目次
はじめに
米国で利下げが開始された現在、債券投資で5%の利回りを狙うのは困難な状況になりつつあります。債券投資を検討する際に「どうやって利回り5%を実現するか」と悩んでいる方も多いでしょう。この記事では、利回り5%の債券投資を行う方法と社債の活用方法、を解説します。さらに、社債を含む債券の信用リスクと利回りの関係や、具体的な利点とリスクについても触れていきます。この記事を読めば、利回り5%の債券投資に必要な知識や社債への理解が深まり、投資判断がしやすくなるはずです。ぜひ最後までお読みいただき、債券投資を成功させてください。
債券投資の基本とは?
債券とは、企業や政府・地方公共団体などが資金調達のために発行する借用証書のようなもので、定期的に一定の利息を受け取ることができる金融商品です。投資家が債券を購入することで、発行者に資金を貸し付け、満期時に元本が返還されるものです。
画像出典 : https://www.smbcnikko.co.jp/first/learn/bond/kiso01/
債券にはさまざまな種類があり、国債、社債、地方債などが一般的です。それぞれの債券は発行体の信用度や経済状況に応じて利回りや信用度が異なります。たとえば、政府が発行する国債は比較的低い利回りの場合が多いですが、リスクも低いため安定した投資先とされています。一方で、企業が発行する社債はより高い利回りを期待できることがあるものの、発行体の財務状況によってリスクが伴います。
債券投資にはいくつかのメリットがあります。まず、株式と比べて価格の変動が少なく、比較的安定した収益を得られることが挙げられます。また、定期的に利息が支払われるため、安定した収入源としての側面もあります。しかし、デメリットとしては市場金利の影響を受けやすく、金利が上昇すると債券価格は下落する傾向にあること、さらに発行体の信用リスクが挙げられます。したがって、債券投資を行う際は、利回りやリスクを十分に理解し、自身の投資方針やリスク許容度に合った選択をすることが重要です。
債券の種類と特徴
債券の種類は、大きく分けて国債(地方債)と社債に分けられます。
国債は、国家が発行する債券であり、一般的に安全性が高いと評価されています。安全性が高いため、利回りは社債に比べて低い傾向にありますが、安定した収益を期待できます。国債には、短期から長期のさまざまな期間があり、自身の投資目標や資金計画に応じて選択することが可能です。
社債は、企業が資金調達のために発行する債券です。企業の信用度によって利回りが決まるため、一般的に国債よりも高い利回りが得られます。ただし、社債は企業の経営状態によってはリスクが高くなる場合もあります。社債には、投資適格債と投機的格付け債のように、信用度に応じて分類される格付けがあり、それぞれリスクとリターンが異なることを理解しておく必要があります。
画像出典 : https://www.j-flec.go.jp/links/jikan/qa/046.html
債券の利回りと利率の違い
債券購入を考える際、利回りと利率はしばしば混同されがちですが、それぞれ異なるので注意が必要です。
- 利率 : 投資金額に対して毎年受け取る利息の割合を示したもの
- 利回り : 投資金額に対して「利息収益」+「償還差損益」の合計額の割合を示したもの
債券の利回りは、次の計算式で算出して比較します。
例えば、購入価格95円、利率4%、償還までの期間が5年の債券の場合、利回りは次のとおり5.263%となります。
なお、新発債(新しく発行される債券)は、購入価格と額面金額が同じ場合が多いため、満期まで保有すれば、利率=利回りとなります。
利回り5%の債券投資を行う方法
債券投資を検討する場合、利回り5%程度を目標にしている方も多いのではないでしょうか?
しかし冒頭で触れたとおり、米国で利下げが開始された現在、債券投資で5%の利回りを得るのは難しい状況です。
このような状況で注目を集めているのが、社債への投資です。
ここではまず、社債投資の基本となる「米国普通社債」についてどんな銘柄があるのかみてみましょう。
米ドル普通社債の銘柄一例
米ドル普通社債の銘柄の一例です。※現在では以下の状況より利回りは低下傾向にあります。
1つ目の社債は日本の投資会社で、残存期間は6.7年、債券格付けはBBのため低格付け債と呼ばれる社債です。
この銘柄は格付けが低いため利回りは高く「リスクを許容しながら高い利回りを目指したい」という人であれば投資する価値があるといえます。しかし、安定運用を望む人にはおすすめできません。
2つ目の社債以降はすべて「投資適格債」ですが、業種や残存年数、格付けや利回りがさまざまです。
まず、2つ目の社債は日本の銀行で、残業期間は8.4年、債券格付けはA−、利回りは4.7%になります。
3つ目の社債はアメリカの通信会社で、残存期間は9年、債券格付けはBBB+、利回りは4.4%です。
4つ目の社債はアメリカのIT会社で、残存期間が16.1年、債券格付けはBBB、利回りは5.1%です。
5つ目の社債はアメリカの保険会社で、残存期間21.3年と長めになっており、債券格付けはA−、利回りは4.9%です。
6つ目の社債はアメリカの飲食企業で、残業期間は23.6年、債券格付けはBBB+、利回りは5%です。
7つ目の社債はアメリカのエンターテインメントの会社で、残存期間は26年、債券格付けはA-、利回りは4.8%です。8つ目はアメリカのIT会社で、残存期間が35.6年と非常に長い債券です。債券格付けはAA+で、利回りは4.3%です。
上記銘柄のほとんどは「投資適格債」ですが、全銘柄の利回り平均は約4.9%です。
ただし、現状では上記の状況より利回りが低下しているため、普通社債だけで利回り5%を達成するのは難しく、ポートフォリオ全体の利回り向上のために、低格付債(普通社債)・劣後債や永久劣後債、CoCo債の組み入れも必要になるでしょう。
続いて、社債の種類について解説します。
社債の種類とは?
