともに債券割合を増やすのが鉄則)
- 資産配分は年に1回程度の見直しを推奨
ただし、これらの内容を個人ですべて実践するのは難しいかもしれません。
また、「忙しくて資産運用に時間をかけられない」「プロから運用アドバイスを受けたい」という方も多いのではないでしょうか。
私たちウェルス・パートナーでは、このようなご要望をお持ちの方のために、無料相談を承っております。
面談は対面だけで無く、オンラインミーティングツールZoomでも承っておりますので、ぜひ気軽にご相談ください。
株式会社ウェルス・パートナー
代表取締役 世古口 俊介
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。
2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者1万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
メディア掲載情報:「m3.com」「ZUU online」「MONEY zine」「マネー現代」でコラムを連載中