医療法人でできる資産運用とは?

はじめに

医療法人は厳しいルールがあるため、医療行為以外の営利目的の事業を行うことができません。

しかし、一定のルールがあるものの、余剰資金を利用して資産運用を行うことが可能です。

それでは、医療法人でできる資産運用とは一体どのようなものなのでしょうか。

この記事では医療法人に適した資産運用の種類や具体的な方法やポイントまで詳しく解説します。この記事を読むことで、医療法人としてどのような資産運用が可能で効果的かなど、法人の資産運用をお考えの方の一助になれば幸いです。

医療法人の資産運用とは

医療法人は、医療行為を行うことを目的として設立される法人です。このため、医療行為以外の営利目的の事業を行うことができません。

しかし、保有資産の運用ができないわけではありません。医療法人の有価証券保有に関しては法規制がないためです。

厚生労働省はモデル定款の中で認定医療法人の資産について、次のように定めています。

「資産のうち現金は、医業経営の実施のため確実な銀行又は信託会社に預け入れ若しくは信託し、又は国公債若しくは確実な有価証券に換え保管する」

このため、上記内容をもとに資産運用に関する定款を定めている法人が多くあります。

ここで注目したいのが、「国公債若しくは確実な有価証券に換え保管する」という部分です。

銀行や信託会社以外の実際に運用できる手段が「国公債若しくは確実な有価証券」に限られるということです。

では、医療法人では実際にどのような資産運用が可能なのか、考えてみましょう。

医療法人が可能な資産運用の種類とは

モデル定款をみると、医療法人はかなり手堅い運用に徹する必要があり、運用可能な資産が限られています。

ここでもう一度モデル定款の内容を確認して、どんな資産で運用できるのか考えてみましょう。

「資産のうち現金は、医業経営の実施のため確実な銀行又は信託会社に預け入れ若しくは信託し、又は国公債若しくは確実な有価証券に換え保管する」

 

この通り、実際に運用する手段としては「国公債若しくは確実な有価証券」に限られることが分かります。

このうち、「国公債」とは日本国債と考えてよいでしょう。

日本国債の信用力を計る信用格付け(S&P)は、A+です。このため、日本国債の格付けA+以上の有価証券であれば、医療法人の資産運用に活用できる可能性が高いといえるでしょう。

格付けA+以上の債券ということであればAA-の米国債や、A+以上の高格付け普通社債など、さまざまな債券があります。

米ドル債券に関しては為替リスクなどを理由に問題視される可能性もあると考えられますが、これは医療法人、監督官庁、自治体などの解釈次第となります。

ただし、「日本国債より高格付け」という点で考えれば、米国債や高格付け普通社債は、医療法人の運用資産として適していると考えられます。

続いて、医療法人で資産運用可能な資産と考えられる米国債について解説します。

米国債とは?

米国債とは、米国政府が発行する債券です。先述のとおり格付けが日本国債を上回っており、安全性と高い利回りから魅力の大きい投資対象といえます。

米国債の種類

米国債は、利息の受け取り方によって「利付債」「割引債」の2つの種類に分けられます。

利付債とは償還までの間、決まった利率で定期的に利息が支払われる債券のことです。

例えば1,000万円投資した場合、毎年30万円、40万円といった形で利息が支払われます。利付債のおもな収益源は利息ですが、条件によってはキャピタルゲイン(値上がり益)も得られることがあります。

一方、割引債とは、利息相当額が割り引いて販売され、満期時に額面金額が支払われる債券です。

例えば80ドルで発行されて償還時には100ドルで返ってくるという形で、キャピタルゲインが得られますが、利息は支払われません。

利付債は定期的に利息収入を得たい方、割引債は定期的な利息収入は不要なものの、資産を増やしたい方に向いています。

米国債の種類(利付債・割引債)については次の動画で紹介していますので、ぜひ併せてご覧下さい。

米国債のリスクとは?

