はじめに
個別株式投資の運用成績を左右するのは、銘柄選びです。銘柄選びの分類の1つに「成長株」「割安株」投資があります。
成長株投資とは、文字通り製品・サービスの需要の伸びが見込める(と思われる)企業に投資することです。
グロース株投資とも呼ばれ、例えば現在は市場のシェアは低いものの、他の企業が真似できない技術・イノベーションを有している企業、新たな生活スタイルやテクノロジーにより、伸びが見込める業界に属しているスタートアップ企業などがこれに当たります。
成長株投資とは
成長株投資の魅力は、大きく成長する企業に初期段階で投資できれば預貯金や固定金利の債券投資では得ることの出来ない大きなリターンを得ることが出来ます。
2020年の株式相場は、成長株が大きな飛躍を遂げた年でもありました。新型コロナウイルスの感染拡大で製造業やサービス業が軒並み業績が大きく悪化する中、世界の成長株の代表的格ともいえる米国のIT大手のグーグル(アルファベット)、アップル、アマゾン・ドットコム、フェイスブック、マイクロソフトの株価は大きく上昇しました。
さらに株式市場で注目を集めたのは、米電気自動車のテスラの躍進でした。
欧米や中国での環境規制や補助金政策や日本も含めた脱炭素の動きで電気自動車への注目度が飛躍的に高まり、株価は2020年1年間でおよそ8倍超へと大きく値上がりしました。
企業全体の株式価値を表す時価総額で比較するとテスラへの期待の大きさがよくわかります。時価総額は株価に企業が発行した株式数を掛け算して計算されます。日本の自動車のトップメーカーのトヨタ自動車の世界販売台数1000万台を超えており、時価総額は、現在約26兆円ほどです。
一方テスラの2020年の世界販売台数は、50万台弱とトヨタの販売台数のおよそ20分の1に過ぎません。しかし現在ではテスラの時価総額は日本円で約80兆円を超えており、トヨタの2倍を軽く上回ります。
このことからもよく分かるように成長株の株価には、実際の業績に対して「期待」と要素が大きく上乗せされます。
株式は足元の現在の状況よりも先行きへの期待や警戒を大きく反映して形成されます。大きく「成長する(と期待される)」株へうまく投資出来れば大きなリターンを得ることが出来るのです。
成長株投資のデメリットとは?
では、成長株投資のデメリットは何でしょうか?
成長株は、株式市場でも期待の大きい株も多く、株価の上昇が続いてることも多いため投資のタイミングとしては高値づかみになりやすいことが挙げられます。もちろん先行きの成長が実現すればさらなる値上がり益を得ることが出来ますが、思惑が外れてしまった場合は、値下がりによる損失は割安株投資よりも大きくなりがちです。
また投資家心理として値上がりによる利益は早く確定したい気持ちが先行します。そのためうまく成長株に投資できたものの、利益確定売りを早まってその後の大きな果実を逃してしまう可能性があります。
割安株投資とは
割安株投資とは、企業が持っている資産や業績から見て株価が割安だと思える企業に投資をする手法です。バリュー株投資とも呼ばれ、株価が安値で放置されているタイミングで買いを入れ、上昇したところで値上がり益を狙います。また、株式投資の魅力の一つである配当金狙いの投資は、安値で買うほど投資金額に対する受け取る配当金の利回り(配当利回り)は上昇しますので配当狙いの投資にも向いています。
投資判断に使われるメジャーな投資指標に株価純資産倍率(PBR)という指標があります。
企業が保有している借金を除いた純資産に対して株価が何倍まで買われているかを示します。
ここでは詳しくは触れませんが、基本的なこのPBRという倍率が1倍を下回っている状態は、企業の純資産額に対して株価が下回っている=解散価値を下回っている状態として、割安株の投資のひとつの目処として知られています。
もともと日本株は欧米株に比べて割安に放置されていることが多く、2020年3月に日経平均株価が新型コロナウイルスの感染拡大への警戒により、1万7000円を下回った状況ではもともと割安だった自動車や鉄鋼、金融、海運などの優良株が大きく値下がりし割安な状況となっていました。
例えば金融緩和による低金利により収益の悪化を嫌気して金融株も軒並み売られていましたが、そのほとんどは赤字ではなく、配当もきちんと出しています。メガバンク大手の一角である三菱UFJフィナンシャルグループの配当利回りは、直近でも5%を超えておりまだまだ割安な水準といえます。
割安株投資のデメリットとは?
このような良い株を安値で買いを狙う株投資の王道ともいえる割安株投資ですが、デメリットは何でしょうか。
一つは、割安株といってもさらなる業績の悪化や悪材料による値下がりのリスクも当然存在します。安いと思ってさらに株価が値下がりする場合もありますので、投資経験の少ないうちは赤字の銘柄や無配の銘柄への投資はあまりおすすめ出来ません。
また、現在の株式相場では割安株は成長株に比べて値動きも少ない傾向にありますので、割安なまま塩漬けになってしまうケースも有りますので、そのようなリスクを理解した上で銘柄を選ばれることをおすすめします。