近年日本で増加している鉄道マニア「テツ」の方々をよく散見しますが、実は鉄道発祥の地ヨーロッパの上流社会には数多くの「隠れテツ」がいて、オリエントエクスプレスに代表される豪華列車に乗って贅を極めたトレインクルーズを楽しんでいたのです。歴史を紡ぎつつ常に進化し続ける豪華列車の旅は、今や誰でも楽しめる懐古的なスノビズムと郷愁を運んでくれます。世界でも有名な一流を極めた豪華列車を10選厳選してご紹介してまいります。
目次
1.ベルモンド・ロイヤル・スコッツマン
エディンバラのウェーバリー駅を出発し、数日間かけてスコットランドの街や村、お城や峡谷を巡ります。ハイランドでゴルフやクレー射撃を楽しんだり、ハイランドサファリ城跡、ウィスキー蒸留所巡りなど様々な娯楽が用意されています。
寄木細工の装飾が高級感を与える客室には、全室に24時間温水施設のあるバスルーム付きで上質なアメニティが備えられています。マホガニー製のダイニングルームではハイランド・ブレックファーストに始まり、夜は地元の上質なアンガスビーフを使った伝統的なスコットランド料理が楽しめます。
2.ロボス・レイル
1989年に開業したロボス・レイルは、車両・駅・機関区全てが個人の所有という私有鉄道です。植民地時代の特権階級の鉄道旅行を彷彿とさせるレトロロマンが詰まっており、特に植民地時代に思い入れが強い英国人にとって、「一生に一度は体験したい」と憧れる鉄道旅行なのです。
アフリカ最南端のケープタウンを出発し、ムプマランガの野生動物保護区、ビクトリアの滝、ナミビアの砂漠などアフリカの壮大な景勝地を旅します。15両編成でダイニングカー2両、ラウンジカー2両を擁し、最後部のラウンジカーはオープンパノラマ展望車になっており、アフリカの大自然をオープンエアで堪能できます。
3.マハラジャ・エクスプレス
鉄道大国インドで2010年に運行を開始したマハラジャ・エクスプレスは、展望台1車両、レストラン2車両、バー1車両を含む24車両で編成され、プレジデンシャル・スイートなど4タイプの豪華客室を用意しています。
各部屋にはパノラマ式ウィンドやインドで初めてのエアコンが設置され、液晶テレビ、電話、インターネット、シャワーブースなど、最先端の設備を備えています。
4.エル・トランスカンタブリコ
1983年スペイン北部で運行が始まった豪華列車で、レオンを出発し巡礼地サンティアゴ・デ・コンポステーラを結ぶ、ビスケー湾の海と山が織りなす海岸線の絶景を楽しめるルートを走ります。
ノスタルジックなインテリアの車内には音楽が流れ、「パブカー」と呼ばれる車両ではバルとダンスフロアとして毎晩ダンスが楽しめます。車内でのダイニングは朝食のみで、ランチとディナーは車外のレストランで地元の郷土料理をいただきます。
5.ベニス・シンプロン・オリエント・エクスプレス
1883年に運行が始まって以来、ヨーロッパ上流階級の鉄道旅行の代名詞となっているオリエント・エクスプレスは、最上級の素材が使われた芸術的なインテリアを配し、当時と変わらぬ優美な姿で今なおヨーロッパ各地を周遊し、鉄道マニアの憧れであり続けています。
工夫が凝らされた食事は、朝・昼・夕の3食とも3両の異なるレストランで用意され、シェフのクリスチャン・ボディゲル率いる一流チームによる高級料理が振る舞われます。3種のレストランは、ルネ・ラリックのゴージャスなガラスパネルがまばゆい「コート・ダジュール」、見事な寄木細工が必見の「エトワール・ドゥ・ノール」、黒い漆塗りの装飾が印象的な「ロ・オリエンタル」で、その他ガレによるアール・ヌーボー調のバー車両もあり、食前食後酒など優雅なくつろぎのひと時を堪能できます。
