目次
はじめに
皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
今回のテーマは、「イラン戦争で激変する富裕層の資産運用戦略」です。
2026年3月初旬のホルムズ海峡問題を発端に、アメリカとイランは軍事衝突に突入しています。2022年のロシア・ウクライナ侵攻の際と同様に、紛争・戦争が起こる・長引く・激化するといった状況は、多くの資産クラス(株式、債券等)や通貨に大きな影響を与えます。富裕層の方々の資産運用にも相応の影響が見込まれますので、今回はこの状況を踏まえた最適な資産運用戦略について解説します。
WTI原油価格の推移(過去5年)
紛争・戦争が起こると、特に市場が最も敏感に反応するのが原油価格です。イランは中東の産油国であり、その輸出が滞ると真っ先に跳ね上がるのがWTI(原油先物の代表的指数)です。まずは過去5年間のチャートを振り返ってみましょう。
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2022年のロシア・ウクライナ戦争時に急騰した原油価格は、その後2023年に入り落ち着きを見せていました。しかし、直近の2026年3月頃から状況は一変し、ホルムズ海峡問題とイラン戦争の激化を受けて、価格は再び急上昇しています。現在のWTI価格は100ドルを超え、2022年のピーク水準に達しました。
このように原油が大幅に上昇すると、私たちの日常生活に欠かせないあらゆる製品・建材・生活インフラのコストが上がり、高インフレを招きます。そして、このインフレ状態は資産運用にも大きな影響を及ぼします。現在の日本のインフレ率は2%〜3%程度で推移していますが、今回の原油高騰が長期化すれば、4%〜5%に達する可能性があります。物価がそこまで上昇するということは、それ以上に資産を増やさなければ、実質的な資産価値は目減りすることを意味します。
ナフサ価格の推移(過去5年)
ナフサは原油の精製過程で抽出される石油製品の一つであり、住宅建材や設備のプラスチック・樹脂素材のほぼすべての原料として使用されています。日本はナフサ輸入の約4割を中東に依存しているため、今回の戦争によって輸入が大きく制限されています。
その結果、建築コストが急騰しており、戦争から1ヶ月程度で、従来1億円で建てられた建物が、現在は1億数千万円かかるといった影響がすでに出始めています。
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ナフサ価格の過去5年チャートを見ると、原油(WTI)とほぼ連動していることがわかります。2022年にはロシア・ウクライナ戦争の影響を受けて急騰し、その後2023年にかけて落ち着き、しばらく凪の状態が続いていました。しかし、2026年3月頃からイラン戦争の激化とホルムズ海峡問題を受け、原油と同様に再び急上昇しています。
ナフサは不動産価格に与える影響が特に大きい資材です。現在、原油価格の高騰によるインフレ再燃で物価上昇になる可能性が高く、ナフサの高騰により特に不動産価格が上昇していく可能性が高くなると見られています。これら2つのチャートを分析する限り、今後の不動産価格はさらに上昇していく可能性が高いといえるでしょう。
資産クラスごとの影響と資産運用戦略
イラン戦争を踏まえた、資産クラスごとの影響と資産運用戦略について、私自身の考えをお伝えします。

① 国内不動産
まずは、富裕層が投資する都内一棟RCマンションや一棟木造アパート、区分マンションといった国内不動産に与える影響を見ていきます。
【影響】
価格・賃料の上昇が考えられます。原油・ナフサ価格は急騰しており、ナフサに至っては輸入制限だけでなく品薄も影響し、建築コストの急騰は新築物件の価格を直撃します。また、中古物件においても修繕コストの上昇に波及しており、国内不動産全体で価格・賃料の上昇傾向が続くと予想されます。
【資産運用戦略のポイント】
投資金額を増やす:インフレ再燃が見込まれるなか、預金のような無リスク資産は実質価値が目減りします。不動産への投資比率を高めることが、最も有効な対抗手段となります。
