目次
はじめに
皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
今回のテーマは、「米ドル債券利回り再上昇!最新の米債ポートフォリオ設計例を紹介」です。
近頃、米ドル債の利回りが注目されていますが、今年の9月には一時的に低下したものの、9月下旬から再び上昇傾向にあります。多くの方が下落が続くと予想していた中での再上昇で、関心が集まっています。また、これに伴い、米ドル債券の利回りや格付けなどに影響が出ており、ポートフォリオ設計にも大きな変化を及ぼしています。今回は、米ドル債券の現状や、現時点でのポートフォリオ設計例についてお伝えします。
▼今回の内容はYouTubeでご覧いただけます
米10年国債利回りの推移(過去3年)
まず、いつもご覧いただいている米10年国債利回りの推移(過去3年)を見ていきます。
米ドル債券の利回りは、過去3年間のチャートから基本的に右肩上がりの傾向が確認できます。2023年10月頃にピークを迎えた後、緩やかな下落トレンドに転じ、2024年は3.8%程度で始まりました。4月26日には年内最高の4.72%まで上昇しましたが、アメリカ経済の悪化懸念から下落を開始しました。現在10月ですが、9月16日には一時的に3.61%まで低下し、その後1ヶ月で4.21%まで回復し、9月の最安値から約0.6%の上昇を見せています。再び上昇に転じてきた状況です。
再上昇の要因として、11月上旬に予定されているアメリカ大統領選挙が影響していると考えられます。トランプ氏の当選の可能性が高まったことが、利回りにも反映されているようです。仮にトランプ氏が大統領に就任した場合、経済活性化を目的とした政策により景気が刺激され、インフレ率の上昇が見込まれます。そのため、政策金利の引き下げが想定よりも進まず、インフレ懸念が再燃したことで、10年国債利回りは再び上昇しています。
したがって、11月の大統領選挙後の利回り動向は、トランプ氏かハリス氏のどちらが大統領になるかによって変動が予想され、先行きは不透明です。しかし、現時点では利回りは上昇傾向にあり、皆様が投資している米ドル債券の利回りも同様に上昇しています。
以上が、米10年国債利回りの直近の状況です。
アメリカ政策金利の予想(2024年10月22日時点)
こちらもいつもご覧いただいている表ですが、先ほどの米10年国債利回りのさらに大元になっている、アメリカの中央銀行が決定する政策金利、つまり国が定める基準金利です。
アメリカの中央銀行が決定する政策金利は、表の左端にある「MEETING DATE」列に政策金利を決定する会議の日付が記載されており、1〜2ヶ月に1回の頻度で開催される会議で決定されます。その都度、次の金利水準がパーセントで予測されます。
現在の予想金利は4.75%で、今年9月に0.5%の利下げが行われたため、現行水準は4.75%です。しかし、1年後の2025年10月の予想金利は3.5%前後となっています。薄い青で色付けされた箇所が、さまざまな金利の中で最も確率が高いと見込まれている水準です。
3.5%という水準は、現行から1.25%低い水準であり、かなりの利下げが予想されていますが、昨月9月時点では1年後の2025年9月の金利がさらに低い2.75%になると見込まれていました。つまり、去年の予想では1年後の政策金利が現行より約2%低くなると予測されていたものの、現在は1.25%までの低下にとどまると見込まれています。これは、去年の予想と比べて0.75%ほど高い水準への予想変更です。
現在、トランプ氏の大統領就任によりインフレが長引くと予想され、利下げ幅が限定的にとどまると見られています。そのため、長期金利も再び上昇傾向にあります。
代表的な米ドル債券の利回り(過去・最新)
主な投資対象には、米国債、普通社債、期限付劣後債の3種類があります。
各債券の期間は10年で、格付けは米国債はAA+、普通社債はA-、期限付劣後債はBBBです。これらの利回り水準について、1ヶ月前と最新(10月)の平均利回りを比較してみます。
まず米国債ですが、9月時点では利回りが約3.7%でしたが、10月現在では4.1%に上昇し、1ヶ月で約0.4%の上昇が見られます。次に普通社債は、9月には4.1%の利回りでしたが、こちらも米国債と同程度に上昇し、10月には4.4%と0.3%ほどの上昇が確認されています。最後に、期限付劣後債は、9月時点で4.4%でしたが、直近では4.7%に上昇し、他の債券と同様に上昇傾向が見られます。
