目次
はじめに
資産運用を考える上で、外国債券を活用したポートフォリオ戦略は重要な選択肢です。しかし、外国債券にはどのようなメリットやデメリット、リスクが存在するのか、十分に理解している方は少ないかもしれません。さらに、為替リスクや外国債券の選択基準についても悩ましいところではないでしょうか。この記事では、ポートフォリオに外国債券を取り入れることで得られる分散効果や注意すべきリスクを詳しく解説し、資産運用における最適な戦略を見つける方法をお伝えします。この記事を通じて、リスクを管理しながら利益を最大化するための知識が身に付き、資産運用に役立つ新たな視点を得られるでしょう。この記事を読み終わる頃には、自ら外国債券を活用するポートフォリオ戦略を立てられるようになるはずです。
外国債券をポートフォリオに含めるメリット
外国債券をポートフォリオに含めることで得られるメリットはさまざまです。
- 分散投資の一環としての外国債券の役割
- 外国債券がもたらすリスクヘッジ効果
- 高利回りの可能性とその魅力
ここでは、上記外国債券をポートフォリオに含めることで得られるメリットについて解説します。
分散投資の一環としての外国債券の役割
外国債券をポートフォリオに組み込むことで得られるメリットとして、まずリスク分散効果が挙げられます。国内資産のみで構成されたポートフォリオは、円の動向や国内市場による影響を受けやすいためです。外国債券を加えることで、異なる経済状況や為替動向、金利政策の影響を受けるため、リスクを分散する手段となります。
例えば、ウェルス・パートナーが行ったポートフォリオ設計例をみてみましょう。当初、円預金100%だった資産配分を見直し、先進国債券中心のポートフォリオに設計し直したものです。
外国債券中心であるものの、ヘッジファンドで高い収益を狙いつつ、一定額の円預金を残すことで資産の流動性を保っています。
また、外国債券を保有する際には為替リスクを管理することも重要です。為替リスクとは、投資先の国の通貨と自国通貨の価値が変動することで生じるリスクのことを指します。為替リスクを回避するためには、通貨を分散することが一般的です。
また為替リスクを回避するため、為替ヘッジを行うのも一つの方法です。しかし、相応のヘッジコストが生じる点に注意が必要です。
外国債券がもたらすリスクヘッジ効果
外国債券は、ポートフォリオにおけるリスクヘッジ効果として有効です。まず、外国債券の価格変動は、株式に比べて小さいという特徴があります。また、株式と債券の価格は逆の値動きをする負の相関関係にあるため、ポートフォリオのリスクヘッジに大きな効果をもたらします。
。次に、外国債券を持つことによる通貨や地域の分散効果があります。異なる通貨や地域の経済状況、市場動向によって影響を受けるため、国内資産のみで構成されたポートフォリオと比べ、分散投資の一環としてリスクを低減する役割を果たします。
さらに、外国債券は地政学的リスクに対しても一定の耐性があります。特定の地域で政治的リスクが発生した場合でも、地理的に分散された債券ポートフォリオは、その影響を和らげる効果があります。これにより、ポートフォリオ全体の安定性を維持しやすくなります。
高利回りの可能性とその魅力
外国債券は、国内債券に比べて高い利回りも魅力です。。特に、経済成長が著しい新興国の債券は、先進国に比べて高い利回りである場合が多く、成長期待が利回りに反映されています。
また、先進国債券に目を向けても米国で再び10年国債利回りが4%台前半で推移しており、資産の安定性を確保しながら高い収益性が期待できます。
高利回りが投資家にとって魅力的な理由は、資産の成長を加速させる可能性が高いことにあります。特に、低金利環境下では、高利回りが得られる外国債券はポートフォリオの収益性を向上させる有力な手段です。また、利息による安定収入を得る手段としても魅力的です。
ただし、高利回り外国債券にはリスクとリターンのバランスを考慮する必要があります。高利回りは高リスクを伴うことが多く、発行体の信用リスクや為替リスク、政治的リスクなどが影響を及ぼします。このため、投資家は高利回りを追求する際には、これらのリスクを適切に評価し、リスクを軽減するための戦略を立てることが重要です。
また、特定の市場環境が高利回りを狙う際の投資戦略に影響を与えることがあります。経済の変動や金利の動向、通貨の変化などが外国債券の利回りに直接的な影響を与えます。市場環境を綿密に分析し、変化に柔軟に対応することで、投資を成功させることができるでしょう。
