目次
はじめに
皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
本日のテーマは、「海外移住や子供の留学を考える富裕層が外国の債券や株式に投資する理由」です。富裕層の方の場合、リタイアした後に海外に移住することや、お子様を海外留学させたいというようなご希望をお持ちの方が結構多くいらっしゃいます。そのような富裕層の方々は、外国の債券や株式を持っています。また、「将来、子供の留学を考えているので、海外の債券や株式に投資したいのでどうしたらいいですか」というご相談をいただくことがかなり多く、最近もかなり増えている状況です。今回は、そのような海外移住やお子様の留学を考えていらっしゃる富裕層の方が、なぜ外国の債券や株式に投資するのか、その理由について詳しくご説明します。
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アメリカ移住・留学の年間費用イメージ
富裕層が外国の債券や株式を持つ理由の前に、アメリカに移住したり、お子様を留学させたりする場合、年間の費用は大体どれぐらいかかるのか、イメージを持っていただくために、年間の費用感をお伝えできればと思います。ただし、「どこの地域に移住するか」「何人で移住するか」「どのような大学に行くか」によってかなり異なってくるので、今回は、アメリカ移住を前提に、私が調べた感覚ベースで大まかにこれぐらいではないかという平均の数字をお伝えしますので、参考にしていただければと思います。
1行目はアメリカに移住した場合の年間費用です。家賃や生活費が中心ですが、ある程度ゆとりを持って旅行したり何か楽しんだりする費用も含め、リタイアされたご夫婦お二人が移住されるイメージです。現在1米ドル150円のタイミングなので、3列に分かれている一番左側をご覧ください。移住年間費用は1,000万円くらい必要ではないかと考えます。
次に2行目の留学です。今の為替レートでお子様をアメリカの大学に留学させた場合の年間費用は、授業料や滞在費、生活費などを含めて大体平均で700万円くらい必要ではないかと考えています。ですから、現在の1米ドル150円の水準のイメージは、移住年間費用が1,000万円、大学留学年間費用が700万円ということです。
あくまでこれは今の為替の状態で、ここから変動要因、為替レートが気になるところです。今の水準よりも円高になったとすると、発生するコストが安くなり行きやすくなるのでよいと思います。しかし、やはりリスクはドル高円安になったときです。さらにドル高円安になったときは費用が増えるので、それがリスクであり、コスト増になるわけです。
1米ドル200円の場合、移住年間費用は円ベースで1,333万円、大学留学年間費用は933万円になります。さらに1米ドル300円の場合、150円のときよりもコストが倍になり、移住年間費用は2,000万円、大学留学年間費用は1,400万円になります。
150円が200円ならまだ許容範囲かもしれませんが、150円が300円になったとき、表の一番右側のコスト感になったとすると、移住やお子様の留学などの計画を止めなければいけないほどのコスト増になってしまいます。人生の中ですごく大事なご自身やご家族の人生プランを、経済や為替の変動によって諦めなければならないという事態になる可能性があります。そのような経済や為替によって人生プランを狂わされないために、富裕層の方は、今回のテーマである外国の債券や株式に投資しているのです。では、それを詳しくご説明していきます。
米ドル債券の利息収入を海外支出に充てる
まずは、米ドル債券に投資するのはどのような理由なのかを見ていきましょう。端的に、この米ドル債券から生み出される利息収入を、海外の支出に充てていくというイメージです。
毎年700万円や1,000万円かかる費用を、投資している債券からの利息収入で賄うというイメージになっています。上の2行は先ほどの表と同じ移住年間費用と大学留学年間費用です。新たに加わったのは一番下の米ドル債券の年間利息です。
利率5%で2億円分この債券を持っていた場合、税金が20%だとすると、税引き後の利息収入は、1米ドル150円のときは1,000万円から20%の税金を引いて800万円になります。この800万円があれば大体の費用を賄えるでしょう。移住年間費用1,000万円をある程度賄えますし、大学留学年間費用は全て賄えることになります。
日々の年間費用を、貯蓄を取り崩さずにこのような米ドル債券の利息などで支出に充てることにより、資産を減らさずにやっていくことができるというのが、この米ドル債券を持つ理由になっているわけです。
もう一つ大事なのは、この米ドル債券の年間利息がどの通貨で入ってくるかということです。この米ドル債券は、利息も米ドルで入ってきます。ですから、この米債年間利息は、1米ドル200円や300円とドル高円安になると、その分、円ベースの利息収入が増えるわけです。先ほどお伝えしたように、移住年間費用や大学留学年間費用がドル高円安によって円ベースで増えていったとしても、利息収入も増えていくことになるのでついていくことができます。ゆえに、この支出を賄うことができるのです。
では、1米ドル200円になった場合どうなるか表で確認しましょう。移住年間費用や大学留学年間費用が増えていますが、それに伴って米債年間利息も1,066万円と増えています。さらに1米ドル300円の場合、今よりも倍のドル高になったとしても、米債年間利息は1,600万円と、同じように倍増しているので、これによって移住年間費用や大学留学年間費用賄うことができます。