投資タイミングを早める:2026年~2027年までに購入を検討している方は、タイミングを前倒しすることが合理的な判断といえます。ロシア・ウクライナ紛争時と同様、1〜2年で価格が大きく上昇する可能性が高く、すでに市場価格への影響が出始めています。
② 国内・海外株式
【影響】
上昇傾向だが値動きが激しくなる:紛争・戦争はネガティブなイメージがある一方、インフレ局面では株式相場にプラスに働くことが多いと考えます。この戦争が長引き、仮にアメリカが大打撃を受ける場合は、株式にとってマイナスになる可能性もありますが、アメリカがイランに対して圧倒的に優位な現状を鑑みると、戦争の長期化・激化によるアメリカへのダメージは限定的と見られます。原油価格上昇によるインフレの影響で株価上昇基調が予想されますが、価格の乱高下を繰り返すという状況は避けられないでしょう。
【資産運用戦略のポイント】
投資割合を増やす:インフレ環境下において、株式は強い資産といえます。そのため、通常よりも投資の割合を増やすことが基本戦略となります。
積立投資(ドルコスト平均法)を活用する:値動きが激しい局面では、一括投資よりも数ヶ月〜1年程度かけて分散しながら定期購入し、取得単価を平均化することが重要です。
③ 米ドル債券
【影響】
利回り上昇:米ドル債券投資への影響は、米国債や社債の利回り上昇が考えられます。戦争前では米国10年国債利回りは4%前後で推移していましたが、インフレ懸念の高まりを受けて0.3%〜0.4%上昇し、現在は4.3%〜4.4%程度で推移しています。戦争が長期化・激化すれば、この高水準がしばらく継続するか、あるいはさらに上昇する可能性があります。
【資産運用戦略のポイント】
投資チャンス継続:利回り高水準が当面継続すると予想されるため、今の利回りで投資できる機会がしばらく続く見通しです。戦争に突入する前ではアメリカの政策金利は下がっていく見通しもありましたが、この戦争により国債利回りは上昇し、その水準が当面維持されると見られるため、債券投資のタイミングとしてはチャンスが継続すると考えられます。
これまでは、米ドル債券に投資予定の方は「利回りが下がる前に早く投資しよう」というスタンスでしたが、今回の戦争でその前提は変わり、2027年まで投資チャンスは続くものと見られます。国内不動産の場合はその逆で、価格が上昇する可能性が高いため、投資のタイミングを早めた方がいいですが、債券の場合は、焦らずじっくりと投資タイミングを計ることができる資産ではないかと考えています。
④ ヘッジファンド
ヘッジファンドとは、空売りや鞘取り(アービトラージ)戦略などの多様な手法を駆使して運用する投資ファンドです。多くの富裕層が資産の一部として活用しています。
【影響】
収益機会の増加:資産ごとの値動きが激しい局面で、収益機会が拡大します。原油が1ヶ月で約2倍近くになり、株式も乱高下するような環境は、ヘッジファンドにとっては追い風となるため、基本的にはプラスに影響があるファンドの方が多いと予想します。特に、価格差から収益を得る「アービトラージ戦略」や、売りと買いを組み合わせる「ロング・ショート戦略」を採用するファンドにとっては、プラスに働くのではないかと考えられます。
【資産運用戦略のポイント】
投資割合を増やす:不確実性が高い局面で、株式や債券と連動せず、パフォーマンスを発揮するのがヘッジファンドの強みです。この戦争によって収益機会が増えると予想されるため、ポートフォリオ内の投資割合を高めることを基本戦略として検討してよいでしょう。
⑤ 外貨/円(為替)
ここでは、外貨と円の考え方をお伝えします。
【影響】
外貨高・円安傾向:基本的には外貨高・円安の流れが強いと予想します。かつては「有事の円買い」といわれ、紛争時に円が安全資産として買われる時代もありました。しかし近年は、その動きが見られなくなりました。日本は資源・食料品の多くを輸入に頼っており、原油や石油製品の高騰・輸入物価の上昇が国内の物価を押し上げ、円の価値にマイナスの影響があります。今回の戦争による輸入コスト上昇は、外貨高・円安傾向をさらに加速させる可能性があるでしょう。
