目次
はじめに
皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
本日のテーマは、「ドラマで話題の『プライベートバンカー』が富裕層に教えていること」です。皆さんご存知かどうかわかりませんが、2025年1月にテレビ朝日系で『プライベートバンカー』というタイトルのドラマが毎週木曜日21時に放送されています。このプライベートバンカーは、富裕層の方の資産運用をお手伝いすることがメインの仕事です。私自身も元々金融機関でプライベートバンカーを十数年やってから独立し、今のウェルス・パートナーという会社をやっています。私がプライベートバンカーをずっとやってきたということで、お客様から、「プライベートバンカーはどういう仕事なのか」「お客様とどのような関係性なのか」「どのような手伝いをするのか」などと聞かれることがあります。
そこで今回は、ドラマで話題になっていることもあるので、プライベートバンカーが富裕層の方に本当に教えていることはどのようなことなのかをお伝えできればと思います。
▼今回の内容はYouTubeでもご覧いただけます
プライベートバンカーが富裕層の方に本当に教えている5つのこと
それでは、プライベートバンカーが富裕層に教えていることを早速お伝えします。ここでお伝えする内容は、あくまで私が金融機関にいたときに、富裕層の方の資産運用をお手伝いし、アドバイスしてきた私の経験や、あるいは、知り合いや同僚など私の周りのプライベートバンカーのお客様との付き合い方など、私だけの経験に基づいたプライベートバンカーのイメージをお伝えすることになりますので、その点をご留意いただければと思います。
超富裕層向け金融資産カテゴリーにおける全知識
プライベートバンカーは、個人の金融資産運用のアドバイスの中において、お客様としては、おそらく最高峰にいる存在、超富裕層が対象です。保有純資産の分類で、一般層・準富裕層・富裕層などの一番上にある、金融資産5億円以上や10億円以上を持っているといわれる超富裕層の方のためだけに金融資産を提案する仕事をしています。ですから、金融資産というカテゴリーにおいては、当然詳しくないといけないわけです。金融資産における知識はほぼ持っているプライベートバンカーが多いと思います。
私自身も金融資産に詳しいという自負はもちろんありますし、私の周りでも金融資産に詳しくないプライベートバンカーはほとんどいませんでした。他の金融機関の営業マンや証券マン、銀行マン、保険会社の人と比べても、超富裕層向けの金融商品というカテゴリーにおいては、一番といっていいほど詳しいのではないでしょうか。
具体的な資産クラスに関しては、個別の株や債券は当たり前ですし、お金を集めて投資するファンドにおいても、普通のファンド、インデックスファンド、ETF、アクティブファンド、ヘッジファンド、PEファンド、ベンチャー企業に投資するVCファンドなど、さまざまなファンドの知識を有しています。
また、超富裕層向けの場合は、その他のデリバティブといわれる複雑な金融の仕組みを使うようなオーダーメイド商品も知らないと、緻密な提案まではできないでしょう。この超富裕層向けの金融資産というカテゴリーにおいては、ほとんどのプライベートバンカーは豊富な知識を持っており、それを富裕層の方にお伝えしているプライベートバンカーが多いのではないかと思います。
有価証券担保ローンなど借入の知識
プライベートバンカーは銀行員です。ですから、借入の知識も豊富で、アドバイスすることが多いと思います。特にプライベートバンクは、株や債券を担保に取ってお金を貸す有価証券担保ローンを目的にしている富裕層の方が非常に多いです。ここがプライベートバンクの唯一の強みともいえるので、有価証券担保ローンをはじめとしたあらゆる借入の知識を備え、富裕層の方に有用な借入の仕方、ローンの仕組みなどを伝える方が多いのではないでしょうか。
富裕層・会社オーナー向け相続・事業承継対策
富裕層の方の場合、資産運用や金融商品や借入という、いわゆる資産運用に関することだけでなく、相続や事業承継にお悩みの方が多いです。例えば、「相続税を減らす」「子供間で相続争いにならないように対策を講じる」「会社経営しているので、事業を速やかに後継者に承継する」「資産管理会社を作る」「組織再編のために資産管理会社と事業会社を分ける・合併する」「自社株が資産の大半なので、自社株対策をする」などの相談も受けます。
また、人によっては公益財団を作って、そこに財産を寄付して相続財産を減らすなど、そのような相続や事業承継の対策をいろいろと考えて実行する方が多いと思います。ただし、そのようなことを提案するのは、一部のプライベートバンカーでしょう。プライベートバンクという会社の中では、このような提案をしているバンカーは比較的多くいるのではないかと思います。
私も、新卒で入った日興証券のプライベートバンク部門で、このような相続や事業承継対策を、税理士や専門の方とチームを組んで一緒に提案してきました。そのような提案をしているプライベートバンカーが比較的多く、実際に現在も行われているのではないかと思います。
創業家ファミリー憲章の作成と更新
