はじめに
皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
本日のテーマは、「米ドル債券は2024年後半が勝負の分かれ目!その理由とは?」です。現在の米ドル債券の高利回りが徐々に終わりに近づいていると感じています。2024年7月、下半期に入ったわけですが、今年の後半が天王山、つまり勝負の分かれ目となる非常に大事な機会であると考えています。今回は、私が2024年後半が米ドル債券にとって天王山、勝負時であると思う2つの理由について詳しくご説明できればと思います。
▼今回の内容はYouTubeでご覧いただけます
米ドル債券は2024年後半が勝負の分かれ目の理由
米10年国債利回りと米ドル円の推移(過去3年)
こちらは米10年国債利回りと米ドル円の推移です。米ドル債券にとって特に重要なこの2つのチャートの過去3年の推移を見ていただきましょう。
青色のチャートが米10年国債利回りで、数値は右軸です。オレンジ色のチャートが米ドル円で、数値は左軸です。この2つのチャートを重ねて表していますが、米10年国債利回りが上昇していくとともに、概ね米ドル高円安に進んでいるのが過去3年の流れです。右側にいくと最新の数字になっています。
2024年以降に注目してください。米10年国債利回りは上昇しており、それに伴い米ドル円も上昇しています。米10年国債利回りの上昇よりも、ドル高円安の方が若干進んでいるのが2024年の特徴ではないかと思います。ドル高円安にいっていますが、米10年国債利回りの上昇はそれほどでもないということです。為替と利回りのチャートに少し開きが出てきたというのが最新の状況です。
このチャートを見ると、米ドル債券は2024年後半がやはり勝負時であることが表れていると思います。つまり、私がお伝えする2つの理由はここに全て表れています。
米ドル債券は2024年後半が勝負の分かれ目の理由①利回り
1つ目は利回りです。米10年国債利回りが全ての米ドル債券利回りの根源になっているので、米10年国債利回りが下がれば、皆さんも投資しているような米ドル建ての債券の社債などが概ね下がりますし、上がれば上がるということになっています。
2024年は、一時的には利回りが4%後半まで上がりましたが、若干下降傾向にあります。4月~5月は利回り4.4%~4.6%までいきましたが、そこから徐々に下がりつつある状況です。これは、今年の9月にアメリカの政策金利が下がることを織り込み始めているからです。利下げが一度始まると、徐々に政策金利を下げていくだろうと、米10年国債利回りにも織り込まれてきて、債券利回り全体を下げる可能性があると考えています。
ですから、2024年後半が天王山だと思う理由の1つ目は、米ドル債券の利回り低下のリスクです。このチャートの現在よりも未来の話なのでどうなるかわかりませんが、大まかな読みとしては、利回りはこのチャートの青色の矢印のように下がっていく可能性の方が高いと多くの方が予想しています。これが、今が勝負時であるという理由の1つです。つまり、下がる前に投資した方がいいということです。今年はまだ高い利回りの状態だとしても、来年や再来年になってくると、さらに下がっていく可能性があります。
米ドル債券は2024年後半が勝負の分かれ目の理由②為替
2つ目の理由は為替です。今年に入り、再びドル高円安トレンドに入ってきましたが、このチャートの流れからさらに米ドル高円安にいくことによって、ドルが割高になってしまいます。新たに円を売って米ドル債券を買うことが非常に割高になってしまう、そのような円安リスクがあると思います。
ですから、そのように円安になりすぎる前に、今のうち、2024年後半ぐらいまでの間に米ドル債券に投資しておくというのが2つ目の理由です。このように利回りが下がりすぎる前、為替がドル高円安にいきすぎる前に、有利な条件で米ドル債券に投資できるうちに投資してしまった方がよいと思います。2024年後半ぐらいまでが勝負どころではないかと考えているわけです。
以上が主な2つの理由です。ここからは、理由の1つ目の利回り低下リスクと、理由の2つ目のドル高円安リスクについて、もう少し詳しく直近の状況や予想をお伝えしていきます。
利回り低下リスク
アメリカ政策金利の見通し(2024年7月2日時点)
こちらは、アメリカ政策金利の見通しです。米10年国債利回りに最も影響を与える金利の数字としてあるのが、このアメリカの政策金利です。これはアメリカの中央銀行、国が決めた金利なので、これが実際に上下することによって、先ほどの米10年国債利回りも影響を受けます。そのような非常に大事な金利の数字ですので、今後の見通しをお伝えできればと思います。
