米債新黄金時代トランプ政権下の米ドル債券投資戦略【前半】トランプ新政権が米ドル債券に与える影響

はじめに

皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
本日のテーマは、「米債新黄金時代トランプ政権下の米ドル債券投資戦略【前半】」です。アメリカ大統領選でトランプ大統領が再選されたことによって、富裕層の方にとって最も必要である資産クラスの米ドル債券にとっても非常に大きな影響があると思うので、今回は、米ドル債券の今後の行方や足元の状況、見通し、トランプ政権下での正しい米ドル債券投資戦略について詳しくお話しさせていただきます。

今回は前半の、「トランプ新政権が米ドル債券に与える影響」と「米ドル債券利回りと米ドル円の現状と見通し」について、後半は、「トランプ新政権下の米ドル債券投資戦略」と「米ドル債券ポートフォリオ最新設計実例」についてお伝えします。

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米債新黄金時代トランプ政権下の米ドル債券投資戦略(2024年11月15日開催オンラインセミナー) 米債新黄金時代トランプ政権下の米ドル債券投資戦略(2024年11月15日開催オンラインセミナー) 2024年11月15日開催オンラインセミナー「米債新黄金時代トランプ政権下の米ドル債券投資戦略」のアーカイブ動画になります。

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▼プロフィール
世古口俊介(せこぐちしゅんすけ)
株式会社ウェルス・パートナー代表取締役
資産数億円以上の富裕層を対象に資産運用コンサルティングを行う。株式や債券、不動産などすべての資産クラスを扱い資産全体を最適化。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者2万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」を通して日本の富裕層に資産運用の情報を発信。

▼経歴
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱東京UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレー証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベート・バンキング本部の立ち上げに参画し同社の成長に貢献、2016年5月に退職。2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。

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11月5日アメリカ大統領選の結果

トランプ新政権が米ドル債券に与える影響についてお伝えしますが、まずは、11月5日のアメリカ大統領選挙の結果を簡単におさらいします。

皆さんもご存知の通り、トランプ氏が勝ちました。アメリカ大統領選は、大統領がどちらになるかが重要なだけでなく、上院と下院のどちらが過半数を取るのかが非常に重要です。上院とは日本でいう参議院、下院は日本でいう衆議院のイメージです。

こちらを見てわかるように、上院も下院もトランプ大統領の共和党が過半数を取るという結果になりました。これにより、いわゆるトリプルレッド、大統領も上院も下院も全て共和党が独占している状態になっています。このような状態になると、大統領は行政を進め、上院・下院では法案を通すことができるので、ほとんどのことを共和党だけで決めて実行までできて、法律まで作れるという状態です。ですからある意味、無敵な状態がしばらく続くということです。

いつまで続くかというと、下院の選挙は2年に1度なので、2年後の選挙はどうなるかわかりませんが、それまではこのトリプルレッドという状態が続きます。つまり、トランプ大統領が思った通りの政策を進めていくことができることになったのです。大統領選だけに注目しがちですが、上院・下院も共和党になったということが、非常に重要な出来事であったと思います。

トランプ新政権の政策と米ドル債券への影響予想

ここからは具体的に、トランプ新政権の政策と、それが米ドル債券にどのように影響を及ぼすのかという予想をお伝えしていきます。トランプ新政権の政策はいろいろある中で、マーケットや米ドル債券に与える影響は、次のような4つが考えられます。

個人減税延長・法人税減税

トランプ大統領の前任期間でやった減税が2025年の年末に切れるので、これを延長することや、法人税減税をする可能性が高いと思います。税金を下げて経済を刺激するというのが1つ目です。

米国債の増発、拡張財政

景気を刺激するために国債を新たに発行して、景気対策にお金を使うということをやってくる可能性が高いです。ですから、米国債を増発して財政が拡張する可能性があります。

輸入品に対して高関税

国内の産業を重視して守ろうとしているので、輸入品に関して一律で高い関税をかけるということをやってくる可能性があります。

アメリカ新興企業への優遇

アメリカの新興企業への優遇は引き続き行っていくと思います。これは、イーロン・マスク氏がトランプ大統領を支援しているということもありますが、トランプ大統領がやっていた前任の期間にもナスダックの株価上昇は2.5倍ほどでした。ですから、新興企業を優遇するという側面は結構あると思っています。そのようなことにより、ナスダックの株価上昇が全体の株価上昇を牽引する可能性が高いと思います。

