コロナショックによりネット証券の口座開設数増加!どうなる対面型証券会社の行方は?

はじめに

コロナショックで3月の株式市場は大きく下落しましたが、ネット証券の口座開設数は大きく増えました。今回は口座開設が増えた背景と、どのような利用者が多いのかについて解説します。

ネット証券の口座開設数増加

3月の日経平均株価は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により大きく下落しました。日経平均株価は、3月19日に16,358.19円まで下落。1月17日の高値24,115.95円からの下落率は32.2%にも達しました。

しかし、ネット証券で新規口座を開設する個人投資家が急増しています。ネット証券最大手のSBI証券は、2020年3月の新規口座が12万と、1999年のサービス開始以来、月間で最多になったことを明らかにしました。

また、ネット証券大手の楽天証券でも、2020年3月の月間新規口座開設数が16万4,011口座になったことを発表。2月に初めて10万口座の大台を超えましたが、3月はさらに大きく伸びたのです。

松井証券、マネックス証券、auカブコム証券など他のネット証券大手も3月の新規口座開設数は大幅に増えるとみられています。合併などで振れが大きいマネックス証券を除く、大手4社の1~3月期の新規口座開設数は50万件を超える見込みで、2008年のリーマンショックなど過去の急落局面を上回る勢いです。

2019年から続いている老後資金のための資産形成への関心の高まりに加え、大きな相場変動を「投資を始める好機」と捉えた人が多かったのです。これまでも相場下落局面で新規口座の開設数は増えましたが、広がりは一時的でした。ただ、今回は過去と投資家層が違うのが特徴です。

ネット証券の新規口座開設数増加の背景

3月に口座開設をしたのは、どのような人が多いのかについて解説します。

若い世代を中心に投資への関心が高まっている

2019年6月に、金融庁から「老後資金として必要な貯蓄額は2,000万円」という報告書がだされました。人生100年時代を迎え、会社を定年退職した後の人生が伸びるため、95歳まで生きるには夫婦で約2,000万円の金融資産の取り崩しが必要になるという内容です。

大手銀行の普通預金の金利が0.001%なので、預貯金で2,000万円貯めるのは困難です。そこで、投資を始めようと考えている人が増えていました。ただ、株価が高値圏で推移しているので、躊躇している人が多かったのです。

しかし、今回の株価急落により投資を始めようとする人が増えたと考えられます。実際、楽天証券の新規口座開設者の72.3%は初心者。さらに30代以下の比率が61%と若年層が多いのです。

老後資金をどうするかを考えていた若年層が動き始めたといえるでしょう。

ネット証券の利用増加

証券会社には、野村證券や大和証券などの対面型証券会社と、SBI証券や楽天証券などのネット証券があります。口座開設数が増えたのは、主にネット証券です。ネット証券では、口座開設から売買までをネット上で完結できます。

対面型の証券会社は、資産を多く持っている高齢者がメインの顧客です。営業マンに投資相談できる点はメリットですが、手数料が高いというデメリットがあります。

店舗や窓口を持たないネット証券は、人件費などの費用を抑えられるので、対面型の証券会社に比べて手数料が安くなります。スマホを使って口座開設や情報収集・取引までできるので、とくに若い世代に使いやすい証券会社といえるでしょう。

つまり、ネットでの取引に抵抗がなく、コストにシビアな若い投資家が、ネット証券に参入していると考えられるのです。

積立サービスが増加

SBI証券では、少額投資非課税制度である「つみたてNISA」を含む積立サービスも増加しています。月額換算で200億円超と、2020年1月から3月までの3カ月間で約3割増えたのです。

また、楽天証券も昨年3月末から倍増の170億円と急増しています。たとえば、SBI証券の投信積立では、以下のような特徴があります。

<SBI証券の積立投資の特徴>

100円から積立が可能

SBI証券の積立投資は、最低100円という少額から可能。投資のハードルが低いので、気軽に始められます。

タイミングを自由に選べる

積立投資のタイミングを以下の5つから選べます。

毎日 毎日(毎営業日)積立投資します
毎週 毎週、月~金曜の好きな曜日で積立します
毎月 毎月15日など好きな日付で積立
複数日 好きな日付を複数選択して積立
隔月 隔月で積立することも可能です

このように少額から投資できる積立投資は、余裕資金が少ない人や投資初心者でも始めやすいという特徴があります。また、長期で積立投資することで買付単価を標準化でき、1度にまとめて買う一括投資よりもリスクを軽減できます。

さらに、安定的な資産形成を行うために用意された制度である「つみたてNISA」を利用する人も増えています。

つみたてNISAとは、2018年1月からスタートした積立専用のNISA(少額投資非課税制度)のこと。年間上限枠は40万円で、最長20年間の非課税期間があります(最大800万円)。楽天証券では、51万口座を突破しています。今後も「つみたてNISA」の利用者は、若年層を中心に増えていくことが予想されます。

まとめ

コロナショックで、若年層中心にネット証券で投資を始める人が増えています。ただ、長期投資家として定着するかはこれからです。短期的な利益確定や損切りに走る個人が多く、長期的に運用を続けられる人は少ないからです。

SBI証券などのネット証券では店舗がないことが特徴ですが、IFA(独立系金融アドバイザー)を使い、対面での助言に力を入れています。マネックス証券では「ライフプランシミュレーション」という資産形成に役立つ情報を提供しています。

長期投資を続けられるようなアプリの開発や、相談業務の充実などが今後の課題といえるでしょう。

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