資産運用のプロである世古口が資産の「7割」を外貨にしている理由をご説明します

はじめに

皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。

今回のテーマは、「資産運用のプロである世古口が資産の『7割』を外貨にしている理由をご説明します」を外貨にしている理由をご説明します」です。

資産全体に占める外貨の割合、いわゆる外貨比率がどの程度が適切かという点については、常に皆さんにお伝えしている通り、基本的には5割、つまり資産の半分を外貨にしておくのが良いのではないかと考えています。

しかし、私自身が年末の12月ごろに、自分の資産の状況を1年に1回まとめる際、個人資産や管理会社、妻や家族の分も含めて整理してみたところ、外貨比率は約7割になっていました。つまり、資産全体のうち3割が円、残りの7割が米ドルを含む外貨という構成になっていたのです。

私は皆さんには、外貨比率を5割程度がちょうど良いニュートラルな水準としてお伝えしていますが、自分の資産構成を確認した結果、外貨比率が7割に達していたわけです。なぜ自分がそのような比率にしているのか、その理由を改めて考え、皆さんにお伝えすることで何か参考になればと思い、このテーマを取り上げることにしました。

自分では外貨比率のニュートラルな水準を5割と考えていますが、それを2割ほど超えて7割にしている理由について、詳しくご説明したいと思います。

▼今回の内容はYouTubeでご覧いただけます

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▼プロフィール
世古口俊介(せこぐちしゅんすけ)
株式会社ウェルス・パートナー代表取締役
資産数億円以上の富裕層を対象に資産運用コンサルティングを行う。株式や債券、不動産などすべての資産クラスを扱い資産全体を最適化。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者2万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」を通して日本の富裕層に資産運用の情報を発信。

▼経歴
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱東京UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレー証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベート・バンキング本部の立ち上げに参画し同社の成長に貢献、2016年5月に退職。2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。

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外貨が「7割」の理由

それでは、外貨が資産全体の7割を占める理由についてお話しします。主なポイントは4つに集約できると考えていますので、順にご説明いたします。

ポイント1)利回りを生み出さない日本円を持つ意味があるか

現在、日本の国債の利回りはおよそ1%程度であり、円建ての社債も同程度の利回りが期待されます。これに対し、2%以上の利回りを得るためには、信用格付けの低い債券に投資する必要があり、それはリスクの高い選択となります。一方で、アメリカの国債では約4%の利回りが得られ、社債を組み合わせることで5%程度の利回りを実現することも可能です。

このような状況を踏まえると、日本円で低い利回りにとどまるよりも、外貨で運用して高い利回りを目指す方が合理的な選択肢となる場合が多いと考えられます。自然に利回りを重視して資産運用を進めていくと、特に意識しなくても外貨の割合が増えていく傾向があります。反対に、利回りを意識せず運用する場合には、このような傾向は見られないかもしれません。しかし、高い利回りを目指して資産運用を行う場合には、結果的に外貨比率が高まるのが一般的です。

私自身も、資産運用における債券の割合が高いため、高利回りを追求する中で外貨比率が高くなっていることが、その理由の一つになっています。

ポイント2)日本の財政悪化はいつか超円安を引き起こす

円安になる可能性はかなり高いと考えています。それは足元の数年や5年といった短期的な視点ではなく、もっと長いスパンである10年、20年先を見据えたドル高・円安のリスクです。その円安は一時的なものではなく、かなり大きな規模になる可能性もあると感じています。

その背景には、日本の財政悪化が挙げられます。この問題については現在ほとんど市場で注目されていませんが、いずれ大きな焦点になる可能性が高いと考えます。財政悪化が進むことで、日本売りが発生し、結果として超円安に陥るリスクは無視できないと思います。

特に注目すべきは、年金制度の問題です。現在の年金制度は持続可能ではなく、支払いを支える若い世代の負担は限界に近づいています。それでも年金や保険料は引き上げられていますが、政治的な反発が高まりやすい状況です。しかし、高齢者の人口が多いことから、民主主義の仕組み上、制度改革は進みにくい状態です。

このままでは年金制度の破綻が避けられず、それを支えるために日本国債の増発が続くでしょう。その結果、物価が上昇し、日本円の価値が下落する悪いインフレが進む可能性があります。景気の回復による良いインフレではなく、財政の信用失墜による円安が物価上昇を引き起こす、いわば悪性のインフレが懸念されます。

