目次
はじめに
皆さん、こんにちは。株式会社・ウェルス・パートナー代表の世古口です。
今回は、「円高再来!?トランプ米大統領当選『もしトラ』への正しい備え」というテーマをお届けいたします。
ご存じのとおり、2024年11月にアメリカ大統領選挙があります。過去に大統領を務めたトランプ氏が出馬して、バイデン氏と大統領の座を争うことになるのですが、どちらが当選するかという予想ではかなり拮抗していて、トランプ氏が当選する確率が高いというデータも出ています。つまり、正直どちらが大統領になるか分からない状況となっています。
バイデン氏が当選すれば政策はそのままで、今の状況のまま資産運用の考えを保って良いと思うのですが、トランプ氏が大統領になった場合、独自の保護主義的な貿易の考え方や、自国通貨安にもっていく姿勢、金融政策に与える影響など、いろいろな影響があると思います。
そこで、トランプ氏が大統領に再当選した場合の「もしトラ」というリスクに正しく備えていく必要があると思いますので、今回はこの内容をお伝えしていきたいと思います。
トランプ大統領在任期間の重要指標推移
まず、トランプ氏が大統領在任期間中の重要指標推移をまとめてみましたので、ご覧いただければと思います。
在任期間である2017年1月から2021年1月までの、特に重要な指標の変化を記載しています。4つありまして、米ドル円、アメリカ10年国債利回り、S&P500、ナスダック総合指数の推移です。
まず、米ドル円(①)からみていきたいのですが、2017年は114.6円、これが在任期間スタート時の値です。そして在任期間を終えた2021年1月にどうなったかというと、103.5円という為替の水準です。変化率で言うとマイナス9.6%なので、在任期間の4年間でマイナス9.6%のドル安円高になったということです。
大体、平均のドル円のレート水準で言うと105円から115円、この間をずっと行ったり来たりしていたというのが、トランプ大統領在任期間のドル円推移になっています。
したがってドル円に関しては、やはり自国の貿易を有利に働かせるために各国に圧力をかけたり、自国通貨を安くして行くという方向のイメージどおりに自国通貨安、つまりドル安・円高の方向に推移しているのが見て取れます。
一方、これは2017年1月20日からの数字になっているのですが、トランプ氏が大統領になると決まったのが2016年11月9日ということも少し考慮しなければいけません。選挙で当選して、「トランプ氏が大統領になる」というのが分かったタイミングの為替水準は105.6円といわれています。そう考えると、2021年1月までの為替で見た場合、正直スタート時とほとんど変わっていない、ややドル安円高になっていますが、あまり変わってないといえます。
それから、2021年はコロナ禍のタイミングということもあり、特にアメリカが金利を安く抑える政策をとっていて、為替に関しては特にドル安・円高になったということもできるので、在任期間だけでなく「トランプ氏が大統領になる」と決まったタイミングからとか、コロナ禍という特殊事情を考慮すると、とりわけドル安・円高の政策を強く推し進めているとはいえないと思います。
続いて金利です。アメリカ10年国債の利回り(②)ですが、2017年1月のスタート時が2.46%で2021年1月は1%なのでマイナス1.39%です。これも一概にはいえません。2021年1月は、お伝えしたようにコロナで特に金利を下げたタイミングなので、一時的にかなり低くなっているのは仕方ないと思います。
そして、政策金利の上げ下げの回数で言うと、利上げを行ったのは7回で、利下げを行ったのは5回ということで、回数でいうと利上げの方が多くなっています。また、下げの方はコロナの対応で一気に金利を5回分下げたので、仕方がないところもあります。
したがって、トランプ氏の金融政策のイメージでいうと、ガンガン利下げをさせて株価を高くする、経済をよくするというイメージが強いのですが、意外と利上げの方が多いという
のが金利の推移でした。
続いてS&P500(③)、大型株の推移についてです。2017年1月は2271だったのに対して2021年1月は3851なので、変化率で言うとプラス69.5%です。トランプ大統領在任中の4年間は、かなり株価上昇への影響が大きかったといえます。やはり株価にプラスの影響を与えるような政策や、いわゆるトランプ減税は、企業の業績や株価にプラスの影響があったということがわかります。
最後はナスダック総合指数(④)、新興市場の株価ですが、変化率で言うとプラス142%、つまり新興市場の株価は2.4倍となっており、大型株S&P500の倍くらい株価が上がっています。ナスダック総合指数は、おもにIT大手が牽引しているのですが、やはりトランプ氏の影響でいうとアメリカ株には当然プラスであり、とりわけ新興市場やIT企業などにとってもプラスの影響があったと思います。