まず、普通社債とは国債のリスクに企業の信用リスクが上乗せされた債券です。
劣後債とは「企業が倒産した場合に、お金が返ってくる順番が普通社債よりも劣る」という条件が付いた債券です。普通社債よりリスクが高い分、利回りも高くなります。
永久劣後債とは文字通り満期がなく、繰上償還条項によって発行体が「繰上償還日に償還するかスキップするか」を決められる債券です。
繰上償還しないリスクがあるため、利回りは劣後債より高くなります。
CoCo債とは、自己資本比率が基準値を下回るなど、あらかじめ定められた条件に該当した場合に、元本の一部または全部が削減されたり、強制的に株式に転換されたりする条項がついている債券です。
元本の削減や株式転換リスクが上乗せされているため、利回りは永久劣後債より高くなります。
現状の普通社債だけで利回り5%を実現するのが難しい状況を考えると、これからは劣後債や永久劣後債、CoCo債を組み合わせて「いかに5%の利回りを目指すのか」が債券投資の重要な課題といえるでしょう。
利回り5%以上を目指すなら米ドル社債以外の活用も必要?
最近では社債や国債だけでなく、株式やヘッジファンドに投資する富裕層が急増しています。
株式やヘッジファンドに投資する富裕層が急増している理由は次のとおりと考えられます。
- 利回り低下により普通社債のみで利回り5%以上は難しい
- 株式はインフレと米金利低下への対抗策として有効
- ヘッジファンドで株式・債券と連動性のない資産へリスク分散
まず、ここまで解説してきたとおり、利回り低下によって普通社債のみで利回り5%以上を得るのが難しいという現実があります。
また、インフレが懸念される中、株式はインフレ対策や米金利低下への対抗策として有効というのも理由の1つでしょう。
加えてヘッジファンドは、株式・債券と価格の連動性がないため、保有することでリスク分散につながるという側面もあります。
このため、「利回り5%以上を目指したい」という方であれば、社債など債券だけでなく、一部資金を株式やヘッジファンドで運用するのも選択肢として考えられるのではないでしょうか。
株式やヘッジファンドに投資する富裕層が急増している理由については、次の動画で解説しているので、ぜひ併せてご覧下さい。
今、株式やヘッジファンドに投資する富裕層が急増している理由
まとめ:利回り5%の債券投資を始めるには
利回り5%の債券投資をする方法と社債の活用方法について解説してきました。再度要点をまとめます。
- 金利が低下傾向にあり普通社債だけで利回り5%の達成は難しい
- 利回り5%の達成のためには劣後債や永久劣後債、CoCo債の活用が必要
- 社債だけでなく株式やヘッジファンドへの投資も選択肢の1つ
米国では2025年も金利低下が見込まれており、今後はますます利回り5%の実現は難しい状況になるかもしれません。
このため、社債の銘柄選びやポートフォリオ設計は慎重に行い、可能であればIFA(資産運用アドバイザー)へ相談するのがおすすめです。
なお、私たちウェルス・パートナーでは、社債投資だけでなく資産運用全般について無料で相談を承っています。
「社債投資についてアドバイスが欲しい」「社債投資で利回り5%以上を目指したい」と考えている方は、ぜひ気軽にご相談ください。
株式会社ウェルス・パートナー
ポートフォリオマネージャー
早稲田大学国際教養学部卒業後、大和証券株式会社へ入社。富裕層と会社経営者を中心とした資産運用のコンサルティング業務に従事。顧客の資産全体の最適化や会社経営者への相続対策まで支援をしたいという思いがあり、株式会社ウェルスパートナーに入社。