このようにトランプ新政権の政策は、全て一つの経済現象につながっています。それはインフレです。これがトランプ新政権における一つのキーワードになると思います。インフレはここ最近も聞いていたと思います。2022年にロシアがウクライナに侵攻して、原油が暴騰して資源価格全体が上がり、大変なインフレになりましたが、ようやく2023年から2024年に落ち着いてきました。インフレ率は、2022年には7%でしたが、3%~5%に下がってきました。

しかし、ここでトランプ氏が大統領になったわけです。これらの政策をやることによってインフレが再燃する、この大統領選でその可能性が非常に高まったということがいえると思います。インフレになると米ドル債券に対する影響も大きいのですが、アメリカの高金利やそれに伴う米ドル高が継続するということを意味していると思います。

インフレはどんどん沈静化していくという見通しでした。来年以降は、政策金利を一番高いところから下げていく予定でしたが、それほど下げられなくなるのではないかと思います。米金利が高い状態が続き、米ドル円も高い状態が続くことが予想されています。

アメリカ政策金利の予想(2024年11月14日時点)

ここからは、米ドル債券の利回りと米ドル円の現状と見通しについてお伝えします。

こちらはアメリカ政策金利の予想です。左にMEETING DATEとありますが、どのFRB会議のタイミングで何%の政策金利になるのかという、アメリカ政策金利の市場予想が常に出されているので、それを見ていきましょう。

青く色付けされているところが一番高確率でなる可能性が高いと思われている数値です。現状は4.75%の金利が、1年後の2025年12月10日は3.75%というのが1番高確率と思われているので、今の状態から1%程度政策金利が下がるという予想がされているということです。

ここでお気づきの方がいらっしゃるかもしれませんが、先月はどうだったかというと、2024年10月は3.25%程度になると、この予想よりも0.5%金利が低いと考えられていました。さらに3ヶ月前の予想は2.75%になるという予想で、今の予想よりも1%金利が下がる、今の金利から2%下がると予想されていました。

しかし、トランプ大統領になったことによって、トランプ氏が先ほどのような政策をやっていったら、「インフレがなかなか収まらない」「むしろもっとインフレになるのではないか」ということで、FRBは金利を下げていく考えに変わりはありませんが、それほど下げられないのではないかと考え、このような予想になっているわけです。金利が下がる予想であることに間違いはありませんが、下がり方が緩やかになるというのが今時点の政策金利の予想になっています。これがトランプ大統領になったことによる政策金利への影響です。

米10年国債利回りの推移(過去3年)

ここからは、皆さんが投資されている米ドル債券の利回りの大元になっているようなアメリカ10年国債利回りの推移を見ていきましょう。これが上がると米ドル社債の利回りも全て上がり、これが下がると米ドル社債も下がります。こちらは過去3年のチャートです。

基本的には右肩上がりですが、2023年10月くらいがピークで5%くらいまでいきました。その後はそれを超えることはなく、政策金利が下がるという見通しだったので、少しずつ下がっていくイメージだったのですが、2024年4月は4.7%をつけました。そこからアメリカの景気が後退するのではないかという懸念があったので下がっていき、2024年9月には3.6%になりました。

しかし9月、10月になるにつれ、トランプ氏が大統領に当選するのではないかという予想が高まっていき、で、ハリスよりもトランプ氏の方が優先なのではないかという選挙の調査結果などが出てくることによって、トランプ氏が大統領になるという期待値が大統領選前から上がりつつあったわけです。大統領に決まってさらに上がり、2024年11月の米10年国債利回りは4.4%になっています。

この4.4%という状況がどのような水準といえるのか考えてみます。米10年国債利回りが4%以上のタイミングは、長いチャートを見てみてもほとんどありません。2022年以前のインフレは、リーマンショック前、2007年あたりです。つまり、十数年ぶりに米国債が4%以上の利回りの水準になっているのです。足元では利回りや金利が非常に高い状態になっています。

では、この米10年国債利回りは今後どうなっていくのでしょうか。先月、先々月までの予想では、利回りが徐々に下がっていくのではないか、来年の前半にかけて政策金利が下がってくるので、基本的に10年国債利回りも少しずつ下がっていき、3%台前半や中盤くらいになっているのではないかと予想して皆さんにお伝えしていました。しかし、トランプ大統領になったことによって、予想のイメージとしては、高利回りが継続すると思います。4.4%から来年1年かけて大幅に3%、2%になるのかといったら、ならない可能性が高いのではないでしょうか。今の水準並みや、もしくはもう少し高い状態が当面は続く可能性が高いと私は考えています。

米ドル円と米10年国債利回りの推移(過去3年)

