2019
10/10

はじめに

今まで、金融庁「老後2000万円不足」問題について、いくつか記事を書いてきており、前回は、老後資金の貯蓄目標金額の計算方法について解説しました。

金融庁「老後2000万円不足」問題!③年金2,000万問題 自分は老後資金としていくら貯蓄しないといけないのか?計算方法について解説

こういった計算をしてみると、貯蓄や資産運用だけで老後生活資金を賄うのは、大変だと感じられる方もいらっしゃるかもしれません。

そこで、今回は貯蓄や資産運用以外の方法で、老後生活資金を増やす方法について書いてみたいと思います。具体的には、老齢基礎年金や老齢厚生年金の繰り下げ受給です。

老齢基礎年金の繰り下げ受給の仕組み

老齢基礎年金は、原則として65歳から受け取るのが原則ですが、この受け取り開始年齢を70歳まで繰り下げることができます。

そして、繰り下げ受給を請求すれば、65歳から受け取る年金額と比べ、増額されます。

増額される額は、65歳になった月から繰下げ受給を請求した月の前月までの月数に0.7%を掛けて計算します。

例えば、2019年度の老齢基礎年金は40年間加入の満額で780,100円ですが、66歳0か月で繰下げ請求をした場合は、65歳0か月から12か月あるので、12×0.7=8.4%が増額となります。よって、受け取る年金額は780,100×1.084=845,628円となります。

この繰下げ請求を最大限利用すれば、最大60か月分の繰下げる形になるため、増額率は60×0.7=42%になります。老齢基礎年金の満額もらえる方が、70歳0か月まで繰下げすれば、780,100×1.42=1,107,742円が受け取る年金額となります。

注意点としては、一度繰り下げ請求をすると、生涯変更ができなくなります。ですので、繰り下げするかどうか、またその時期については慎重に検討することが必要です。

老齢厚生年金の繰り下げ受給の仕組み

老齢厚生年金も、原則として65歳から受け取るのが原則ですが、老齢基礎年金と同様に繰り下げ受給することが可能です。そして、繰り下げたときの増額の計算方法も老齢基礎年金と同じです。

老齢厚生年金の繰下げ受給は、老齢基礎年金と別々に行うことが可能です。例えば、老齢基礎年金は原則通り、65歳からの受け取りにして、老齢厚生年金だけを70歳から受け取るといったことも可能です。

注意点は、まず、老齢基礎年金と同様に、一度請求したら障害変更ができないことです。

また、老齢厚生年金独自の点としては、繰り下げ受給を請求すると、加給年金、振替加算、経過的加算も同時に繰下げになりますが、加給年金、振替加算の増額はない点です。

さらに、厚生年金基金に加入している方は、老齢厚生年金とセットで繰り下げになる点も注意が必要です。

繰り下げ受給を選択するために65歳以降の労働も検討する

老齢基礎年金や老齢厚生年金を繰り下げ受給する場合は、65歳から年金受け取り開始時期までの間に、年金を受給できない分を他の資金から工面する必要があります。

もちろん、貯蓄から工面する方法もありますが、もともと老後生活資金に不安があって繰り下げを請求するケースが多いと思われ、あまり貯蓄からは取り崩したくはありませんよね。

とすると、それまでの期間、働いて不足金額分を補う視点が大事になります。そのためには、老後になっても働けるよう健康を維持することが必要ですし、具体的にその期間にどのように働くのかを、現役時代から考えておくことも重要になります。

この点、厚生労働省が、従業員31人以上の企業156,989社の状況をまとめた平成30年「高年齢者の雇用状況」集計結果によると、ほとんどの企業では、65歳までの高年齢者雇用する体制が整っています。

一方で、66歳以上働ける制度のある企業は27.6%、70歳以上働ける制度のある企業は25.8%、定年制廃止企業は2.6%となっており、66歳以上に勤務できる制度はまだ十分に整備されていません。

ですので、65歳以降の仕事は、本来のキャリアとは違った働き方になる可能性があることは、今の時点から意識しておく必要があるでしょう。

自分がどんなことが得意なのか、好きなのか、どういうことが社会からも必要とされているか、ご自身の棚卸も定期的に行い、現役時代からボランティアや副業を行うことについて検討することも一考です。

現役時代の仕事とシニアの仕事との違いは生活資金を全額賄う必要があるかないかという点です。シニア時代は年金資金の補完程度のお給料で足りるので、ご自身の趣味などライフワーク的な観点で選んでいきやすいです。

こういったことも合わせて考えると、社内だけでなくなく、社外の人も意識的にネットワークを作ることも、現役時代から行っていくとよいでしょう。

まとめ

以上のように、老後生活資金を確保する上で、年金の繰り下げ受給をすることも有力な1つの手段です。

65歳から70歳まで柔軟に受け取り開始時期を決めることができるので、ご自身の老後生活資金に応じて、柔軟に請求開始時期を選ぶことができます。

その場合、自分が何歳まで働くのかを決めることもまた重要になってきます。そして、65歳時点でも働き続けることのできる自分自身の健康も非常に重要であることもわかるでしょう。

老後生活資金を確保するために、資金面でのプランが必要なのは明らかですが、それと合わせてキャリアのプランについても考える必要性があることがわかります。

ご自身のキャリアという視点も意識してみることで、貯蓄、資産運用、年金の繰り下げ受給についてもどうするか、総合的に検討してみて下さいね。

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本記事の著者

世古口俊介
世古口俊介 代表取締役
プロフィール
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者20万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
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特に上場会社創業者の複雑な相続対策や優良未上場企業の組織再編に注力。
同社の代表として書籍の出版や日本経済新聞、週刊東洋経済、ZUUonlineなど各種メディアへの寄稿、投資教育普及のために子供向けの投資ワークショップなどを開催。

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