資産管理会社とは?設立するメリットやデメリットを解説

はじめに

資産管理会社の基本的な役割から、設立することのメリットやデメリットを解説します。資産運用戦略を考える際、資産管理会社をどう活用すべきか知ることで、より効率的な資産の運用・管理が可能になります。

資産管理会社とは

資産管理会社とは、不動産や金融資産など保有資産の運用・管理を目的として設立する会社のことです。

資産管理会社は通常の会社と異なり、資産管理以外の業務を行いません。収益源は保有資産から得られる賃料収入や配当、利金などです。

資産管理会社は、個人の資産運用・管理を目的としていることから、「プライベートカンパニー」と呼ばれることもあります。

資産管理会社を利用する方とは?

資産管理会社を利用する方で多いのは、不動産オーナーや自社株式を保有するオーナー経営者など、いわゆる富裕層の方々です。
また、多額の資産を保有する会社売却オーナーや、資産承継を考えている方も資産管理会社を利用するケースが多く見られます。

資産管理会社を設立するメリット

資産管理会社を設立するメリットは、大きく分けて次の2つです。

・税制面でのメリット
・資産承継面でのメリット

 

続いてこれらの内容を詳しくみていきましょう。

税制面でのメリット

資産管理会社を設立する最大のメリットの一つが税制優遇です。

個人と法人の最高税率の違い

資産管理会社は法人であるため、個人とは最高税率が異なります。

個人の所得税の最高税率は住民税を含め55%、法人税は実効税率ベースで33%です。

個人で不動産投資を行った場合、所得税に加算されるので、不動産投資で高収入を得ている方は、資産管理会社を活用した方がよいでしょう。

一方、上場株式などの金融資産の譲渡益税は税率は20.315%です。したがって、金融資産のみであれば資産管理会社は不要といえるかもしれません。

所得分散が可能

資産管理会社は、家族を役員にすることで法人の収入を家族へ分散することができます。

例えば、奥様に1,500万円、お子様に1,000万円、法人に2,000万円残すといった形で所得を分散することができます。

また、個人で高額のインカムゲインを得ると所得税も高額になりますが、資産管理会社を経て家族に所得を分散すれば、所得額が低くなり、税率も下がるため、税金面でも大きなメリットがあります。

法人独自の経費がある

資産管理会社は法人のため、個人では利用できない交際費・社宅・車両・旅費など法人独自の経費が利用できます。

例えば交際費(年間800万円まで)、会社名義の社宅、車を経費化できる車両費、事業目的の旅費(規定を定める必要あり)などを経費として計上できます。

このような経費を活用できるのであれば、資産管理会社を設立するメリットは大きいといえるでしょう。

幅広い損益通算が可能

個人の場合、金融資産への投資で損失が出た場合、金融資産の中では損益通算が可能です(未上場株など一部損益通算不可能)が、不動産収入と金融資産は損益通算ができません。

一方、資産管理会社の場合は、利益や損失の種類に関係なく幅広く損益通算することが可能です。

さらに運用で損失が出た場合、個人では損失の繰り越しは3年までですが、法人の場合は10年間繰り越し可能というメリットがあります。

資産承継面でのメリット

資産管理会社の設立には、資産承継面でのメリットもあります。

資産承継プランが明確になる

これは、それなりに資産のある方に限るのですが、お子様ごとに資産管理会社を作ることで、資産承継プランが明確になります。

例えば、さまざまな資産に投資していてお子様が2人いる場合、相続争いが起こる可能性があります。

この場合、奥様に資産管理会社A、長男に資産管理会社B、長女に資産管理会社Cという形で、お子様の数だけ資産管理会社を作ることで、資産承継プランが明確になり、相続争いを回避することが可能です。

さらに、個人で不動産を持っていて相続が発生すると、相続による登記変更など、面倒な問題が起こりやすくなります。

しかし、資産管理会社で不動産を保有していれば、相続人へ資産管理会社の株式を渡すだけで相続は完了するため、相続手続きが簡単になります。

このように、資産管理会社の場合は、相続や生前贈与も手続きが簡便化され、家族間のトラブルも防ぐことができます。

成長分が承継済みになる

若い富裕層の方、会社売却富裕層・上場会社オーナーの場合は、お子様を株主にした「資本の薄い資産管理会社」を作ることが多いです。

例えば、お子様名義の資産管理会社で1億円の資産を運用した場合。この1億円の資産が増えた分は、実質的にお子様名義で資産が増えていることになります。

この増えた資産は承継済みの資産なので、長期的に考えると、(お子様名義の)純資産が増えるだけなので、資産承継効果(相続税を減らす効果)が大きくなります。

しかし、資産をお子様名義にしてしまうと、若いうちから大金を手にすることになるため、「働かなくなるのではないか」と心配する方も多いでしょう。

この場合は、無議決権株式をお子様へ渡せば問題ありません。一株だけ議決権株式にして親御さんが持てば、会社の資産はお子様のものですが、意思決定権は親御様が持っている状況になるためです。

資産管理会社設立のデメリットと注意点

ここまで紹介した通り、資産管理会社の設立にはメリットが多いですが、次のようなデメリットや注意点もあります。

・法人設立と運営にコストがかかる
・事務や管理が複雑になる
・簡単に廃業できない

 

