新規上場会社オーナーの正しい資産運用実例【前半・王道編】

はじめに

皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。

本日のテーマは、「新規上場会社オーナーの正しい資産運用実例【前半・王道編】」です。まずは「上場会社オーナー」と「新規上場会社オーナー」の定義からご説明します。上場会社オーナーとは、スタートアップやベンチャー企業などの創業メンバーや創業社長、早期から会社に加わった社員の方々が保有している株式やストックオプションが、その会社が上場したときに、数億円~数十億円、創業社長であれば数百億円の莫大な資産価値になって富裕層になった方々や、上場会社の株をたくさん保有している方をいいます。

新規上場会社オーナーは、会社が上場して数年以内や上場したばかりの会社のオーナー、その会社の上場株式をたくさん保有しているオーナーのことをいいます。そのような新規上場会社オーナーの方々は、急に株式がたくさん入ってきて資産を持つことになったり、もしくはその会社を売却してキャッシュを得たりするので、資産運用をどのようにすればいいかご相談をいただくことがよくあります。

日本の新興市場、スタートアップ市場の上場に関し、かなり基準が厳しくなっており、また、マザーズ、新興市場の株価が冴えないこともあり、若干下火ではあります。しかし2024年も、創業から10年以内の会社から新規上場する会社で、時価総額1,000億円以上の会社も少しは見受けられます。そのような会社が上場して、その会社の株を1%でも保有していると、株式の価値だけでも10億円の資産状況になり、富裕層が生まれます。

今回は、そのような新規上場会社オーナーの正しい資産運用実例についてご説明します。前編・後編に分かれておりまして、前編の【王道編】では、多くの方が運用している内容を、後編の【覇道編】では、王道から少し外れますが、若干リスクをとる運用方法をご紹介しますので、どちらともご覧いただき、ご参考にしていただければと思います。

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0:15 はじめに
4:01 資産配分(当初)
8:28 資産配分(売却)
9:35 資産配分(再配分)
11:47 再配分の投資効果(リスク分散)
14:12 再配分の投資効果(インカムゲイン)
17:06 まとめ

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ご相談時の資産配分

新規上場会社オーナーの正しい資産運用実例ですので、実際に私たちがお手伝いさせていただいた、上場して間もない会社の上場オーナーの資産運用実例について、資産配分シートを見ながらお伝えしていきます。

ご本人情報は、年齢が30代後半の男性、新規上場会社オーナーの方はこれぐらいの年齢の方が多いです。職業は、新規上場から1年程度かと思いますが、その会社の社員の方で、年収は1,000万円、奥様がいらっしゃいます。

資産配分は、現預金が1,000万円、日本株式が、その上場会社の通常の株式とストックオプションを合わせて6億円あります。実物資産はなく、非常にシンプルです。純資産の合計は6億1,000万円、借入もないので総資産も6億1,000万円です。

金融資産だけなので比率は100%、実物資産比率、外資比率は0%、株式比率が98.4%、債券比率も0%という資産配分の方です。「このような人が本当にいるの?」と思われるかもしれませんが、上場会社オーナーはこのような方が本当に多いです。最初はこのような資産状況なのです。

自社の日本株式、しかも1社の上場株だけに資産の価値が偏っているので、やはりこれではいびつと言わざるを得ません。ですから、この集中している日本の1銘柄の株式6億円の価値を、他の資産クラスに徐々に配分していきながら、資産全体のバランスを整えていくというのが、新規上場会社オーナーの正しい資産配分の考え方かと思います。

この方のご要望は、元々ある6億円の自社株のうち、半分の3億円を売却したいということです。やはり現職でその会社に残る方は、ご本人のモチベーションもあるので、売却しようと思えばできますが、やはりある程度持ち続けたい方もいらっしゃいます。ですから、この方のように半分を売却したいという方は結構多いです。

2つ目のご要望は、資産配分をバランスよく整えたいということです。自社の株式、しかも上場しているのが新興市場の場合、1日で数%株価が動いたり、10%上下したりすることもあります。そうなると、ご自身の資産価値がそれに伴って激しく上下することになるので、当然、不安になります。ですから、そのような状況にならないように、自社の株式だけではなく、バランスよく資産配分することによって、資産の安全性を高めたいというご希望です。