以上、こういったところがトランプ大統領在任期間中の重要指標推移です。私自身、トランプ大統領に持っているイメージと、在任期間中の指標の推移は少し違うと考えています。思ったよりも、「自国通貨安に持って行く」というほど数字は動いていないとか、利下げのイメージが強いのに普通に利上げも行っているところなど、ここは少しイメージと違うところです。
ただし、株価への影響はイメージ通りだと思います。減税政策を行ったり、経済のテコ入れをするような政策を取り入れていますので、株価には純粋にプラスに働く政策を行っているということが分かります。
まとめ
それでは本日のテーマ、「円高再来!?トランプ米大統領当選『もしトラ』への正しい備え」のまとめを行っていきたいと思います。ポイントは4つあります。
過度に米ドル安・円高を恐れる必要はない
1つ目は、過度に米ドル安・円高を恐れる必要がないということです。トランプ大統領は、ドル安円高にもっていきたいというイメージが強く、確かに在任期間中を見ると9.6%ドル安・円高になっています。ただし、トランプ氏が大統領になると決まったタイミング(2016年11月)から在任期間終了までを考えると、ほとんど為替の数字は変わっていないので、おそらくイメージよりは自国通貨安に持って行くことはなく、そこまで円高のリスクを懸念する必要はないと思います。
利下げなど金融政策への影響はない可能性が高い
2つ目です。トランプ氏は、金利を下げて経済を良くしようという発想が強いと思うのですが、個人的には利下げなど金融政策への影響はない可能性が高いと考えています。
FRBというアメリカの中央銀行、つまり金利を決める人たちは、政治的な中立性を保つことを強く意識しています。したがって、トランプ氏が「金利を下げろ」といったから下げたとか、金利を下げる時期が早まったりとか、トランプ氏に屈したという風には、絶対に思われたくないというのが本心だと思います。むしろ、トランプ氏が「利下げしろ」というと、反発して利上げの方に動くのではないかと、そちらの方が心配です。特にFRBのパウエル議長に関しては、そのような傾向が強いと思いますので、パウエル議長の任期が満了となる2026年5月くらいまでは、このような姿勢は基本的に変わらないと思います。
したがって、金融政策への影響はほぼ無いと考えており、金利の上げ下げのタイミングに関しては、トランプ氏が大統領になったとしても、大きく影響を与えない可能性が高いと考えています。
減税などの経済政策で株価にはプラスの可能性
3つ目です。減税の政策に関しては、以前トランプ氏が大統領になった時のように、大幅に打ち出して行く可能性が高いと思います。そういった経済政策によって、株価は純粋にプラスと考えられます。過去4年間の在任期間の株価推移を見ればわかるように、間違いなく株価にはプラスだとと思います。
トランプ氏は、株などを持っている富裕層の方々にマイナスとなるような政策は打ち出してこないと思いますので、これは純粋に良い面だと思います。したがって、トランプ氏が大統領になると予想するのであれば、株式の割合などを高めにしておくということが対策として考えられます。
本当のリスクは貿易摩擦による中国経済の疲弊
最後の4つ目です。これは「もしトラ」のリスクといえるかもしれないですが、やはりトランプ氏は、保護貿易的な考えを持っていますので、中国に対する貿易の摩擦というのは充分考えられると思います。
これは、以前大統領だった時も表面化していたと思うのですが、当時よりも中国経済は元気がありませんので、結構なリスクだと考えています。
「もしトラ」の本当のリスクというのは、このように貿易摩擦により中国経済が疲弊する。それによって中国の経済が景気後退に陥ったり、経済がハードランディングしたり、後は中国発の金融ショックなどが起こることによって世界経済に影響を与えるなど、そういうところが最悪のシナリオだと思います。
やはり、中国がこけると引っ張られてしまう新興国などが多いので、このようなことが起こるとトランプ氏が大統領になるマイナス面として大きいと思います。
このように、トランプ大統領の再当選が中国へマイナスの影響を与える可能性があるので、心配であれば、中国経済に依存している国、例えばオーストラリアなどの資産とか、株の割合を減らしておくといった対策が考えられると思います。
本日は、「円高再来!?トランプ米大統領当選『もしトラ』への正しい備え」というテーマをお届けいたしました。
株式会社ウェルス・パートナー
代表取締役 世古口 俊介
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。
2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者1万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
メディア掲載情報:「m3.com」「ZUU online」「MONEY zine」「マネー現代」でコラムを連載中