外国債券を取り入れる際の注意点
外国債券を資産ポートフォリオに組み込む際には、次のとおりいくつかの注意点を押さえる必要があります。
- 為替リスクの理解と対策
- 信用リスクの評価方法
- 外国市場特有のリスクへの対応策
ここでは、上記の外国債券を取り入れる際の注意点について詳しく解説します。
為替リスクの理解と対策
外国債券を投資先として選ぶ際、為替リスクは避けて通ることができない要素です。為替リスクとは、外国債券が発行されている通貨と自国通貨との価値が変動することで、自国通貨ベースの資産価値に影響を及ぼすリスクを指します。たとえば、米ドル建ての外国債券を円で取引する場合、円高になると円ベースで債券の価値が下がってしまいます。このリスクを軽減するための一般的な手法として通貨分散や為替ヘッジがあります。為替ヘッジとは、例えば為替の先渡し取引(フォワード取引)を利用して、未来の為替レートを一定にすることでリスクを回避するものです。この方法のメリットは、為替変動の影響を抑制できることですが、一方でデメリットとして、ヘッジコストが発生し、ポートフォリオ全体の収益が悪化する可能性があります。また、ヘッジを行うことで為替によるリターンを受けにくくなるという側面もあります。
信用リスクの評価方法
信用リスクとは、債券がデフォルト(債務不履行)となり、元利金の支払いが滞る可能性を指すもので、外国債券において大きなリスク要因となります。発行体の信用状況は保有資産に直接影響を及ぼすため、信用リスクの正確な評価は不可欠です。
信用格付は、格付け機関によって提供され、発行体の信用力を表す指標として広く利用されています。これにより投資適格か否かを判断し、信用リスク管理に役立てることができます。
画像出典 : https://www.daiwa.jp/seminar/study_products/bond_special/rating/
なお、上記図のとおり、信用格付と利回りは密接に関係しています。このため、収益性とリスクのバランスを考慮したポートフォリオ設計が不可欠となります。
外国市場特有のリスクへの対応策
外国市場特有のリスクへの対応は、債券投資家にとって大きな課題となります。政治的リスクはその一つであり、投資対象国の政情不安や政策変更は債券価格や利回り、為替に大きな影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクを評価するには、国際情勢の定期的なリサーチと専門家の分析を活用することが重要です。また、政治的リスクを管理するためには、特定の地域への集中投資を避け、ポートフォリオを地理的に分散(地域分散)することが重要です。地域分散により、特定の国のリスクを軽減し、全体のポートフォリオへの影響を最小限に抑えることができます。
また、投資対象国が抱える地政学的リスクにも注意が必要です。地政学的リスクとは、政治的・軍事的な緊張が、地理的な位置関係により、特定地域の経済や世界経済全体の先行きを不透明にするリスクのことです。
昨今の例では、ロシアによるウクライナ侵攻が与える影響は大きな地政学リスクといえるでしょう。
外国債券を選ぶ際の基本知識
外国債券投資を検討する際には、その種類と特性を理解することが重要です。ここでは、下記のとおり外国債券を選ぶ際の基本知識について解説します。
- 債券の種類と特徴
- 発行体の信用度の見極め方
- 利回りと期間のバランス
債券の種類と特徴
外国債券には、国債、社債、地方債といった種類が存在します。国債は、各国政府が発行するもので、比較的低リスクとされますが、利回りも低めです。一方、社債は企業が資金調達のために発行するもので、信用リスクが高くなる傾向がありますが、一般的に利回りは高めです。地方債は、地方自治体が発行するもので、リスクと利回りは発光体によって異なります。
外国債券を選ぶ際には、信用リスクが重要な要素となります。信用格付けを確認することで、債券の発行体が債務不履行に陥る可能性を評価できます。信用格付けが高いほど、信用リスクは低くなると考えられますが、利回りも低下する傾向があります。
通貨リスクも見逃せない要因です。外国債券は通常、発行国の通貨で取引されますが、為替レートの変動により、円建てでの価値が変動します。このため、ヘッジ手法や通貨分散が重要になります。通貨スワップや為替フォワード取引などのヘッジ手法を利用することで、通貨リスクを軽減できます。