堅実な資産運用が求められる医療法人で気になるのが、やはり米国債のリスクでしょう。

米国債は安全な資産といわれていますが、次のリスクも存在するので覚えておくべきでしょう。

【米国債のリスク】

  • 為替変動リスク
  • 信用リスク
  • 価格変動リスク

為替リスク

円高に振れた場合に、為替差損が生じるリスクです。

米国債は、米ドルで利払いと償還が行われるため、為替リスクを避けることはできません。

ただし、米国債は比較的利回りが高いため、仮に円高が進んだとしても利息によって為替のマイナスを打ち消す効果が見込めます

最近、円安にもかかわらず富裕層の方がこぞって米国債へ投資する理由は、まさにこの「金利のクッション効果」があるためと考えられます。

為替が米国債券(米ドル債券)に与える影響は次の動画で解説していますので、ぜひご覧下さい。

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信用リスク

債券発行体の財務状況によって、利息や償還金の一部またはすべてが支払い不能(デフォルト)となるリスクのことです。

米国債は安全性の高い資産ですが、それでも信用リスクがゼロというわけではありません。

金利変動リスク

債券投資では、市場金利が上昇すると高い金利で発行される新しい債券が有利となるため、既存の債券は価格が下がります。

通常、債券は満期まで保有すると額面額で償還されますが、中途で換金する場合は時価での売却となるため、金利上昇時には元本割れとなる可能性があるので注意が必要です。

米国債券ポートフォリオ

続いて、医療法人の資産運用に向いた米国債券のポートフォリオ例をみてみましょう。

この例では、1億円を2,000万円ずつ、5銘柄に分散し、すべて米国債に投資を行っています。

ご覧のとおり、債券の発行体格付けはAA+です。日本国債の格付けはA+なので、米国債は3段階高い格付けとなっており、非常に安定した高格付け債券ポートフォリオといえます。

このポートフォリオの債券の平均残存年数は19.3年です。残存年数の長い銘柄も入っていますが、これは現在の高い利回りで長期間金利を固定するためです。

ただし、米国債は流動性が高く容易に売却できるため、事業で一時的に資金が必要となった場合でも問題ありません。

なお、このポートフォリオ設計時では平均利回り4.1%を実現できていますが、2024年秋以降はアメリカで利下げが開始される可能性が高く、米国債の利回りも低下が予想されています。

このため、今後はこれまでと同等の運用成果を目指すには、何らかの工夫が必要となるでしょう。

このような局面において考えられる手段の一つが「証券担保ローン」を活用した米ドル債券投資です。

証券担保ローンを活用した米国債券投資

証券担保ローンとは、保有する有価証券(今回の場合は米国債)を担保にして借入を行うものです。

下のイラストをご覧下さい。

仮に①の医療法人に3億円の余剰資金(②)があったとします。

この3億円で米国債に投資を行い(③)、同時に金融機関へ担保提供します。

そして、この担保をもとに金融機関から1億円の資金を調達(④)します。

これにより、手元に1億円の現預金が残るため、実質的に2億円を使って3億円の米国債に投資していることになります。

つまり、借入(証券担保ローン)を利用して、米国債のレバレッジ運用が可能ということです。

2億円の資金を使って3億円分の運用成果が得られるということは、投資元本に対する実質的な利回りが向上しているということです。

証券担保ローンを活用した米国債券投資については次の動画で解説していますので、ぜひ併せてご覧下さい。

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まとめ

医療法人はかなり手堅い資産運用に徹する必要があり、運用可能な資産が限られています。

このため、信用力が高く安定した高利回りが得られる米国債は、魅力的な運用対象といえるでしょう。

ただし、米国債にもいくつかリスクが存在するため、適切な方法で分散投資を行うことが重要です。

私たちウェルス・パートナーでは、これまで多くの医療法人様に資産運用のアドバイスを行って参りました。

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