これらのデメリットを詳しくみていきましょう。

法人設立と運営にコストがかかる

資産管理会社を設立するには、法人登記手続きや収入印紙代などコストがかかります。
また、法人を維持するために税理士の報酬や法人住民税などのコストが発生します。特に、法人住民税の均等割は赤字決算でも毎年発生するため注意が必要です。

事務や管理が複雑になる

資産管理会社は設立時だけでなく、決算時などの事務手続きが複雑になります。また、経営上の重要な事項の決定には、株主総会や取締役会の決議が必要となるなど、管理面でも負担が増加する点もデメリットです。

簡単に廃業できない

個人事業と異なり、資産管理会社は簡単に廃業できません。

株主総会による解散決議や精算人の選任、解散登記などが必要となり、時間や手間だけでなく、コストもかかる点に注意が必要です。

設立を検討すべき人とその理由

資産管理会社を設立すべきか判断できない方も多いでしょう。

資産管理会社の設立を検討すべきなのは、次のような方です。

・課税所得が1,000万円以上の人
・キャッシュフロー獲得目的で不動産投資する人

 

これらの内容を詳しくみていきましょう。

課税所得が1,000万円以上の人

課税所得金額が1,000万円を超える人は、資産管理会社の設立を検討すべきでしょう。

課税所得金額とは、所得税の課税対象となる個人所得のことです。

具体的には、給与所得や不動産所得から必要経費などを除いた「所得」から、基礎控除や配偶者控除などの各種所得控除の合計を引いた金額を指します。
所得税は、この課税所得金額に所得税率をかけて算出します。

以下の表は、課税所得金額ごとの所得税と住民税率です。
個人は、「累進課税」といって年収が上がるほど税率も上がる仕組みになっています。

画像引用:https://www.musashi-corporation.com/wealthhack/income-tax-resident-tax

ここで注目したいのが、課税所得金額900万円以上の人の所得税と住民税を合わせた税率が43%となっている点です(所得税33%+住民税10%)。

法人は、800万円以上の利益がでると法人税が23.2%ですが、その他の税金を足した実効税率が2024年5月時点で約33%です。

つまり、課税所得金額900万円を超える場合は、法人税の方が税率が安くなるため、資産管理会社の設立を検討した方が良いということになります。

ただし、資産管理会社の設立にはコストがかかるため、実質的には課税所得金額1,000万円を超える場合に設立を検討するのが良いでしょう。

キャッシュフロー獲得目的で不動産投資する人

キャッシュフロー獲得目的で不動産投資する人も、資産管理会社の設立を検討すべきでしょう。

個人で得た賃料収入は所得税・住民税の対象となりますが、収入が上がるほど税率が上がる「累進課税」という仕組みであるため、年収の高い人が不動産投資をしても税負担が重く、税引き後キャッシュフローが少なくなるためです。

これに対して、資産管理会社で不動産を保有した場合は「どんぶり勘定」となります。

個人では、株式等の損失が出たとしても損益通算はできませんが、法人の場合は「どんぶり勘定」のため幅広く損益通算が可能です。もちろん、個人の場合と同様に不動産の減価償却も可能です。

また、法人なので個人で不動産投資する場合よりも、経費を幅広く計上できるため、利益を圧縮できるというのもメリットです。

資産管理会社設立の手順

資産管理会社を設立する手順は以下の通りです。

①会社の基本情報決定
②定款の作成・認証
③登記書類の作成
④設立登記

 

これらの手順を詳しくみていきましょう。

会社の基本情報決定

事業内容や会社名、事業年度、役員、本店所在地(自宅とすることも可能)など、会社の基本情報の決定を行います。

定款の作成・認証

基本情報をもとに、会社の目的や商号、本店の所在地、設立時の出資額を記した定款を作成し、公証人役場で認証を受けます。
定款の記載内容は、会社の決まり事として法的拘束力を持つので、司法書士や行政書士などに作成を依頼するのも良いでしょう。

登記書類の作成

会社設立登記のため登記書類を作成します。定款のほかに登記申請書、代表取締役の就任承諾書、出資金払い込みを証明する通帳の写しなど、いくつかの書類が必要になります。

設立登記

法務局へ登記申請書を提出します。不備などがなければ概ね1週間〜2週間程度で登記が完了し、資産管理会社が設立されます。

まとめ:資産管理会社設立の実践的アドバイス

資産管理会社の設立は、おもに不動産オーナーや自社株式を保有するオーナー経営者など、いわゆる富裕層の方々に大きなメリットがあります。

ただし、設立や運営にコストがかかり、事務や管理が複雑になるなどのデメリットや注意点があるのも事実です。

このため、資産管理会社を設立すべきかどうか、悩んでいる方はプロに相談することをおすすめします。

私たちウェルス・パートナーでは、これまで多くの富裕層の方々から資産管理会社の相談をいただき、相談から設立のお手伝いをさせていただいております。
相談は無料となっていますので、資産管理会社の設立を検討されている方は、ぜひ気軽にご用命ください。

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