原油価格が株式市場に与える影響とは何か?わかりやすく解説します

はじめに

新型コロナウイルスの感染拡大が続き、世界中の株式が大きく売られるなかで、原油価格の急落に不安を覚える人が増えています。原油価格の下落により、ガソリンの値段や企業が製品を作るときの燃料代が下がるので、経済にとってプラスに思えます。

しかし、原油安は株式市場のマイナス材料です。なぜ原油価格の下落が株式市場に影響を与えるのでしょうか。

原油価格の歴史的急落

2020年4月21日、米国株式市場は大幅に値下がりしました。NYダウなどの主要株価指数は3%前後の下落となったのです。株価の下落を引き起こした主な原因は、原油価格の急落。
新型コロナウイルスの感染拡大で原油需要が減少するとの見方から、NY原油市場の先物価格が史上初めてマイナスに落ち込むという異例の事態となったからです。

WTI原油先物5月物は4月20日に急落し、「1バレル=―37.63ドル」とマイナス価格になりました。21日は取引最終日の5月物が急反発しプラスを回復しましたが、取引の中心限月となった6月物は9ドル近く下落し、11.57ドルとなりました。

原油価格の目安になる WTI の原油先物価格は、2020年の年初には1バレル=60ドル程でしたが、3月に入ると急落し、20ドルを割り込む水準まで下落していました。価格が急落したのは、3月6日に開いた産油国間の交渉が失敗したからです。

2月頃から新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、中国などの工場が止まり、原油は使われなくなっていました。そこで産出量を減らして価格を上げる相談をしましたが、意見がまとまらず交渉は決裂。有力な産油国であるロシアやサウジアラビアは、ほかの産油国を追い落とそうと増産を決めたのです。

原油価格はアメリカのシェールオイル増産や主要産油国による生産拡大により、世界的な供給過剰感で2014年に大きく下落しました。ただ、その後の協調減産により供給過剰が解消され、原油価格は比較的安定して推移していました。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大による需要低迷や、ロシアとサウジアラビアの増産により、原油価格は再び軟調な展開になったのです。

かつては原油価格と米国株式市場に相関は見られませんでしたが、2015年頃から値動きに連動性が見られています。それは、米国が今では立派な産油国となったことが原因です。

米国は世界最大の産油国

米国の石油生産量は、1990年代の後半から2000年代にかけて、かなりの期間、日量500万バレルで推移していました。

しかし、2010年代になるとシェールオイルの開発が進んで増産基調が強まり、2018年には日量1,100万バレルと、サウジアラビアやロシアを上回るまでになったのです。2018年時点の1日当たりの石油生産シェアは、以下の通りです。

米国       18%
サウジアラビア  12%
ロシア      11%
カナダ      5%
中国       5%

米国は規制緩和によって石油輸出も増加。米国は立派な産油国となったのです。このことは、原油価格が米国経済に影響を与えるようになったことを示しています。原油価格が上昇すれば米国経済にとってプラス、下落すればマイナスになると判断できるのです。

そして、かつては見られなかった原油価格と米国株式の相関は、2015年ごろから値動きに連動性が見られるようになったのです。世界が注目する米国経済を見るうえで、WTI原油価格の方向性を見ることは大切。商品市場は世界各国の投資家が共通して見る市場なので、世界の人々が景気をどのように見ているかを知る判断材料になるからです。

低格付け債の1割はエネルギー企業

原油価格の下落は、シェールオイルの採掘業者の経営に大きな影響を与えます。2020年5月19日時点でWTI原油先物価格は30ドル台を回復していますが、シェール業者の採算ラインは40~50ドル。現在の水準では新規投資が止まってしまいます。

シェールオイルは岩盤に含まれる原油で、2010年ごろから北米で採掘が盛んになりました。ロシアやサウジアラビアでは国営企業が原油を産出しますが、米国のシェール業者は民間企業です。

そのため、社債を発行して投資家から資金を集め、製造や採掘の設備を買います。ですから原油価格が下落した場合、国家の後ろ盾があるロシアやサウジアラビアの油田に比べて採掘・生産コストが高い米国シェールは、業界から淘汰される可能性があります。

原油価格に経営が左右されるシェール業者の社債は、「低格付け債」に区分されることが多くなります。低格付け債とは、元本や利息の支払いが滞るリスクが高い債券です。ただ、リスクが高い分、利回りも高い傾向にあります。

低格付け債の発行が盛んな米国では、市場規模が1兆3,000億ドルにもなりますが、1割強をエネルギー企業が占めています。原油価格の下落が続けば、シェール業者の破綻が相次ぎ、ほかの低格付け債も売られる可能性があります。

そうなると米国景気に悪影響を与えるので、株式も大きく下がる可能性があるのです。今後は、シェール業者の採算ラインである40ドルを上回れば安心感も広がるでしょう。

まとめ

米国は世界一の産油国なので、原油価格の動向に影響を受けます。2020年の4月20日には、WTI原油先物がマイナスになるという異常事態になりました。その後、原油価格は回復していますが、米シェール業者の採算基準である40~50ドルまでには達していません。

この水準を下回る間は、米国株式市場にマイナスの影響を与えるので注意が必要です。

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