こうしたスパイラルが発生すれば、超円安が現実になる可能性は高いと考えます。現在は1米ドル150円程度ですが、10年、20年先には1米ドル300円や400円といった水準もあり得ると見ています。

私は日本に住み続けたいと考えていますが、現状の政治や財政状況を見ると、将来的な日本円の価値下落を心配せざるを得ません。そのため、資産配分として「円5割、外貨5割」を理想としながらも、実際には円を5割も持つことが妥当か疑問を感じることがあります。

結果として、日本円資産の割合を3割程度にし、外貨を7割にする方がリスク管理の観点から適切だと考えています。今後、もし政治体制が変わり、持続可能な年金制度が整備され、国債増発が抑制されるような将来性のある状況が見えてくれば、円資産の割合を4割や5割に増やすことも検討するでしょう。

しかし、現時点では日本の財政や政治への評価は厳しいため、資産配分としては円3割、外貨7割という構成に至っています。

ポイント3)収入は円が大半なので自然体なら外貨比率は下落

資産の7割が外貨になっていますが、収入の多くは円建てです。事業運営からの収入や役員報酬など、収入の大半が円建てであるため、外貨建ての債券などから得られる収益以外はすべて円で受け取ることになります。そのため、何もせず収入だけが入る状況では、自然と円の割合が増え、外貨比率は下落していきます。

この点を考慮し、資産の外貨比率をあらかじめ高めに設定している部分もあるかもしれません。もし私が収入のない状況で資産運用だけで生活することになれば、将来円建ての収入が見込めなくなるため、外貨比率をやや引き下げる可能性があります。たとえば、現在の7割から6.5割、あるいは6割程度に調整することも考えられます。

ただし、現時点では円建ての収入が安定して入ってくるため、資産のストック状態に対して外貨比率を高めに設定するのは合理的な判断といえます。私以外でも、事業を運営している方やまだ引退していない方など、収入の大半が円建ての人にとっては、資産のストック状態に基づいて資産配分を行う際、外貨比率をやや高めに設定することは十分理にかなっていると思います。

ポイント4)世界の通貨取引高の日本円シェアは8%にすぎない

世界の株式に投資をする際、どの国の割合を高くするかという話ですが、アメリカは時価総額の半分を占めているため、株式の中で半分を米株にするという発想が一般的です。しかし、通貨に関してはどうかというと、世界における通貨取引高は時価総額とは厳密に一致しませんが、取引されるボリュームに注目すると、世界に占める日本円のシェアはわずか8%に過ぎません。一方で、米ドルは44%、ユーロは15%となっています。これは2022年のデータですが、現在もほぼ変わらないと思われます。そのため、世界規模で考えると、日本円のシェアは8%に過ぎず、通貨の中心は米ドルやユーロなどの外貨になるのが現実です。

株式投資と同じように考えるなら、通貨に関しても、日本円が取引高で8%しか占めていないからといって、全体のポートフォリオの5割や6割を日本円にする理由はあまりないと言えるでしょう。むしろ、通貨の中心は外貨であるべきだという発想に基づいて、7割程度を外貨で保有することが理にかなっていると思います。ただし、日本人として消費するお金の大半は円であるため、通貨取引高に基づいて日本円の配分を8%や1割にするのは少なすぎると感じます。日々使うお金が円であることを考慮すると、3割程度がちょうど良いのではないでしょうか。世界の取引高の1割に対し、日本に住んでいるという特性を踏まえ、2割増やして3割程度にするのが適切だと思います。

まとめ

まとめとしてお伝えしたいのは、この円と外貨の資産配分は、その人の考え方や相場観、日本に対する捉え方、海外の成長など、複数の要因を総合的に考慮して決めるべきだということです。今回の考え方は私自身の見解に基づいて導き出したものですが、これがすべての方に当てはまるわけではないと考えています。ですので、皆さん自身が自分に合った円や外貨の比率を見つけて、調整していくことが大切だと思います。

本日は、「資産運用のプロである世古口が資産の『7割』を外貨にしている理由をご説明します」という内容でお届けさせていただきました。

今回の内容については「世古口俊介の資産運用アカデミー」でもご視聴いただけます。

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