はじめに
相続税申告をしっかり行っても申告漏れによりペナルティを受ける可能性はゼロではありません。
この記事では相続税申告で実際にどのくらい申告漏れが起きているのか、そして申告漏れしやすい財産は何か説明します。
相続時に相続税申告が必要になる可能性が高い富裕層だからこそ知っておきたい知識です。
相続税の申告漏れはどのくらい発生しているのか
相続税が課税されるのは年間10~11万件になっています。
そのうちの1割(約1万件)が税務署の実地調査の対象になっており、相続税申告の漏れや違いなどを指摘されているという結果です。
相続税の課税ケースが10万件あったとすれば、1万件は何らかの違いや申告漏れを指摘されていることになります。
相続税の申告漏れのニュースを見て遠い世界の出来事のように思うかもしれません。
実際は相続税の申告漏れは決して少なくない件数起きており、相続税の手続きに関与する限りは無関係ではないということです。
相続税で申告漏れしやすい4つの財産
相続税で特に申告漏れしやすい財産は4つあります。
特に申告漏れしやすい財産と「なぜ申告漏れしやすいのか」という理由は次の通りです。
書画や骨とう品、美術品など
絵画や書、骨とう品などの高額な美術品は相続税申告でよく漏れてしまうといわれています。
書画や骨とう品には不動産のような登記制度もなく、通帳を記帳してもわかりません。
また、専門的な知識がなければ価値の把握が難しいことも特徴です。
相続人にとっては「身近にあった価値のなさそうな置物」でも、専門知識を持つ人が見れば希少品であり、驚くような価値を持っていることがあります。
価値判断の難しさや調査の難しさから相続税申告の際に漏れやすいといわれているのです。
現金や預貯金
国税庁の「相続税の調査等の状況」によると、最も申告漏れの額が多いのは現金や預貯金となっています。
預貯金は通帳やキャッシュカードなどがあるため見つかりやすいと思うかもしれません。
しかし中には通帳などを発行していないケースやネットバンクで取引をしていたようなケースもあります。
手がかりが見つからないため、相続人が遺産確認の際に漏らしてしまうのです。
現金については、出金の記録があってもその現金がどこに保管されているかわかりません。
誰かに商品代として支払ったのかもしれませんし、遊興費に充てたのかもしれません。
中には被相続人の家や私室の分かりにくいところに隠されていたり、貸金庫に保管されていたりするケースもあります。
相続人が現金の足取りを追えない、あるいは保管に気づかず申告漏れが発生するケースが少なくないのです。
有価証券
被相続人が株取引などをしていた場合、相続人が見逃して相続税申告をすることがあります。
取引履歴などからある程度追うこともできますが、あまり頻繁に取引していない証券会社などがあった場合、その証券会社を通して行っていた有価証券取引などを見逃すことがあるのです。
結果、相続税申告のときにも漏れてしまいます。
土地
相続税申告の中で土地などの不動産を見落とすことはない。
登記簿謄本などで確認できるのではないか。
このように思うかもしれません。
不動産は登記などがありますから、確かに調査しやすい遺産かもしれません。
しかし、遺産の見落としだけが相続税の申告漏れではありません。
土地の相続税を計算する際は土地を評価しなければいけません。
土地はひとつひとつ異なりますので、評価が一律に決まっていません。
たとえば似たような土地でも立地によって評価が変わってきますし、土地のかたちによっても評価が変わります。
土地の評価は難しいのです。
そのため、相続税の際に土地評価を過小に見積もってしまい、相続税申告が過少になる、つまり漏れてしまうという事態が起きがちになります。
土地そのものを見落とすのではなく、評価や計算において過少というミスを犯してしまうわけです。
まとめ
相続税申告を期限内に行っても、遺産の見逃しなどにより申告漏れを起こすことがあります。
相続税の申告漏れを防ぐためには遺産調査に十分な時間を取れるように早めに準備に取りかかることと、相続税の専門家に相談することがポイントです。
相続税の申告で困らないように、FPなどのお金の専門家も活用し、相続対策や財産整理を検討してはいかがでしょう。