1.はじめに
証券会社や銀行など投資信託の販売会社は、顧客に対して投資信託を勧誘・購入申し込みを受け付ける際に、コストについて顧客に説明し納得を得ることを義務付けています。
その際、販売員からの説明は信託報酬と購入手数料など交付目論見書に大きく記載されている項目に留まっているのが現状ではないでしょうか。
なぜなら投資信託はそのストラクチャーゆえにコスト構造が見えにくく、たとえ信託報酬以外のコストについて請求目論見書に記載されていたとしても大方の販売員が意味を知らず、ほとんどの販売員が請求目論見書を読み込むことすらしていないこと、そもそも運用会社により詳細が開示されていないコスト項目が多いためです。
本コンテンツでは、販売員すらあまり認識していない投資信託の見えにくいコストについて、ごく一例をご紹介します。
2.カストディー費用
海外の株式や債券、リートなどの有価証券に直接投資する投資信託は、信託財産で有価証券を購入したとしてもそれを日本国内に持ち込むわけではありません。
また、運用会社も受託銀行も自ら保管・管理をすることが難しいことから、その有価証券の投資した国の「カストディアン」と呼ばれる金融機関に、現地での保管・管理をするサービスを依頼します(実務上は、各国のカストディアンを束ねるグローバルカストディアンに、現地カストディアンの管理などを一任します)。
当然ながら、カストディアンに業務を委託する以上は手数料が発生し、その手数料は保管費用と取引費用(保管する銘柄の入れ替えにかかる費用)に大別されます。
この費用は投資対象国によってバラバラであり、投資対象国や現地カストディアン、さらに投資対象銘柄の売買の頻度によっては信託報酬よりも高い費用が発生することがあります。そして、これらの費用は全て信託報酬とは別に信託財産から払い出され、それは投資家が得るリターンに直結しているのです。
3.事務代行費用
一部の資産運用会社は、基準価額の算出や運用報告書の作成、当局への各種報告など投資信託の運営に関するバックオフィス業務の一部を、外部のサービスプロバイダーにアウトソースしています。このアウトソースに掛かる費用を、信託報酬とは別に信託財産から払い出している資産運用会社も存在するのです。
本来、バックオフィス業務をアウトソースせず資産運用会社内で完結しているのであれば、バックオフィス業務に関する人件費などのコストは信託報酬のうち委託者報酬の範囲内で賄われているはずです。これでは、投資家の視点からするとコストの二重取りと指摘されても仕方ないでしょう。
4.その他
上記2点は、信託法第28条に定める「信託事務の処理を第三者に委託することが妥当な場合は、それを認める」旨の規定を援用したものです。
ただ、この規定は誰が、どの範囲まで費用を負担するかについては特に定められていません。これに加えて投資信託財産からの費用払い出しは、限られた人数で膨大な量の投資信託を監査している監査法人をクリアすれば、資産運用会社の裁量により事実上無制限に可能であるというのが現状なのです。
一例を挙げると、裁判に要する弁護士費用、投資信託のプロモーション費用、投資信託の運営に何らかのトラブルがあった際の原状回復費用、外部コンサルティング会社の活用に要した費用、などです。
5.まとめ
投資家の利益と情報開示を最優先とするのであれば、請求目論見書などに投資信託財産から払い出す費用、つまり投資家が負担するコストの範囲を明記しておくべきです。
しかし、多くのファンドではどのような意味合いにも取れるような内容であったり、あたかも運用会社が自由に投資家へ費用負担させることができるよう内容であるのが現状です。投資信託はあくまで運用行為を委託する金融商品ですから、それ以外の業務に関する投資家のコスト負担範囲については更に厳格化することが投資家の保護に資するでしょう。
また、販売会社には自己の顧客のために運用会社に対してコストの詳細開示を働きかけ、その内容を確りと投資家に説明する姿勢が必要であることは言うまでもありません。
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