目次
はじめに
皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
本日のテーマは、「米金利低下に対応した富裕層のための資産配分戦略【前半】米ドル債券利回りの現状と見通し」です。10月に入ってからの米金利は4.1%〜4.2%ですが、大きな流れとしては、下がっていく可能性が高いと予想されています。そこで、低金利時代が来たときに、富裕層の方はどのような資産配分戦略を取ればいいのかという内容でお話しできればと思います。
今回は前半の「米ドル債券利回りの現状と見通し」について、後半は「米金利低下に対応した資産配分戦略」「債券利回り低下をカバーする資産クラス紹介」「目標リターンを達成するための資産配分実例」について解説します。
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アメリカ政策金利の予想(2024年10月22日時点)
まずは「米ドル債券利回りの現状と見通し」についてお話しします。こちらは、アメリカの中央銀行が決めている政策金利の10月22日時点の最新の予想です。
今現在、アメリカの金利は4.75%です。9月までは5.25%でしたが、実際に9月に利下げが行われ、0.5%金利が下がり4.75%になっています。一番左のMEETING DATEは中央銀行の会議があるタイミングで、そのタイミングごとに政策金利が何%になるか予想されています。水色にマーキングされているところが、予想の確率が一番高い金利です。ですから、今は4.75%ですが、会議のタイミングごとに、このように政策金利は下がっていく予想になっています。
では、1年後はどうなっていると予想されているのでしょうか。2025年10月29日は3.5%の水準なので、政策金利が今よりも1.25%下がっている予想になっており、来年の年末には3.25%なので、1.5%下がる予想です。
実は、この予想も9月まではもっと金利が下がる予想でした。1年後には2.5%~2.75%まで下がり、金利が半分になるという予想だったのが、それほど金利が下がらない予想に変わってきています。それによって長期金利も上がってきているわけですが、詳しくは後ほどご説明します。
米10年国債利回りの推移(過去3年)
こちらは、皆さんが投資されるような米ドル債券の利回りにも重要な指標となる、米10年国債利回りの推移、過去3年のチャートです。
重要なのは直近の状況ですので、右側をご覧ください。2024年の一番高いタイミングは4月あたりで4.72%くらいでした。そこから、アメリカの景気が悪くなるのではないかという予想で、どんどん下がっていき、9月には一番低いタイミングで3.61%まで下がりました。
しかし、そこからまた息を吹き返しています。理由として一番大きいのは、トランプ氏が11月の大統領選で次期大統領になる可能性が高くなってきたことです。いわゆる「もしトラ」、トランプ氏が大統領になったら、という予想に基づいて上がってきています。トランプ氏が大統領になると、「景気を刺激する政策を打つ可能性が高いであろう」「それによって景気がよくなって物価が上がるのではないか」と予想され、すると、アメリカの金利を簡単に下げられなくなるので、足元の金利が上がっている状況です。10月23日時点で4.2%になっています。
足元では金利が上がっていますが、金利も株などと同じように上がったり下がったりを繰り返します。この薄い赤色の矢印をご覧ください。2023年10月は5%で、ここ最近では金利が最も高い水準でしたが、そこから基本的なトレンドとしては下がっていく傾向にあります。ですから、おそらくアメリカの金利も4.数%が比較的高いタイミングで、政策金利が下がっていくに伴い、この赤い矢印に沿って下がっていく可能性があるというのが、基本的な流れではではないかと思っています。
代表的な債券種類の利回り(最新・予想)
皆さんが投資されるような代表的な債券種類の利回りについてお伝えします。こちらは、最新の利回りと、私個人の予想ですので、外れる可能性もあることをご留意いただければと思います。
皆さんが投資される債券は、米国債・普通社債・劣後債の3種類が比較的多いと思います。期間は10年、債券格付けがAA+の米国債は、2024年10月中旬(9月は誤り)では平均で4.1%の利回りかと思います。
次に、債券格付けがA-の普通社債は、直近の利回りは4.4%の債券が多いと思います。一番下の劣後債(倒産した場合のお金が返ってくる順番が普通社債よりも遅い債券)で、債券格付けBBBのものは、利回りが4.7%というイメージになっています。
これが、1年後の2025年10月(9月は誤り)にどれぐらいの利回りになっているかというと、政策金利が1.1%前半ぐらい下がっている可能性が高いという予想です。ですから、そのまま長期金利が下がることはないと思いますが、おそらく0.5%ぐらい金利が下がっている可能性が高いと思います。1年後には、米国債は3.6%、普通社債は3.9%、劣後債は4.2%と、概ね0.5%ぐらいずつ利回りが下がるような可能性が高いのではないかと予想しています。
2024年10月中旬の利回りは、米国債で4.1%、普通社債は4.4%、劣後債は4.7%なので、今、債券のポートフォリオを作ると、4%前半や中盤ぐらいになります。ただ1年後の債券の利回りを見てみると、普通社債で3.9%なので、劣後債などを組み合わせて債券ポートフォリオ作り、4%ギリギリや、米国債を入れると4%を切ってしまうような利回り水準のイメージではないかと思います。
まとめ(米ドル債券利回りの現状と見通し)
今回のテーマである「米金利低下に対応した富裕層のための資産配分戦略【前半】」の「米ドル債券利回りの現状と見通し」を最後にまとめます。ポイントは4つです。
ポイント1)9月に0.5%の利下げ、今後も大幅引き下げの予想
9月に0.5%の利下げが実施されました。今後も大幅引き下げの予想は変わらない状況です。
ポイント2)米ドル債券の利回りは足元では一時的に上昇傾向
一方で、足元の利回りは一時的に上昇傾向です。9月からは0.5%~0.6%上昇しています。
ポイント3)大統領選が波乱要因、トランプでも利下げは実行
今、金利が上がっているのは大統領選が要因です。トランプ氏が大統領になった時の金利の予想を織り込んでいるため、長期金利が上昇しています。ですから、大統領選が波乱要因になるわけです。ハリス氏がなった場合は、今とあまり政策が変わらないので、おそらく利回りは下がる可能性が高いです。
しかし、トランプ氏になったからといって急にインフレ率が上がるわけではありません。政策が経済に影響を与えるのは、1年や2年、数年後かと思うので、トランプ氏になったとしても、基本的に利下げを実行する可能性は高いでしょう。
FRBは政権とは独立した存在なので、今までトランプ氏が政権を担っていた時代のFRBの政策を見ていても、基本的にはトランプ氏の意思に基づいて動いているわけではないと思います。ですから、独立した機関として利下げは実行されていくのではないかと考えています。やはり、大きな流れとしては、金利は下がっていく方向ではないかと予想しています。
ポイント4)債券だけでは目標リターン達成が難しい可能性
一時的に金利は上がっていますが、米ドル建ての債券だけでは、皆さんが目標にされているような投資の利益を達成することが難しい可能性が高くなってくるのではないかと考えています。
本日は「米金利低下に対応した富裕層のための資産配分戦略【前半】米ドル債券利回りの現状と見通し」という内容でお届けさせていただきました。
株式会社ウェルス・パートナー
代表取締役 世古口 俊介
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。
2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者1万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
メディア掲載情報:「m3.com」「ZUU online」「MONEY zine」「マネー現代」でコラムを連載中