【資産運用戦略のポイント】
円を減らし外貨を増やす:例えば、円と外貨の比率が50:50の場合、円を減らして外貨比率を60%〜70%程度に引き上げることを検討するとよいでしょう。紛争を踏まえたうえでは、これが有効な戦略といえます。
ここまで見てきて、「結局、全ての資産に投資すべきなのか」と思われるかもしれません。実はその通りです。
紛争・戦争時の最大の問題は、原油価格の上昇を発端にした全般的な物価上昇です。これにより年間の物価上昇率が2%~3%から4%~5%にまで達すると、資産運用をせずに預金だけの場合、実質的に毎年4%~5%ずつ資産価値が目減りしていきます。リスクに晒された状態では、ジリ貧となるのが最も大きなリスクになっているわけです。
このような局面で、今回ご紹介した資産クラスに適切に分散投資すれば、物価上昇率を超えてさらに資産が成長することも期待できるでしょう。「リスクを取らなかった人」と「リスクを取って挑戦した人」との差がかなり大きくなるフェーズにあると考えられます。この戦争を踏まえて、富裕層は資産運用を再検証する必要があるのではないでしょうか。
まとめ
最後に、今回のテーマである「イラン戦争で激変する富裕層の資産運用戦略」を4つにまとめます。
ポイント1)インフレ再燃で「持つ者」と「持たざる者」の差が急拡大
中東産油国絡みの紛争・戦争による最大の影響は、原油価格上昇を起点とした全体的な物価上昇、すなわちインフレの再燃です。このインフレ局面では、何もリスクを取らずに運用しない人は、実質的に資産価値を失ってしまいます。一方、不動産・株式・ヘッジファンド・外貨といった資産に分散投資した人は、物価上昇に資産価値がついていくどころか、それを上回る資産成長も期待できるかもしれません。
実際に2022年のロシア・ウクライナ紛争後の数年間で、まさにこの「投資していた人とそうでない人の差」は大きく開きました。今回もその既視感を強く感じており、同じ構図が繰り返される可能性は十分にあります。つまり、「リスクを取らないこと自体がリスクである」というスタンスで資産配分を根本から見直すことが不可欠といえるでしょう。
ポイント2)国内不動産は上昇可能性高く早期投資がオススメ
今回の戦争において最も大きな影響を受ける資産クラスの一つが、国内不動産です。ナフサの輸入制限に伴う建築コストの急騰は、ロシア・ウクライナ紛争時以上のインパクトをもたらす可能性があります。国内不動産への投資を検討されている方は、タイミングを可能な限り早める決断が合理的といえます。
「2026年中にいい物件があれば」「2027年までを見据えて」とお考えの方も多いかと思いますが、そのタイミングを待っている間に購入価格が上昇してしまうリスクは極めて現実的です。すでに不動産新築価格への影響が出始めている可能性が高いため、早期投資を検討することが現状の最適解といえるでしょう。
ポイント3)米債は利回り上昇で投資チャンス継続の可能性
これまでは「アメリカの政策金利の低下とともに債券利回りも低下していく」という見通しが一般的でした。しかし、この流れは変わりそうです。今回の戦争によってインフレ懸念が再燃し、実際に米債利回りはかなり上昇しています。
国内不動産とは対照的に、戦争が長期化・激化すれば、米ドル債券の高利回り水準はさらに続く可能性が高く、「焦って投資タイミングを早める必要はなくなった」「投資できるチャンスの期間が延びた」と捉えることができます。今後、投資を検討される方は、利回りが高い条件で投資できるタイミングをじっくり見極めるとよいでしょう。
ポイント4)外貨・株式・ヘッジファンドも投資の好機
外貨高・円安傾向、インフレによる株価上昇、ヘッジファンドの収益機会増といった要素を考慮すると、これらの資産への投資タイミングとしては好機になる可能性が高いと考えられます。
本日は「イラン戦争で激変する富裕層の資産運用戦略」という内容でお届けさせていただきました。
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