目次
はじめに
皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
本日のテーマは、「資産管理会社を作った方がいい医師と作らなくていい医師」です。これから資産運用を始めたいという医師の先生からご相談いただくときに、必ずといっていいほどセットで聞かれるのが、今回のタイトルの資産管理会社についてです。自分は資産管理会社を作った方がいいのか、作らない方がいいのか、このご相談をいただくことが非常に多いです。それほど悩んでいる方や検討されている先生が多いということかと思います。
資産管理会社を作った方がいいか、作らない方がいいかを判断する際は、かなり厳密にその方の収入状況や資産状況や税務面を見なければなりません。以前から、簡単にご自身でチェックができるものはないか、これに当てはまっていたら資産管理会社を作った方がよくて、当てはまらなかったら作らない方がいいというような判断ができるツールがあったらいいと思っていました。そこで今回は、医師の先生がご自身で判断できるようなチェックリストを作りました。それを基に、簡単に説明させていただきますので、ご参考にしていただければと思います。
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医師の資産管理会社設立チェックリスト
病院に行くと、チェックリスト(問診票)の記入を求められますよね。これに当てはまっていると「あなたは痛風の疑いがあります」「何の数値が悪いです」そのような病気の診断リストに似ているかと思います。医師の先生用の資産管理会社を作った方がよいかどうかの判断基準になるようなリストがこちらです。一つずつ見ていきましょう。
質問は少なく、No.1~No.6までの6つのみです。全て「Yes」か「No」で答えていただく形になっています。Yesの数で作った方がよいかを判断していきますので、Yesが多ければ多いほど作った方がよいということになります。
No.1)年収2000万円以上ですか?
医師の先生で年収2,000万円以上の方もいらっしゃいますし、2,000万円以上でない方もいらっしゃると思います。個人の収入が高いからこそ、資産管理会社を作って運用する発想になるのです。そもそもご自身の収入が少ないのであれば、個人で運用した方がよいでしょう。個人の年収が2,000万円以上ある方は、これ以上キャッシュフローやインカムゲインを増やすと税金が高くなってしまいます。所得を増やしても仕方がないので、資産管理会社を作った方がよいというのが、資産会社を作る自然の発想になります。
No. 2)運用可能な資産は2億円以上ありますか?
資産管理会社を作るにも維持するにも、当然コストがかかります。そのコストを考えても、資産管理会社を持った方がいいと思えるほどの運用資産があるかどうかという話です。例えば、5,000万円だけの運用だとすると、正直、資産管理会社はコスト倒れになってしまうかもしれません。手間などを考えるとマイナスになる可能性が高いのです。1億円でも微妙です。自信を持って資産管理会社があった方がいいといえる基準は、2億円以上かと思います。ですから2億円以上とさせていただきました。
No. 3)1億円以上の収益不動産に投資する予定はありますか?
こちらは収益不動産なので、投資して賃料収入を得るという投資の仕方の不動産を保有したいかどうかという質問です。さらに、金額は1億円以上ということなので、区分マンションであれば5〜6部屋を保有、あるいは一棟不動産でアパートであれば1億数千万円〜2億円程度、RC造であれば3億円〜5億円の物件になります。そのように1億円以上の不動産に投資するかどうかが、資産管理会社を作るときの判断基準になっています。
1億円以上の不動産を個人で購入したとすると、その不動産も基本的には利益が発生して、収入が高いであろう医師の先生の所得に不動産利益が乗ってきます。日本は累進課税なので、所得が増えれば増えるほど税率が高くなるので、税金的にかなり負担が重くなってしまいます。ですから、それなりの金額の不動産に投資するのであれば、資産管理会社を作って投資した方がよいという発想になりやすいわけです。
では、これが1億円以上ではなく、2,000万円や3,000万円ほどの不動産を1つ保有する場合はどうでしょうか。この場合、資産管理会社を作るとコスト倒れになるので、税率は少し高くなりますが、個人で持った方がよいでしょう。ですから、1億円以上であれば、資産管理会社を作って一気に投資した方がいいという判断になります。
No. 4)相続対策をしたいですか?
