富裕層の方々の中には、クラシックカーの名車コレクションを趣味としている方も多々おられます。しかし、日本は狭い道路事情や渋滞、厳しい道路規制などで自由に愛車を乗り回せる機会がなかなかないのが現状です。近年では、富裕層の方が愛車を自由に走らせるレースに参加するため世界へと繰り出しています。
クラシックカーの世界3大豪華レースの中で最も歴史が古く、最も華麗と言われるのがフランスのル・マン・クラシック、あの「ル・マン24時間耐久レース」のクラシックカーヴァージョンです。日本からも自分の愛車を搬送してレースに参加する愛好家の方も増えています。日本の富裕層を惹きつけるル・マン・クラシックの魅力とは!?その秘密をご紹介してまいります。
目次
歴史と伝統を次世代に伝えるレース
昼夜24時間走り続け、モータースポーツの中でも最も過酷なレースと言われる「ル・マン24時間耐久レース」、その歴史は古く1923年に遡ります。以来、数々の名車やドラマが誕生し、S.マックィーン主演の映画で世界中のファンを魅了しました。
日本では馴染みの薄かった同レースも、1991年に日本車で初めてマツダが総合優勝したことで一躍脚光を浴び、2018年にはトヨタが念願の優勝を果たし、その注目度は日本でも益々高まっています。
この過酷なレースに参加できるのは、世界各国の自動車メーカーやレーシングチームの中から、主催者である西部自動車クラブ(ACO)が厳選したチームのみで、厳しい予選選考もあり、一般のレース愛好者には到底手の届かない夢の世界となっています。
そんな一般のル・マンファンに門戸を開けたのが、2002年リシャール・ミルと手を組んだピーター・オートのパトリック・ピーター氏でした。以来、2年に一度、ル・マン24時間耐久レース終了直後の7月に、同レースと同じ公道の一部を使った13,626kmのフルサーキットにて、かつてル・マンに参戦したクラシックカーでレースを楽しめるようになったのです。
正統派を重んじる厳しいルール
誰でも参加できるとは言え、選考にはやはり厳しいルールがあります。最初の関門は、ル・マンのレースで使われた車と同じ車種・仕様であること、現代の部品や装飾に変えたものは許可されません。当時のオリジナル部品をそのまま使ってメンテした車体かどうか、最初に入念にチェックされます。検査にひっかかった車体は、即座に改修を余儀なくされ減点対象になります。
ラテンなフランスらしからぬ細かいチェックが入りますが、この正統を重んじる厳格さこそがル・マンファンの参戦意欲を刺激するのであり、伝統あるレースに挑む自尊心を掻き立ててくれるのです。
かつてのル・マン耐久レースのスタートは、コースの一方にレース車を並べて配置し、ドライバーが道路の向こう側からコースを渡って乗車する、いわゆる 「ル・マン式スタート」と呼ばれるスタート方式を採用していました。現在の24時間耐久レースでは安全性の理由からグリッド式スタンディングスタートが採用されていますが、ル・マン・クラシックでは、当時の「ル・マン式スタート」をそのまま採用しているため、ルマンファンをさらにノスタルジックなムードに誘ってくれるのです。
参戦車は1923年~1979年までのクラシックカーに限られ、時代ごとに6つのカテゴリーに分けられてレースが展開されます。それぞれの時代ならではの特徴のある車が登場し、レースを通して時代の流れを体感できるのもル・マン・クラシックの魅力と言えます。
1.1923-1939(第二次世界大戦前、戦中戦後中断)
2.1949-1956
3.1957-1961
4.1962-1965
5.1966-1971
6.1972-1979
参戦者へのVIP待遇
厳しい審査を通過してル・マン・クラシックに参戦したチームは、前夜祭としてお城でのガラディナーに招待され、往年の名レーサーらと談笑できる機会があります。
また、参戦者だけに入場を許可されたVIPルームが会場内に幾つかあり、昼食時も特設のVIPレストランで豪華なビュッフェスタイルのランチが振る舞われます。
こうしたVIP会場への入場チェックも厳しく、参戦者は最初に指紋登録し、レストラン入り口で指紋照合でのみゲートが開くなど、厳重な「選民体制」がとられています。
楽しいイベントが盛り沢山
【クラシックカークラブの集結】
ル・マン・クラシックでは、広い会場内にヨーロッパ中のヴィンテージなクラシックカー愛好クラブが一同に会します。2018年には60種類の車種に渡る200のクラブが参加し、約8,500台のクラシックカーが集まりました。
【展示やレトロブティック】
会場内では、ル・マンに纏わるクラシックカーや自動車部品、アート、雑貨などを展示販売するスタンドが軒を連ねます。
【芸術村とコンサート】
会場内にはクラシックカーの時代を想定して建設されたレトロな芸術村も出現し、夜にはコンサートが夜通し開かれ、酒と踊りでキャンプのようなお祭り気分を満喫できます。
【リトルビッグマン】
ル・マン・クラシックで見逃せないのが、2008年から始まった子供たちによるキッズレース「リトルビッグマン」です。セレブなお子様たちが参戦するこのキッズレースは、過去にル・マンレース参戦した車を忠実に再現したモデルカーでしか参戦できないという厳しいルールがあります。レースに挑む女の子も含めお子様たちが可愛いので必見です。
まとめ
ル・マン・クラシックの人気は年々増大し、2018年の入場者数は3日間で135,000人に達しました。富裕層にとって名車は身近なコレクションのひとつですが、車は走らせてなんぼ、一生に一度は夢の舞台で童心に返って愛車を思いっきり走らせてみませんか?映画の舞台になった伝説のル・マンサーキットで、主人公気分でル・マンの風を感じてみてはいかがでしょう。