超富裕層に分類される方々は、有名な会社の創業一族であることが多いです。ですから、創業者の子供・孫・ひ孫など、創業者ご自身だけの資産にとどまらず、創業家全体で資産を捉えることが非常に多いです。つまり、創業家の資産としてどう考えるかということや、ポリシーが大事だということです。
ファミリーが守るべき理念、価値観、地域社会への貢献、株をどのように承継していくかなど、資産運用のもっと手前にあるファミリーとしてのルールを作り、資産を創業者から子供、孫、ひ孫と後世に引き継いでいくわけです。そのような「ファミリー憲章」を作るお手伝いをします。
また世代によっては、ファミリー憲章を更新しなくてはいけないので、そのようなお手伝いやアドバイスを行うことも何回もさせていただきました。このようなことを行うプライベートバンカーの方もいるのではないかと思います。
社会貢献・アート・教育・グルメ・車など趣味
ここはかなり多岐にわたるので、全てを伝えられているプライベートバンカーはあまりいないかもしれません。趣味は富裕層の方の人生、嗜好に関わるところになります。ですから、お客様が社会貢献に興味があれば、調べてお伝えしたり、自分の経験を伝えたりします。アートに詳しかったら、一緒に香港に行ったりスイスのアート展に行ったりします。教育面では、お子様が海外のボーディングスクールに行くのに、どのような学校に行ったらいいのか、そもそも行くべきかなどをアドバイスします。
また、グルメなどはさらに個人の趣味の範囲になってきます。有名な店や予約が取りづらい店を予約して一緒に行ったり、車がお好きな方には、スーパーカーを一緒に買って乗ったり、どのようなルートで買ったらいいか教えたりします。このように、趣味の部分、お金を使う部分に関してアドバイスするプライベートバンカーは一定程度いると思います。
富裕層の方は、ご自身が亡くなるまでの間に全部使い切ることができないほど、資産が数十億円以上ある方が多いので、実際にお金の使い方に困っている方がいらっしゃいます。毎年利息などが入ってくるので、スピード感を持って使っていかないと使い切ることはないでしょう。ですから、プライベートバンカーは、このように「使うアドバイス」をすることも比較的多いです。
私の場合、社会貢献やチャリティーに関心の高い富裕層の方が多かったので、ご自身が関心のある音楽やスポーツ分野で公益財団や一般財団などを作り、そこで奨学金制度などの社会貢献活動をすることをアドバイスしました。また、社会貢献活動を永続化するためには財団等の器が必要なので、ある程度資産運用して入ってくるインカムゲインで、毎年その活動ができる仕組みを作ることや、そもそもどのような活動をすればいいのかなど、さまざまなご相談に乗っていました。
また、比較的若い富裕層の方も多くいらっしゃいました。例えば30代や40代の方の場合、お子様がまだ小学生や中学生で、将来的に「ボーディングスクールに行きたい」「大学で海外に行きたい」場合は、どこの国がいいというアドバイスをしたこともあります。スイスのプライベートバンクにいたときは、「スイスはどうか」「具体的に紹介してもらえないか」などの相談に乗らせていただきました。
この点は、その人によって関心が全く異なります。特に関心が高い部分に対して、プライベートバンカーは最初は無知であっても、教えてもらうことによって学び、提案することができるようになり、コミュニケーションが取れるようになります。全てに詳しいプライベートバンカーは少ないかもしれませんが、お客様ごとに興味のある分野を一緒に深掘りしていくことによって、プライベートバンカーもいろいろな分野に詳しくなり、お金を使うことに関して積極的に提案できるようになるのです。
まとめ
以上のように、私の独断と偏見で、プライベートバンカーが富裕層の方にお伝えしていることを5つご紹介させていただきました。プライベートバンカーによってお伝えしている範囲は全く違うと思います。5つのうち、上から順に指南することが多いと思います。
一番上の金融資産における知識は、全てのプライベートバンカーが当然伝えていることです。2つ目の有価証券担保ローンも比較的お伝えしている方が多く、3つ目以降はやっていない方の方が多いと思います。相続対策や事業承継対策に詳しいプライベートバンカーであれば、提案している方もいるでしょう。創業家のファミリー憲章までいくと、よほどお客様と仲がよく、信頼されていないと任されたり相談されたりすることは少ないです。4つ目以下は数としてはかなり少なく、全体の数%~5%くらいのプライベートバンカーしか実践していないでしょう。
本日は「ドラマで話題の『プライベートバンカー』が富裕層に教えていること」という内容でお届けさせていただきました。

株式会社ウェルス・パートナー
代表取締役 世古口 俊介
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。
2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者1万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
メディア掲載情報:「m3.com」「ZUU online」「MONEY zine」「マネー現代」でコラムを連載中