これが円建ての債券の場合、そのタイミングでの利息収入は入ってきますが、ドル高円安になったときについていけません。どれだけ円安になったとしても、利息収入は円建ての債券の場合は円で入ってくるので、ついていけずに足りなくなり、支出の方が多くなってしまいます。米ドル債券や外国の債券の場合、現地の支出が上がっていくと同時に収入も上がっていくので、海外の支出に充てることができるようになるわけです。これが海外移住やお子様の留学を考える富裕層の方が外国債券を持つ主な理由になっています。
外国株式で現地の物価上昇に追従する
次は株式です。ドル高円安についていけるなら、債券だけでもよいのではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、日本と違って海外、特にアメリカは物価が上昇します。例えばアメリカの場合、ドル建ての債券は、物価上昇についていくことはできません。物価が上昇しても、債券の価値は基本的には上昇しないので、外国の債券では、現地の物価上昇についていくことができないのです。
そこで必要になるのが外国の株式です。アメリカであれば、アメリカの株式ということになります。これによってアメリカの物価上昇に追従することができます。現地の物価上昇についていけるのが、外国株式を持つ本当の意味といえます。
こちらのチャートは1980年から2029年、未来の予想も入っていますが、アメリカの消費者物価指数(CPI)の50年弱の推移です。
アメリカの平均の物価上昇率は、実は毎年3%ずつぐらい増えています。3%ずつ増えると、10年で物価は1.3倍になり、20年で1.8倍になります。1984年は指数100だったのですが、約40年後の2024年は300になっているので、40年で物価が3倍になっているということです。物価が3倍になると、先ほどの移住年間費用や大学留学年間費用はそのまま3倍になります。40年後はかなり未来なのでイメージがつかないかもしれませんが、10年で1.3倍、+30%、 20年で+80%と、かなりリアルな数字かと思います。
このように毎年3%ずつ物価が上がっていく国では、その物価上昇についていけなければ生活できなくなる可能性が高いです。それゆえ、この物価上昇についていくためには株式が必要なわけです。
株式では、企業の経済活動から生み出される価値を受け取ることができるので、アメリカが成長したり、物価の上昇に伴って株式の価値も上昇したり、配当が増えたりすることで、物価上昇についていくことができます。ですから、富裕層の方は、先ほどの海外移住などを考えると、外国の債券と共に外国の株式も併せて持って、この物価上昇にもついていくという対策をしているわけです。
まとめ
今回のテーマである「海外移住や子供の留学を考える富裕層が外国の債券や株式に投資する理由」を最後にまとめます。ポイントは4つです。
ポイント1)円安や物価上昇から家族の人生プランを守るため
ドル高円安や海外の物価上昇から家族の人生プランを守るためというのが一番の理由かと思います。「将来、リタイアした後はハワイでゆっくり生活したい」「子供をグローバルな人材に育てるために、アメリカやスイスなどの大学やボーディングスクールに留学させたい」、このような壮大な人生プランがあったとしても、それが円安や現地の物価が上がることにより行けなかったとすると、勿体ないですし、人生がつまらなくなってしまいます。ですから、今の時点からそのような外国の債券や株などに投資しておくことによって、経済情勢が変わったとしても、人生プランを計画通り実行することができるのであれば、当然投資をするでしょう。それが一番の理由かと思います。
ポイント2)外国債券の利息収入を現地の費用に充てる
具体的に外国債券をどのように使うかというと、発生する利息収入を現地の費用に充てます。仮に、米ドル円や外貨が上昇して円ベースの支払費用が増えたとしても、この外国債券の利息は現地通貨建てで入ってくるので、円ベースの収入は同じように増え、費用の支払いについていくことができます。これが外国債券を持つ理由になっています。
ポイント3)外国株式で現地の経済成長や物価上昇に追従する
外国債券にはなくて、株式にある経済効果として、経済成長や現地の物価上昇などについていくことができるのが本質といえます。債券だけではそのような物価上昇にはついていけないので、債券と共に株式を併せ持つことによって、ドル高円安になっても、現地の経済、物価が上昇したとしても、資産価値を損なうことなく、しっかりと現地の費用を賄えるような体制が出来上がるわけです。
ポイント4)ここ数年の円安や米物価高を受け相談が急増
ここ数年のドル高円安やアメリカや世界的な物価高などを受けて、今後、ご自身が海外移住したり、お子様を留学させたりすることが本当にできるのかということを不安に思われる方が増えました。それにより、当社に外国の債券と株式のご相談が増えているのかと思います。このようにお子様を海外に行かせたり、ご自身が移住したりなど、そのようなプランをお持ちで、その対策をしたいという方は、アドバイス経験豊富な私たちに、ぜひご相談いただければと思います。
本日は「海外移住や子供の留学を考える富裕層が外国の債券や株式に投資する理由」という内容でお届けさせていただきました。
株式会社ウェルス・パートナー
代表取締役 世古口 俊介
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。
2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者1万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
メディア掲載情報:「m3.com」「ZUU online」「MONEY zine」「マネー現代」でコラムを連載中