以上のように、外国債券の種類とその特徴を理解することは、適切なポートフォリオ戦略を構築するうえで非常に重要です。それぞれの債券が持つリスクと利回りのバランスを評価し、信用リスクや通貨リスクを考慮に入れることで、効果的な投資判断を下せるでしょう。
発行体の信用度の見極め方
発行体の信用度を見極める際には、信用格付け機関の評価を利用することが一般的です。ムーディーズ、S&P、フィッチといった主要な格付け機関の評価を参考にするとよいでしょう。。これらの格付けは発行体の信用リスクをわかりやすく示してくれますが、格付けの背後にある財務状況や経済環境の分析も重要です。
ただし、これらの分析は一般投資家には難しいため、証券会社や銀行などが公開している各種レポートを参考にするか、IFA(資産運用アドバイザー)などプロのアドバイスを得るのがよいでしょう。
利回りと期間のバランス
外国債券は、国内債券に比べて利回りが高いことで魅力的ですが、その特徴を理解することが重要です。一般的に利回りは、発行体の信用リスク、債券の種類、金利情勢などによって変動します。これらの要因はそれぞれが複雑に影響し合うため、投資の際にはこれらを総合的に評価する必要があります。
投資期間に応じた選択も重要な要素です。短期の外国債券は金利の動きに対する価格変動が小さく、安全性を重視する投資家に適していますが、一般的に利回りは低めです。一方、長期の外国債券は利回りが高い傾向にありますが、金利変動の影響を大きく受けるため、リスク許容度によって選択が変わります。
利回りと期間をどのようにバランスさせるかは、ポートフォリオのリスク・リターンに直接的に影響を与えます。例えば、短期債券を組み入れることで、ポートフォリオ全体の価格変動を抑える効果が期待できますが、リターンが限定される可能性があります。そのため、個々の投資戦略や投資期間、市場の見通しを考慮し、適切なバランスを取ることが求められます。
他の資産クラスとの組み合わせ
外国債券を資産ポートフォリオに組み込む際、国内株式との組み合わせはリスク分散の効果を高めるために非常に有効です。
株式が市場の動向に敏感である一方で、外国債券は通常、異なる経済環境や通貨の影響を受けるため、価格が逆相関の関係にあるためです。これにより、リスクを相互に打ち消す効果が期待され、ポートフォリオ全体のボラティリティを抑えることができます。
また、外国債券と不動産投資信託(REIT)を組み合わせることで、お互いの強みを活かすことができます。REITは不動産市場の動向に連動し、安定的な配当が期待できるため、インカムゲインを重視する投資家にとって魅力的です。一方で、外国債券の利回りや金利環境の違いは、REITのキャッシュフローに対するリスクを補完し合う可能性があります。特に、異なる経済状況下でのリスクヘッジとして、REITと外国債券の相乗効果を得ることが可能です。
さらに、外国債券とコモディティ投資についても注目すべきでしょう。コモディティはインフレの影響を受けることが多く、インフレ対策として効果的です。このため、外国債券を組み合わせることで、インフレに弱い外国債券の弱点を補い、ポートフォリオ全体の安定性を高めることが可能です。
まとめ
外国債券投資を活用した資産ポートフォリオ戦略を実現するには、債券に関する知識と投資効果の評価が不可欠です。本記事では、ポートフォリオに外国債券を取り入れることで得られる分散効果や注意すべきリスクについて解説してきました。
外国債券投資にはさまざまな利点がありますが、市場の変動や経済状況に応じた柔軟な対応も求められます。本記事を参考にして、リスクを適切に管理しつつ、長期にわたって安定した資産形成を目指しましょう。
なお、外国債券投資を始めるにあたって不安な方は、ぜひウェルス・パートナーへご相談下さい。
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株式会社ウェルス・パートナー
ポートフォリオマネージャー
早稲田大学商学部卒業後、SMBC日興証券株式会社へ入社。富裕層、会社経営者向け資産運用コンサルティング業務に従事。証券会社では顧客に寄り添った提案ができないと思っていたときに代表の世古口と出会いウェルスパートナーの創業に参画。資産1億円以上の富裕層向けに資産保全・管理、相続・事業承継対策等のアドバイスを行っている。富裕層や資産形成層向けのセミナー講師としても活動中。