6.アル・アンダルス
伝説の豪華列車「オリエント・エクスプレス」にインスピレーションを受け、1983年に運行を開始しています。英王族のフランスへのバカンス移動用に1929年に製造された5両の寝台車を擁し、車内はベル・エポック調のインテリアが施され、エアコン完備の15両編成となっています。
旅程では観光やアクティビティに工夫を凝らし、スペイン南部のグラナダ、セビリアなどに停車して、セビリア大聖堂やシャリー酒の醸造場見学を楽しみつつ、夜は車内で優雅なディナーを満喫します。
7.ブルー・トレイン
1946年に運行が始まり、ギネスブックに「世界一の豪華列車」として登録されているブルートレインは、ヨーロッパの王室が好んだロイヤルブルーにちなんで名付けられています。コースは南アフリカのプレトリアを出発しケープタウンまでの約1,600kmを、27時間かけて走る1泊2日のプランを提供しています。
ダイヤモンドラッシュに湧いた街キンバリーを観光したり、最後尾の展望車からはアフリカの大自然や地平線に沈む夕日をパノラマで楽しめます。ディナーでは南アフリカ産の最高級ワインと共に、洗練されたフランス料理に舌鼓し、極上の冒険旅行を体験できることでしょう。
8.イースタン&オリエンタル・エクスプレス
アジアのシンガポール、タイ、マレーシア、ラオスといったオリエンタル&エキゾチックな都市を巡る豪華列車で、アジアの秘境や高原の茶畑キャメロンハイランド、クウェール鉄橋などを訪れます。
寄木細工とチーク材など木製の優美なパネルで装飾されたキャビンは3タイプから選べ、全室冷房・バストイレ完備で快適な旅を約束します。最後尾にあるコロニアル様式の展望車は、日中は美しい風景を、夜はカクテルタイムやエンターテインメントを演出します。有名シェフたちによるアジア料理と西洋料理は、現地食材を活かした季節料理で、ピアノ演奏を聴きながらのディナータイムは優美な余韻を記憶に残すことでしょう。
9.ななつ星in九州
2013年に運行が始まり、今や日本で最高峰の豪華クルーズトレインです。九州の博多を出発し由布院、鹿児島、阿蘇など癒しの温泉やパワースポットといった九州の自然豊かな土地を走り抜けます。車両の1号車と7号車は全面車窓となっており、窓からゆったりと流れる壮大な自然を楽しめます。
14の客室は全室スイートで、「和と洋/新と旧」をテーマに、木下正人氏による伝統工芸の組子を使い、職人の粋が凝縮された室内と車内は圧巻です。ラウンジカー「ブルームーン」では昼は休憩サロンに、夜はバーに変わり、社交場として開放されています。ダイニングカー「木星」では、和モダンなインテリアの中、季節の旬の食材を使った極上料理を提供しています。
10.デカン・オデッセイ
2003年に運行が始まって以来、ヨーロッパの観光客に特に人気の豪華列車ですぐに満席になると評判です。インド最大の都市ムンバイを出発し、8日間に渡る旅が6つのコースから選べ、インドの世界遺産などを巡ります。
マハラジャの宮殿のようなゴージャスなインテリアの車内には、2つのレストラン、スパ、ラウンジ、ダンスフロアなどが備わり、豪華なダイニングで5つ星ホテル並みのサービスを受けながら、伝統的なインド料理や西洋料理を味わうことができます。
11.まとめ
列車の旅は、ゆったりと流れる時間の中で、車窓から移りゆく壮大な自然の景色を眺めるのが醍醐味の一つです。また、列車という限られた空間の中での出会いも、大切な旅のエッセンスになります。世界各国から集まったさまざまな人生と経歴を積み重ねた富裕層や旅人たちと、気さくに打ち解けて交流する「一期一会の妙」は、豪華列車ならではの貴重な体験となることでしょう。