はじめに
航空会社の株式は、新型コロナウイルスの大流行により大きな打撃を受けています。旅行需要はほとんどありません。その結果、ほとんどの航空会社の株式は50%以上下落しています。航空業界は、利益の成長よりも生きのびることに重点を置いています。
年次総会でスピーチをしたバフェットは、このように述べました。
「私は、間違いを犯してきたことを認めなければなりません」
この発言が、航空会社の株式にさらなる下落圧力をかけるのは間違いありません。なぜなら、バフェットの真似をして投資をしている投資家はたくさんいるからです。
1.バフェットの航空会社に対する態度の変遷
バークシャーの航空会社に対するスタンスは、変遷を繰り返してきました。30年前、彼はUSAir(現在はアメリカン航空の一部)の株式を購入しましたが、結局その株式のほとんどを売却しました。2001年には彼は航空業界を見切り、以下のように述べました。
「ライト兄弟の飛行機が最初に離陸したとき、資本家がキティホークにいたのなら、彼らはその飛行機を撃墜すべきだった」
しかし、近年彼は航空セクターに好意的な目を向けるようになり、米国の4大航空会社それぞれの最大株主の1人となりました。2000年代後半の航空業界ではリストラと統合が進んだため、各航空会社の利益が向上したこともその背景にあります。
バフェットは航空業界に夢中になりました。2019年には基本ルールの1つを破り、デルタ航空とサウスウエスト航空の10%以上の株式を取得しました。10%の保有比率を超えたため、バークシャーはこれらの株式について多くの情報を開示する必要に迫られました。これは、SECの規制に基づくものです。そのため、私たちは4月上旬にバークシャーがこれらの航空会社を売却したことという情報をすぐにつかむことができました。
2.不況下において厳しいビジネス
確かに、バフェットが懸念する理由もわかります。航空業界はかつての不況の期間に、厳しい経験をして来ました。過去の不景気の際には、TWA、パンナム、イースタンなどの航空会社が姿を消しています。この新型コロナウイルスによる減速は、2001年9月11日のビン・ラディンによる同時多発テロよりも業界に悪影響を及ぼしています。たとえば、ユナイテッド航空が2020年5月全体で乗せる乗客の数は、2019年5月の1日あたりの乗客よりも少ないのです。
パンデミックが封じ込められた後でも、航空会社には困難な未来が待ち受けているように見えます。ウイルスの恐怖と不況のせいで、旅行者の数が戻るのに長い時間がかかると思われます。バフェットは以下のように述べました。
「今から3年か4年後に、人々が去年と同じくらい多くのマイルを利用するとは思えません」
航空会社は第1四半期に数十億ドルの損失を被っており、第2四半期はさらに悪化するでしょう。彼らは援助と引き換えに米政府に対し新株引受権を発行しました。そして、数十億ドルものの借入金を調達することでバランスシートを拡大しています。
バフェットは「彼らは困難な課題に直面している」と述べました。また、「航空会社の状況は一変した。ただ幸運を祈るのみ」と彼は言いました。そして、航空業界は多くの航空機と多くの仕事を今後数年間で削減しなければならないだろう、とも述べました。
バフェットはおそらく正しいでしょう。ほとんどの航空会社はすでに多数の飛行機を地上待機させています。しかし、航空会社は不景気な旅行環境を乗り切るための手段を備えています。大きな問題点は、旅行需要がどれだけ落ち込むか、そしてどれだけひどい落ち込みが続くかという点が未知数だということです。
3.バフェットと同様に航空株式を売却すべきでしょうか
バフェットの航空会社に対する態度は、注目に値するものです。彼の身上は「他人が恐れているときには貪欲であれ」というものです。バークシャーは、航空会社株式を高値で買った後、間違いなく安値で売っています。バフェットが、嵐を乗り越えるのを待つのではなく、航空業界を見切ったという事実は、他の株主にも影響を与えることでしょう。
確かに、業界が回復するのに何年もかかるという見方は正しいと思います。しかし私は、過去10年間に航空会社が取り組んだ努力のおかげで、倒産することなくこの危機を乗り越えることができると思われます。
4.まとめ
パンデミックの程度とその後に続く可能性のある不況については不透明です。現在、乗客数は前年比で90%以上減少しています。この状況が秋口まで続く場合、航空業界は相当厳しい状況に立たされます。
しかし、主要な航空会社の株価は1月時点と比べて60%も下落しているため、この不況を乗り越えて乗客が再び戻ってきた場合、株価が急騰する可能性があります。
バフェットは、名高いキャリアの中で、航空会社に対する見方については何度も間違ってきました。確かに航空会社は今、大きく傷ついています。しかし、今回バフェットが下した決断は完全な誤りだと思われます。