目次
はじめに
米国における利下げや大統領選挙、景気後退への懸念などにより2024年後半から米国為替市場が大きく変動しています。今後の政策や景気動向によっては円高が進む可能性も考えられるでしょう。
円高が進行する局面では、投資家の間で債券市場の動向に注目が集まります。しかし、円高が債券市場にどのような影響を与えるのか、理解できず、最適な投資戦略を見出せずに悩んでいる方も多いのではないでしょうか。この記事では、円高と債券の関係性を詳しく解説し、円高時に注目すべき債券の種類や選定基準、さらに債券投資に伴うリスクとその管理方法についても探っていきます。この記事を読めば、円高時の債券投資に対する理解が深まり、適切な戦略を立てる自信を持てるようになるでしょう。また、変動する市場でのリスク管理の重要性も再認識できるはずです。
債券価格の変動要因とは?
債券価格は、おもに次の3つの要因によって変動します。
- 金利
- 為替
- 景気
ここでは、上記債券価格の変動要因について詳しく解説します。
債券と金利の関係
債券と金利の関係性は、まず、投資家が抑えておくべきポイントです。債券価格と市場金利は逆相関の関係にあります。市場金利が上昇すると、既存の債券の価格は下がります。これは新規に発行される債券の利回りが上がるため、既存の債券の魅力が相対的に下がるからです。
逆に、市場金利が下落すると、既存の債券の価格は上昇します。金利低下により、新しく発行される債券の魅力が下がるためです。
さらに、長期債券と短期債券では金利の変化に対する価格感応度に大きな違いがあります。一般に、長期債券は金利変動に対する感応度が高く、金利上昇時に価格が大きく下落します。これに対して短期債券は、満期までの期間が短いため、金利変動の影響を受けにくいです。この違いは、投資家がポートフォリオ内で債券の価格変動リスクをどのように管理するかを考える際に重要な要素となります。
為替の変動が債券に与える影響
為替の変動も債券の価格に影響を与えます。円高が進行する場合、外貨建て債券の魅力が下がるため、国内債券の価格が上昇する一方で、外国債券の価格は下落します。
逆に、円安が進行する場合、外貨建て債券の魅力が増すため、国内債券の価格が下落する一方で、外国債券の価格は上昇します。
また、米ドル建て債券に投資する場合、為替の変動は円換算の資産価値や利息額にも影響を与えます。
例えば、1ドル=150円の時に米ドル建て債券を1万USドル購入したと仮定すると投資金額は150万円です。
円安が進み、償還時に1ドル=170円になった場合の受取金額は170円、20万円の為替差益が得られます。
逆に円高が進み、償還時に1ドル=130円になった場合の受取金額は130円、20万円の為替差損が生じます。
景気と債券価格の相関
債券価格は、景気によっても変動します。景気が良くなると金融引き締めにより金利が上昇するため、既存の債券は魅力が下がるため価格が下がります。
逆に、景気が悪くなると金融緩和により金利が下落するため、既存の債券は魅力が増すため価格が上がります。
また、景気上昇局面では株式のリターンが高くなり、固定金利の債券は魅力が低くなるため、債券価格が下落します。
一方、景気悪化局面では株式のリターンが低くなり、安定した収益を得られる債券の魅力が高くなるため、債券価格が上昇します。
このように、債券価格はさまざまな要因で変動することを考え、リスクヘッジ策を採ることが重要です。
円高が債券市場に与える影響
円高は、債券市場においてさまざまな影響を及ぼします。
- 円高時の外国債券のリスクとメリット
- 円高局面での国内債券の動向
ここでは、上記のとおり円高が債券市場に与える影響について解説します。
円高時の外国債券のリスクとメリット
為替が円高に振れると、外国債券は円ベースでの評価額が低くなります。このため、外国債券を保有している国内の投資家は、円高時に為替損失が発生するリスクが生じます。
ただし、仮に円高が進んだとしても、債券は保有期間中に利息収益を積み上げられるため、保有期間が長くなるほど「為替の損益分岐為替」が下がり、リスクヘッジが可能となります。
※為替の損益分岐為替・・・どこまで円高に耐えられるかを表す為替レート