これも人によって答えは分かれると思います。そもそもお子様がいない医師の先生は必要ないと思われるかもしれませんし、お子様がいても考えていない方もいらっしゃいます。特にお若い先生の場合は、そう考える方もいらっしゃいます。
一方で、ここはしっかり対策したいという先生ももちろんいらっしゃいますし、お子様にも同じように医師になってほしいと考えると、早めに資産を渡していきたいと考える方、自分の病院を継いでほしいので、自分の株を渡していきたいという先生もいらっしゃいます。人それぞれですが、相続対策を考えると、資産管理会社を使うことも結構多くなるので、ここが判断基準になるわけです。
個人で資産を運用していくと、ご自身ベースで資産が増えていくので、亡くなるときは、今よりもさらに資産背景が大きくなり、最終的な相続の税金などがかなり大きくなってしまいます。しかし、資産管理会社を作ってお子様が株主になって運用していけば、資産が増えた分に関しては、ご自身ではなくお子様ベースで資産が増えていくことになるので、資産管理会社を作って運用することによって、中長期的には相続対策になっているわけです。相続対策をしたい方であれば、資産管理会社を作った方がいいというロジックになります。
No. 5)経費を500万円以上使用する可能性はありますか?
資産管理会社を作り、その資産管理会社で事業をすると、当然経費が発生します。さらに、その資産管理会社で運用して利益が残ってしまうと、最終的には税金がかかります。資産管理会社で経費が発生するのであれば、運用利益と経費を通算することになり、税金を抑えることができます。そのため、経費をどれぐらい使うのかということも、資産管理会社を作った方がいいかどうかの判断基準になるわけです。500万円〜1,000万円ほど経費を使う予定がある方は、資産管理会社を作っていい可能性が高くなるでしょう。
No. 6)開業医で個人or法人の税前利益は毎年1億円以上ですか?
医師の中でも開業医の先生で、個人開業でも医療法人でも結構ですが、税引前で1億円以上利益が残っているかどうか、かなり儲かっている開業医の先生かどうかという質問です。勤務医の先生に関しては、Noという回答でいいと思いますが、開業医の先生でたくさん利益が残っている方はYesになります。
クリニックや医療法人の経営は非常に安定していることが多いので、おそらく、今年1億円の利益が出ていれば、来年・再来年も1億円以上の利益が計上され続ける可能性が高いでしょう。これぐらい利益が出ているのであれば、おそらく10年・20年・30年後にご自身が亡くなるときには、かなりの資産背景になっていて、最終的な相続対策が必要になります。ですから、利益がたくさん出ているような開業医の先生の場合は、早く資産管理会社を作って有効活用した方がいい可能性が高いわけです。
診断結果
皆さん、ご自身でチェックしていただいて、何個Yesがあったでしょうか。診断結果について簡単にお伝えします。
チェックリストの診断で、Yesが0、つまり全部Noである場合、資産管理会社を作る必要は全くないといえます。
チェックリストのYesが1〜2個の場合、必要ない可能性の方が高いと思います。作らない方がいい可能性が高いと判断します。
チェックリストのYesが3〜4個の場合、おそらく作った方がいい可能性の方が高いでしょう。微妙なところですが、作らないよりは作った方がいい可能性が高いといえます。
チェックリストのYesが5〜6個の場合、ほぼ作った方がいい可能性が高いと思います。作った方がいいと太鼓判を押せる可能性は非常に高いです。
この結果は、もちろんその方によって全然違います。ものすごく相続対策したい方や、運用可能資産が10億円以上、20億円以上ある方、開業医の先生で毎年5億円も利益が出ている方などは、1個当てはまっているだけでも作った方がいい可能性が高いです。つまり、一概にはいえないわけです。ただ一般的には、開業医の先生や医師の先生の場合、このようなチェックリストでYesがこのような数であれば、お伝えしたような判断基準で作るかどうかを考えてもよいのではないでしょうか。このチェックリストでYesが3個以上当てはまっている先生に関しては、資産管理会社を作った方がよいかどうかを、一度、専門家にご相談していただくのがよいと思います。
本日は「資産管理会社を作った方がいい医師と作らなくていい医師」という内容でお届けさせていただきました。