ここからは米ドル円がどうなっているのかをお伝えします。こちらは米ドル円と先ほどの米10年国債利回りを二つ合わせた過去3年のチャートです。

青色のチャートが米ドル円で、オレンジ色が米10年国債利回りです。米10年国債利回りが上がると、金利が高い通貨にお金が集まるので米ドル高円安になり、逆に利回りが下がると米ドルが売られて米ドル安円高になるという傾向に動いています。直近ではまさにその通りに動いているイメージです。

為替は2024年7月に161円と歴史的なドル高円安の水準になった後、基本的には円高方向になっています。アメリカの景気が後退して金利を下げるという予想になったので、2024年9月には一時的に140円をつけました。しかし、そこから金利が上がっていくのを見ていただいたと思いますが、トランプ大統領になるという予想が強くなってきたので、2024年11月には156円という為替の水準になっています。

これが先ほどお伝えしたように、アメリカの10年国債利回りが今の水準をキープしながら推移するということだとすると、為替も同様に、今のレートの水準、もしくはドル高円安の水準が来年以降も推移していく可能性が高いのではないかと思っています。

代表的な債券種類・格付けの利回り(最新・予想)

ここでは代表的な債券種類、格付けの利回り最新の水準と1年後の予想の利回りをお伝えします。

米国債・普通社債・劣後債とありまして、債券格付けは、米国債がAA+、普通社債がA−、劣後債がBBBで、期間は全て10年のもので利回りを比べていきます。米国債は2024年11月の最新の利回りは均すと4.2%です。普通社債は4.4%なので、米国債に対して0.2%くらい上乗せ利回りがあるという状況です。劣後債は4.6%の水準です。

この3債券の種類、格付けの利回りを見ていただくとわかるように、基準になる米国債の利回りが高いので、普通社債と劣後債も利回りの水準が高いのですが、それぞれの利回り差はあまりないと思いませんか。それぞれ0.2%しか利回り差がありません。

これは何故かというと、トランプ大統領になるということで、企業が好景気を織り込んでいる可能性が高いからだと思います。企業を優遇して個人が割高になるような政策になる可能性が高いので、会社が倒産する可能性は低いと市場が楽観的になっていることによって、債券や社債や劣後債も購入されて、価格が上がって利回りが下がり、米国債・普通社債・劣後債の利回り差が縮小しているというような状況なのかと思います。

これが足元の状況ですが、1年後の2025年12月末にはどのような利回りになっている可能性が高いのでしょうか。米国債は恐らく4%台の可能性が高いと思います。4%台をキープし、今の状態から0.2%下がる可能性が高いと思っています。普通社債も劣後債もそこから0.2%金利が下がって4.2%、4.4%と今の状態から少しだけ利回りが下がっている可能性が高いのではないかというのが私の見通しです。今の状況とそれほど変わらないと考えています。

先月や先々月はもっと下がると思っており、少なくとも3.5%くらいを切る可能性が高いのではないかと思っていました。しかし、トランプ大統領になり、政策金利も下がらないのではないかと考えたことによって、このようにそれほど利回りは下がらないのではないかという予想に変わったということです。

まとめ

今回のテーマである「米債新黄金時代トランプ政権下の米ドル債券投資戦略【前半】」をまとめます。ポイントは4つです。

ポイント1)利下げ実施でもインフレ期待で高利回り継続の可能性

政策金利の利下げは実施されると思いますが、それでもトランプ政策によるインフレ期待によって、米ドル債券の高利回りを継続する可能性が来年以降も高いのではないかと考えています。

ポイント2)金利差と米国集中で米ドル高・円安も継続の予想

このように高金利が続くと、日米の金利差は開いている状態が続き、トランプ氏の政策は米国に資産を集中するという政策なので、米国の資産集中が進むということで、米ドル高円安も継続し、今よりもよりドル高円安になる可能性がそれなりに高いと予想しています。

ポイント3)米好景気期待で格付間の利回り差は縮小傾向

アメリカの好景気が期待されているので、市場は楽観的になっています。それにより、米国債・普通社債・劣後債のように、格付けが高い債券と低い債券の利回り差は縮小している傾向にあります。

ポイント4)米債新黄金時代への期待で富裕層の米債投資は増加

このようにトランプ新政権による、米ドル債券の新黄金時代というような雰囲気になっており、そのような期待によってすでに利回りが高まっているので、富裕層の方の米ドル債券投資は、足元では増加しているというのが、私たちがこの仕事をしている実感です。実際にトランプ大統領になってから、米債への投資の相談は増えています。

本日は「米債新黄金時代トランプ政権下の米ドル債券投資戦略【前半】」という内容でお届けさせていただきました。

今回の内容については「世古口俊介の資産運用アカデミー」でもご視聴いただけます。

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