例えば、1ドル=150円で利回り5%の米ドル債券に投資したケースを考えてみましょう。
投資から5年経過時点の損益分岐為替は118.1円、10年経過時点では91.4円まで損益分岐為替が下がります。
つまり、外国債券の為替リスクは、長期保有によってヘッジできるということになります。
詳しくは次の動画をご覧ください。
また、円高であっても長期的にみて円安傾向と考えられる場合は、外国債券投資のチャンスと捉えられます。
長期的に円安が進めば、円ベースの資産価値が増えるだけでなく、利息収益アップが見込めるからです。
円高局面での国内債券の動向
円高は国内債券の利回りにも影響します。円高は一般的に輸出産業に逆風となり、日本経済全体の重しになる傾向があることから、金利低下圧力につながる場合があります。金利が低下すれば、国内債券の価格は上昇する可能性があります。
さらに、円高は投資家の行動にも影響を与えます。円高時には、為替リスクを避けるために国内債券の比重を高める投資家が増える傾向があります。また、リスクを再評価するため、債券を売却してキャッシュ比率を高める動きも見られるでしょう。
円高を見越した債券投資の戦略
円高が進行する局面では、為替相場の変動が投資戦略に大きく影響を及ぼします。
ここでは次のとおり、円高を見越した債券投資の戦略について解説します。
- 為替ヘッジを活用した投資法
- 分散投資によるリスク管理
為替ヘッジを活用した投資法
為替ヘッジは、債券投資のリスク管理において重要な手法の一つです。
為替ヘッジとは、為替変動リスクを避けるため、為替の先渡し取引(フォワード取引)などを利用して外貨を自国通貨に交換する契約を結び、将来的な円高リスクを軽減または、なくす手法です。
例えば、米ドル建ての債券を保有している場合、円高が進行すれば円で換算した際の価値が下がります。ここで、為替ヘッジを行うことで資産価値の目減りを防ぐことができます。しかし、為替ヘッジにはコストが伴います。対象となる通貨やヘッジ期間によってコストは異なり、ヘッジコストが投資全体の収益に影響を与える可能性があります。さらに、為替ヘッジを行うことで為替変動による利益を逃すリスクもあります。したがって、これらのコストとリスクを十分に評価し、適切に管理することが重要です。
分散投資によるリスク管理
円高を見越した債券投資を考えるうえでは、分散投資によるリスク管理も重要です。
長期的に円高が進行すると予想する場合は、国内資産の保有割合を増やして為替リスクを避ける投資戦略も一つの選択肢でしょう。
ただし、日本では経常収支の悪化や、経済の構造的な実力不足などにより「円の実力が下がっている」とも言われています。
長期的に円の実力や価値が減少していった場合には、円を持つこと自体がリスクとなる可能性もある点に注意が必要でしょう。
円高局面をチャンスに変える!実践的な投資アドバイス
円高局面は、長期的にみて債券投資における大きなチャンスとなり得ますが、正しいアプローチと投資タイミングが重要です。
また、「どの債券に投資するか」「どのようにポートフォリオを組むか」も重要です。
債券にはさまざまな種類があり、投資するメリットとデメリット、リスクもそれぞれ異なるからです。
なお、記事執筆段階(2024年11月18日)ではやや円安傾向にあるものの、米国金利が再び上昇しており、米国10年国債利回りは4%台半ばとなっています。
米国債券投資を考えている 人にとっては、絶好の投資タイミングといえるかもしれません。
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株式会社ウェルス・パートナー
ポートフォリオマネージャー
成蹊大学法学部卒業後、三菱UFJモルガン・スタンレー証券へ入社。富裕層と会社経営者を中心とした資産運用のコンサルティング業務に従事。 証券会社では金融資産に対しての提案しかできないことに違和感を感じ、金融資産だけでなく実物資産や相続対策を含めた資産全体の最適化提案がしたいと思い株式会社ウェルスパートナーに入社。富裕層、会社経営者の資産配分最適化。 具体的な金融資産の投資実行サポート。 資産管理会社設立から相続対策など税務最適化。 超富裕層のインターネット企業創業メンバーに特化した新規顧客開拓。