2019
07/25
最終更新日:2019/08/09
経済・マーケット

はじめに

2019年6月28~29日にかけて大阪市内でG20サミットが開催される前、世界中の大手企業や機関投資家から地球温暖化対策への政策対応を求める声が多く出ていました。

実はこの状況には、日本の地球温暖化対策は進んでいないどころか後退しつつある可能性を危惧しているということがあります。

本記事では、G20ホスト国である日本の地球温暖化対策は一体どうなっているのか、また大手企業や機関投資家が求めていることとそのギャップについて説明していきます。

大手企業や機関投資家の声

まずは、大手企業や機関投資家が掲げている地球温暖化対策や日本への要求について見ていきます。

大手企業

リコーや積水ハウス、ソニーなどの日本の大手企業19社は「RE100」という企業連合に加盟しています。

「RE100(Renewable Energy 100%)」とは、企業の運営を100%再生可能エネルギー(太陽光発電・風力発電・地熱発電など)で調達することを目標に掲げている企業が加盟している団体です。

2019年2月16日時点で164社が加盟していて、世界で有名な企業だとスウェーデンのイケアやアメリカのNIKEなどが加盟企業として挙げられます(図1)。


(図1 出典:https://newswitch.jp/p/8308)

RE100は電力を再生可能エネルギーに100%切り替えることで、地球温暖化の原因である二酸化炭素の排出を削減し地球温暖化対策を実現することを目指しているのです。

実際、加盟企業の5割以上がすでに50%以上を再生可能エネルギーで賄っているという事実があります。

そのRE100に所属する日本の大手企業19社とアメリカのアップルは2019年6月17日に、
“日本の電源構成(発電電力量の内訳)に占める再生可能エネルギーの比率を2030年時点で50%に引き上げるべきだ”
と政策提言を発表しました。

しかし2017年の日本の再生可能エネルギー比率はたった16%です。

ちなみに日本政府はエネルギー基本計画で“2030年度の電源構成に占める再生可能エネルギー比率の目標は22~24%”としている(図2)ので、RE100加盟企業による50%という目標は日本政府の同時点の目標である数値の2倍ということになります。


(図2 出典:https://mainichi.jp/articles/20180517/ddm/002/010/137000c)

また、これらの政策提言を発表した20社は再生可能エネルギーを大量に導入するための整備や風力発電の導入促進などを具体的に提言に盛り込んでいます。

機関投資家

2019年6月26日に、アメリカのカリフォルニア州公務員退職年金基金など世界の477の機関投資家が、「気候変動対策に関する政府への投資家宣言」というものを公表しました。

そして “2015年のパリ協定による気温上昇を2度以内に留めるという取り組みを強く支持する”、“パリ協定で努力目標であるとした産業革命以降の気温上昇を1.5度以内に抑えるべきだ(図3)”という旨を述べました。


(図3 出典:http://www.cger.nies.go.jp/cgernews/201710/322004.html)

「気候変動対策に関する政府への投資家宣言」の宣言文には、期限を設けて世界規模で切開火力発電の廃止を求めるなど二酸化炭素の排出の削減に非常に意欲的です。

その宣言に署名した機関投資家の中には、日本の三井住友トラスト・アセットマネジメントや野村アセットマネジメントなど日本の大手運用会社も含まれています。

日本の遅れた再生可能エネルギー利用

このように、日本の多くの大手企業が世界企業に混ざって再生可能エネルギーに関して強くメッセージを発信しています。

これは日本の地球温暖化対策が進んでいない表れであるといえます。

G20開催前の6月15~16日に長野県軽井沢町で開催されたエネルギー相及び環境相による会合では、地球温暖化などの気候変動対策についての成果が何も見られませんでした。

また、会合後に発表する閣僚声明文で「脱炭素化」というワードが一切入っていなかったことも対策が進んでいないということを象徴しています。

ではどうして日本は再生可能エネルギーの利用率が世界に比べて低いのでしょうか。

まず再生可能エネルギーの場合、発電するのに必要なコストが高いです。


(図4 出典:https://www.solar-partners.jp/pv-eco-informations-66815.html)

図4を見るとお分かりいただけると思いますが、日本は他国と比べて再生可能エネルギー(この場合は太陽光発電)のコストがかなり高く、2~3倍以上のコストを必要としています。

アラブやチリ・ドイツなどがコストを安くできる理由としては、自然の条件にマッチしている(日照時間や日照量)ことや労働力が安価である(建設費)ことなどが挙げられます。

日本が再生可能エネルギーの導入比率を上げるためには、発電コストを低減することが求められているとわかります。

先ほども少し触れましたが、RE100加盟企業の5割以上がすでに50%以上を再生可能エネルギーで賄っているという事実があり、さらには調達先企業にも再生可能エネルギーの調達を求める動きが広がっています。

日本企業が再生可能エネルギーを高比率で導入しないままでいると、世界のサプライチェーンから外されてしまうかもしれません。

火力や原子力発電の電力会社のみに依存するのではなく、再生可能エネルギーをどう効率的に導入できるかということを日本はきちんと考えていく必要がありそうです。

本記事の著者

世古口俊介
世古口俊介 代表取締役
プロフィール
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者3万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
当社での役割
超富裕層顧客の資産配分と税務の最適化提案。
特に上場会社創業者の複雑な相続対策や優良未上場企業の組織再編に注力。
同社の代表として書籍の出版や日本経済新聞、週刊東洋経済、ZUUonlineなど各種メディアへの寄稿、投資教育普及のために子供向けの投資ワークショップなどを開催。

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