こちらは2024年7月2日の最新の数値です。「MEETING DATE」という一番左側の列が、アメリカの中央銀行の会議日程です。この会議のタイミングで金利を何%にするかを合議制で決めています。アメリカでは、今年の9月のミーティングで何%の確率で金利が何%になるという予想が毎日アップデートされています。こちらの表はそれを表しています。
今は5.25%ですが、7月31日の中央銀行の会議では金利は変わりません。利下げが行われるのは、おそらく今年の9月ですから、2ヶ月後の中央銀行会議で6割方、金利は一度は0.25%下げられて5%になるというのが今の概ねの予想です。
では、その通りになるのでしょうか。そうならない確率もまだ残されています。34%くらいの確率で、今の金利が維持される可能性もあるということなので、確実視されているわけではありません。しかし、おそらく金利は一度下がる可能性が高いと思われているのが今の状況です。
11月は据え置きで5%のまま、その後、もう一度下がるのは今年の12月で4.75%に、その後は2回の中央銀行の会議ごとに一度下がるイメージです。ですから、1年後の2025年の7月30日の会議では、今の5.25%からちょうど1%下がり、4.25%になっている可能性が高いと思われています。これが金利市場の予想です。
仮にこのように政策金利が動いたとすると、先ほどお話ししたような米10年国債利回りの金利も下がっていく可能性が高いので、皆さんが投資される債券の利回りも当然下がる可能性が高いと思います。
【最新・予想】債券種類・格付けごとの利回り
ここからは、実際の債券の具体的な債券の種類や格付けごとの最新の利回り、今後の予想の利回りをお伝えします。予想の利回りに関しては、もちろんどうなるかわかりません。先ほどお伝えしたような市場の予想通り、アメリカの政策金利が下がったとすると、債券に関してはこれぐらいの利回りになるのではないかという、私の完全に個人的な予想ですので、ご留意いただければと思います。
米国債
1つ目は米国債です。債券格付けはAA+、期間は10年なので10年国債利回りそのものです。2024年7月上旬の最新利回りは4.4%になっていますが、半年後の2024年12月末は、おそらく政策金利が2回引き下げられている可能性が高いと思うので、10年国債利回りも0.5%ぐらい金利が下がっている可能性は高いと思います。そうすると、3.9%ほどになっている可能性が高いので、4%ギリギリ切れる水準になる可能性が高いと予想しています。
さらに半年後の2025年の6月末は、1年先なので少しわからないところもありますが、政策金利が1%ほど下がると、その通り下がらなかったとしても、やはり-0.9%くらいは下がっている可能性があると思うので、10年国債利回りは3.5%になる可能性はそれなりにあると思います。
普通社債
次は普通社債です。債券格付けはA−、これは日本のメガバンクの格付けのイメージです。期間は10年、最新利回りは4.7%の水準、2024年12月末の予想は4.2%、さらに1年後は-0.9%下がって3.8%というのが利回りの予想になっています。
劣後債
最後は劣後債です。債券格付けはBBB、期間は10年、今の利回りは5.1%、年末は4.6%で、1年後は-0.9%下がって4.2%になっているイメージです。
ですから、仮に2024年の後半までに米国債や普通社債や劣後債を織り混ぜて債券ポートフォリオを組んだとすると、おそらく4%後半~5%くらいの利回りの債券ポートフォリオが作れるでしょう。しかし、半年後になると債券の平均利回りが0.5%下がり、1年後になると概ね平均利回りで1%下がるイメージになると思います。
今であれば5%、半年経つと4.5%、1年後は4%です。債券の利回りの1%は差が大きいので、やはり2024年後半までの間に、利回りが高いうちにポートフォリオを作って運用しておくのが非常によいということがわかると思います。
ドル高円安リスク
政府・日銀が米ドル高・円安を抑制
こちらは、2024年後半が勝負時であると考える、2つ目の理由のドル高円安のリスクをわかりやすく表しています。
2024年以降、米ドル高円安に進んでいますが、それを政府・日銀が抑制している事実があります。こちらのチャートは日経新聞のものですが、いつもとは逆で、上にいくほど円高で下が円安になっています。今年は140円から始まっていますが、基本的にドル高円安に進んでいます。
しかし、円安にいきすぎると輸入物価が上がって日本はインフレになります。今でもインフレですが、いきすぎると国民は生活がしづらくなり困るので、何とか円安を抑えようと、日銀はマイナス金利を3月に解除したり、円安にいきすぎたときは、政府・日銀が円買い介入して153円に一気に戻すようなことをしたり、あの手この手でドル高円安を抑えようとしています。
このように政府・日銀がドル高円安を抑えてくれているので、今の160円や161円という為替水準で収まってくれているといえると思います。もし政府・日銀が何もしていなかったら、おそらく170円や180円までドル高円安が進んでいた可能性が高いでしょう。