このように、1ヶ月前と比較すると、米ドル債券でポートフォリオを組む際に利回りが 0.3%〜0.4%ほど上昇しており、より高い利回りが期待できる状況です。
米ドル債券ポートフォリオ最新設計例(2024年10月23日)
本設計例は、10月23日時点の債券条件をもとに構成された最新のポートフォリオです。
総額3億円のポートフォリオを15銘柄の債券に分散し、各銘柄に2,000万円ずつ投資する設計です。
発行体は表の左側に記載されており、業種の分散が図られています。投資会社、保険会社、通信、飲料、銀行、娯楽、IT、小売りなど、多岐にわたる業種に加え、アメリカを中心に、イギリス、日本、ベルギーなどさまざまな国籍の企業が含まれています。債券は主に普通社債で構成されていますが、15銘柄中4銘柄には期限付劣後債も組み込まれています。
通貨はすべて米ドル建てで、債券の格付けは最も低いものでBB+、主にBBBクラスが多く、A-以上の銘柄が全体の約半分を占めています。最高ランクにはAAやAAAの債券も含まれ、平均格付けはA-相当です。したがって、ポートフォリオ全体として、日本のメガバンクに相当する債券格付けの水準を備えたポートフォリオと言えるでしょう。
残存期間は幅広く、短いもので3年や5年、8年、長いものでは10年、12年、15年、さらには20年以上の27年や29年といった債券も含まれています。債券は数年ごと、または1〜2年ごとに償還される構成で、平均残存期間は17. 1年です。
収益性については、利回りが4%台中盤の銘柄が多く、一部は5%を超えるものもあります。全体の平均利回りは約4.6%で、これは9月時点の同等格付けポートフォリオの平均利回り(約4.2%〜4.3%)より0.3%〜0.4%上回る水準です。アメリカの金利上昇の影響により、利回りがさらにプラスで推移することが期待されています。
現在の高金利水準を背景に、残存期間を長くしたいという要望が多く、10年以上から20年以上の比較的長期のポートフォリオが増えています。A-クラスの格付けで利回りが4%台中盤を維持できれば、非常に優れたポートフォリオが実現できるでしょう。
まとめ
では、今回のテーマ、「米ドル債券利回り再上昇!最新の米債ポートフォリオ設計例を紹介」をまとめます。ポイントは4つです。
ポイント1)米債利回りは9月から1ヶ月で+0.3~0.4%程度上昇
2024年9月から10月にかけて、米ドル債券(米国債や米ドル社債)が+ 0.3%〜0.4%程度利回り上昇しました。
ポイント2)富裕層は再び高利回りの米債投資を増やしている
米ドル債券の利回り上昇を受け、富裕層の間で米ドル債券への投資が再び増加しています。今後の見通しは大統領選挙の結果次第ですが、仮にトランプ氏が当選した場合でも、当面は政策金利の引き下げが見込まれるため、現在の水準で高い利回りを確保しておくことが有効と考える富裕層が多いようです。今後、金利の低下が予想される中で、高い利回りを現時点で固定する目的から、米債への投資が増えています。
ポイント3)債券PFは平均格付けA-で利回り4%中盤が相場
現在のポートフォリオ構成では、平均格付けA-で、利回りは4%台中盤が現在のリスクと格付けの相場となっています。1ヶ月前には利回りが4%前半程度でしたので、この1ヶ月で利回りが上昇していることから、短期的にもチャンスと捉えられるでしょう。利回り5%を目指す場合は、平均格付けをBBB+からBBBに引き下げることで実現可能になると考えられます。
ポイント4)平均残存期間は10年中盤から20年くらいがオススメ
現在の4.2%前後という高金利は、債券投資にとって絶好のチャンスです。そのため、投資期間を長めに設定する傾向が強まっており、10年後半から20年程度の残存期間でポートフォリオを組む設計が人気です。私自身もこの構成を推奨しています。
本日は「米ドル債券利回り再上昇!最新の米債ポートフォリオ設計例を紹介」という内容でお届けさせていただきました。
株式会社ウェルス・パートナー
代表取締役 世古口 俊介
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。
2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者1万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
メディア掲載情報:「m3.com」「ZUU online」「MONEY zine」「マネー現代」でコラムを連載中