目次
はじめに
M&Aによる会社の売却を控える企業オーナーにとって、今後の安定した生活を支える資産運用は、非常に重要な問題となります。売却資金を効果的に運用し、安定した収入や資産価値の成長を目指すことが必要です。この記事では、会社売却を控えた企業オーナーの方へ、資産運用に関する選択肢やリスク管理のポイントなど、念頭に置いておくべき重要な情報について解説していきます。
会社売却オーナーの悩みとは
会社を売却したオーナーは、売却代金という大きな資産を手に入れる反面、会社を手放したことにより、安定した役員報酬を失うことになります。
これにより、おもに次の4つの悩みを抱えるケースが多いようです。
安定収入が欲しい
会社を売却したオーナーは、役員報酬という安定収入が得られなくなります。
このため、「会社売却代金から安定収入を得たい」という悩みを抱える場合が多いようです。
会社売却代金の保全を図りたい
「会社売却代金から安定収入を得たい」という希望がある一方、会社を売却したオーナーは、「会社売却代金の保全を図りたい」という悩みを抱える場合が多いようです。
これは、役員報酬がなくなったことにより、会社売却代金がおもな収入源になることに加え、運用によって損失が出た場合のリカバリーが難しくなるためです。
資産運用に手間をかけたくない
会社を売却したオーナーの方は、これまで多忙だった分、ご家族との時間を大切にしたり、趣味を大事にされるなど、「資産運用に時間や手間をかけたくない」という方が多いようです。
このため、「手間や時間をかけずに、安定収入を得るにはどうしたらよいか」と悩まれる方も多いようです。
外貨資産を持ちたい
会社オーナーは、保有資産のほとんどが自社株、つまり円資産である場合が多いです。また、通常は会社売却代金も円で入ってくるので、会社売却後は資産が極端に円に偏っている場合がほとんどです。
このため、長期的な円安リスクを考え、「外貨資産を持ちたい」「外貨へ分散投資したい」という悩みを持つ方が多いようです。
会社売却資金の適切な運用戦略
ここまで紹介してきた会社売却オーナーの悩みをまとめると、「安定収入が欲しい」「資産の保全を図りたい(あまりリスクを取りたくない)」「インカムゲイン中心で手間のかからない運用をしたい」「外貨建て資産で運用したい」ということだと思います。
このような悩みを持つ方に、ぜひおすすめしたいのが外国債券を中心にした分散投資です。
外国債券投資には次のようなメリットがあります。
・高い利回りにより安定したインカムゲインが得られる
・比較的価格変動が少ない
・安全性が高い(投資対象による)
・通貨分散を図ることができる
ただし、債券は価格変動が低い反面、「インフレに弱い」というデメリットがあります。
このため、インフレリスクを避けたい場合は、債券に不動産を組み合わせるという方法もあります。
不動産は、家賃収入というインカムゲインが得られるだけではありません。物件にもよりますが、物価に連動して価格が上昇する性質があるため、インフレリスクを避ける効果が期待できます。
また、相続税評価額を下げることができるため、保有することで将来に向けた相続税対策にもなります。
M&A後の資産運用の重要性
会社の売却によって得た資金は、適切に運用することで将来の安定収入や資産価値の増加を図ることができます。適切な運用戦略を持つことは、オーナーにとって非常に重要です。
効果的な資産運用の目的
資産運用の主な目的は、安定した収入の確保と資産価値の最大化です。会社オーナーはリスクやリターンのバランスを考慮しながら、適切な資産運用戦略を策定する必要があります。
ただし、資産運用戦略を立案するには、「資産運用で何を重視するのか」を明確にする必要があります。「安定したインカムゲインを重視するのか」「資産の成長を重視するのか」「資産継承対策を重視するのか」などを重視するポイントを明確にすることが大切です。
リスク管理と資産増加のバランス
リスク管理の重要性
資産運用においては、リスク管理が非常に重要です。事業を売却した会社オーナーは、自身のリスク許容度と期待リターンを考慮しながら、リスクとリターンのバランスを保ちつつ資産増加を図る必要があります。
なお、リスク管理においては、適切なポートフォリオを構築するとともに、時間の経過によって変化する資産バランスを調整していくことが重要です。
いずれにしても、専門的な知識と経験が必要となることから、IFA(資産運用アドバイザー)など、専門家に相談するのもよいでしょう。
資産増加と安全性の両立
資産増加を図るためには、適度なリスクを取りながら投資を行うことが不可欠です。なお、リスクを取るというのは、必ずしも価格変動の大きい金融商品を保有するということではありません。
例えば、証券担保ローンの利用も一つの方法です。具体的には、保有する有価証券を担保に資金を借り、調達した資金を再投資することで、レバレッジを効かせた資産運用を行います。担保価値の減少によるリスクはありますが、自己資金を有効に活用した運用が可能になります。
専門家との相談の重要性
投資アドバイザーの選定基準
資産運用においては、専門家から受けるアドバイスが非常に重要です。投資アドバイザーの選定においては、実績や信頼性を重視し、自身との相性も考慮することが重要です。また、資産運用は生涯続くため、長期間良好な関係を築けるアドバイザーを選ぶことも大切です。
まとめ
会社の売却後に得た資金を賢く運用することは、将来の安定収入や資産価値の最大化を図るために重要な問題といえるでしょう。適切な運用戦略やポートフォリオの構築、リスク管理、そして専門家との相談は、事業オーナーにとって成功をサポートする重要な要素となります。本記事が、会社売却資金を最大限に活用して、将来の安定を確保する一助となれば幸いです。
株式会社ウェルス・パートナー
代表取締役 世古口 俊介
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。
2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者1万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
メディア掲載情報:「m3.com」「ZUU online」「MONEY zine」「マネー現代」でコラムを連載中