本来の実力は、それぐらいのドル円の水準の可能性が高いと思いますが、政府・日銀がそのように抑えてくれているので、それならば、抑えてくれているうちに米ドル債券に投資しておくのがよいのではないでしょうか。
では、ずっと抑えていられると思いますか?そうではありません。為替介入は、急激なドル高円安を抑えるためにやるのであれば正当な理由になりますが、少しずつ進んでいるドル高円安は、為替の実力と考えるので、そのような状況では為替介入、円買い介入はできない可能性が高いと思います。
ですから、急激なドル高円安は介入で抑えられたとしても、少しずつ進むドル高円安に関しては無策な可能性が高いです。そのように少しずつドル高円安に進んでいく可能性は今後も高いと思います。そうであれば、政府・日銀がドル高円安を抑えてくれているうち、ドルが割安に保持されているうちに、米ドル債券に投資してしまう方がよいと考えているのです。以上が、2024年後半のうちに米ドル建て債券に投資した方がよいと考えている2つ目の理由です。
まとめ
今回のテーマである「米ドル債券は2024年後半が天王山だと思う2つの理由」をまとめました。ポイントは4つです。
ポイント1)今後は米ドル債券の利回りが低下する可能性が高い
今年の9月にアメリカの政策金利が利下げに転じる可能性が高いと考えられており、その後も2回に1回の中央会議で金利が下がっていくという見通しが高いです。その通りにアメリカの金融政策が動いたときは、皆さんが投資されているような米ドル建ての債券の利回りも下がっていく可能性が高いと思います。ですから、そのようなトレンドになる前に、2024年後半のうちに米ドル債券に投資するのがよろしいのではないでしょうか。
ポイント2)政府・日銀が米ドルの高騰を抑制してくれている
今年に入ってから特に米ドル高円安が進行していますが、それでも今の為替の水準は政府・日銀が、これでもドル安円高に抑えてくれています。米ドルが高騰するのを抑えてくれているわけです。せっかく政府・日銀がこのように米ドルを抑えてくれているので、160円くらいに抑えられているうちに投資した方がよいと考えています。
政府・日銀が抑えていなかったら、もっと円安は進んでいるでしょう。2024年後半はまだ抑えられている可能性が高いので、投資するのであれば今が勝負時ではないかと考えているわけです。
ポイント3)円高リスクを高利回りのクッションで押さえ込む
とはいえ、当然円高に行く可能性もあります。アメリカの経済が急に不景気になったり、景気が後退したり、トランプになって政策が急に変わったり、いろいろな理由で円高にいくリスクは当然あります。リスクはありますが、今は金利が高いので、利回りが高い債券に投資することによって円高リスクを緩和するという、そのような高利回りによるクッション効果で、円高リスクを抑え込むという発想で投資していくのが基本的にはよろしいと思います。
為替はどうなるか誰にもわかりません。円安にいく可能性の方が高いと、私は個人的には考えています。円高にいくことも想定し、「債券の利回りがこれぐらいなので、円高リスクをこれぐらい中和できる」と考えながら投資するのが大事かと思います。
ポイント4)残存期間が長い債券で高利回りを長期間享受する
投資すると決めた場合に、どのような債券に投資した方がよいかという私の考えを最後にお伝えします。このように利回りが高い状況なので、短い期間の債券に投資するのはもったいないと思います。2年や3年はもちろんのこと、5年でももったいないですし、今は10年でも少しもったいないと思うので、やはりもっと残存期間が長い債券に投資した方がいいです。
もちろんポートフォリオを作るときはバランスよく持ちますが、15年、20年、25年、30年などの長い債券の割合を多めにした方がいいでしょう。そのような残存期間が長い債券で、高利回りをできるだけ長い間享受するのが基本的にはよろしいと思います。
本日は「米ドル債券は2024年後半が天王山だと思う2つの理由」という内容でお届けさせていただきました。
今回の内容については「世古口俊介の資産運用アカデミー」でもご視聴いただけます。
株式会社ウェルス・パートナー
代表取締役 世古口 俊介
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。
2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者1万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
メディア掲載情報:「m3.com」「ZUU online」「MONEY zine」「マネー現代」でコラムを連載中