3つ目のご要望は、インカムゲイン、1,000万円の給料と同水準の定期収入を得たいということです。4つ目のご要望は、借入がない状況なので、借入をして投資効率を高めたい、レバレッジをかけたいというご希望です。

このように、上場して1年くらいの上場会社オーナーの状況や資産配分やご要望などを、全て考慮して再配分させていただきました。

資産配分(売却)

次のフェーズとしては、日本株式をご希望通り売却します。

元々あった6億円のうち日本株3億円を売却して、全て3億円キャッシュとして残るかといったら、そういうわけではありません。ほとんど利益であることが多いので、20%が税金になります。現預金が3億円入ってきますが、そのうちの6,000万円は納税に取っておかなければなりません。ですから、現預金としては2億4,000万円増えたということになります。

日本株を売却したことにより、資産配分はこのようになります。日本株式が3億円と現預金が2億5,000万円という資産配分になります。2億5,000万円のうち、1,000万円は元々手元にあり、それは置いておきたいということなので、それを除いた2億4,000万円(日本株売却後、税引き後の金額)をどのように再配分していくか、ご提案させていただきました。

資産配分(再配分)

こちらが再配分した資産配分シートです。

減少させる資産は、円の現預金2億4,000万円、これを使って増加させる資産は次のとおりです。先進国株式が3,000万円、新興国株式が1,000万円、株式資産を4,000万円増やしています。ここに日本株式が入ってないのは、元々日本株1銘柄の自社株を持っていたからです。日本株を増やすと、日本株のリスクを増やすことになるのであまり意味がありません。このような上場会社オーナーの方は、日本株を増やさないのが王道かと思います。

先進国の株や新興国の株も増やしてはいますが、増やしすぎてはいません。3,000万円と1,000万円で、合計4,000万円です。元々日本株の割合が高いので、仮に海外の株式であったとしても、増やしすぎるのは株式全体のウェイトがかなり高くなってしまうので、これぐらいに留めています。それでもまだ株の割合は高いです。

次は先進国債券です。これは主にインカムゲインを得る目的を叶えるために組み込んでいます。先進国債券は1.5億円です。外国REITは1,000万円、これは資産のリスク分散の目的のためです。次に、頭金4,000万円と国内ローン8,000万円を使い、1.2億円の国内不動産に投資します。

現預金2.4億円を使って、このような再配分をさせていただきました。資産全体のバランスは、元々は日本株式だけでしたが、海外の株式や外国の債券、REIT、ご希望であった国内ローンの借入や国内不動産がバランスよく増えています。次は、最初の状態と再配分した後の資産配分のバランスがどのように変わったのかを見ていきましょう。

再配分の投資効果(リスク分散)

こちらが再配分したことによる投資効果です。どれぐらいリスク分散できたのかを、先ほどの資産配分の重要な比率を使って見ていきたいと思います。

レバレッジ比率、純資産に対してどれぐらい借入をしているか、借入の比率ともいいます。最初の状態は100%でした。不動産投資で8,000万円借入することによって、再配分後のレバレッジ比率は114%になり、投資効率は上がっています。次に実物資産の比率は、当初の0%から、再配分したことによって不動産を増やしているので19%まで高まっています。外貨比率は0%が36%になっています。外国の株式や債券を増やしているので、36%まで高まったのです。株式比率は当初98%でしたが、再配分によって66%まで下がっています。それでもまだ高いですが、半分は自社株を残しているので、致し方ないところもあります。最後に債券比率は、当初は0%でしたが、再配分によって29%まで上がっています。

この各重要な比率の変化を見るだけでも、かなりリスク分散ができていると思います。元々は株式比率が98%で、しかもその中の新興市場の株の1社にリスクが集中していたので、借入をして投資効率を高めたり、実物不動産の割合を増やしたり、外貨やその他の株式とか債券に分散したり、資産配分がかなり整い、総じてバランスよくなったといえるでしょう。

再配分後でも株式の割合が高いですが、今後、上場している自社との関わり方や、辞めるタイミングで追加して株式を売却することや、在籍しながら徐々に売却することをしながら、また他の資産に分散しながら、時間をかけて最適なバランスを整えていくというのが、上場会社オーナーの場合は重要ではないかと思います。

再配分の投資効果(インカムゲイン)

2つ目の再配分の投資効果、インカムゲインです。ご希望であった投資による定期収入、インカムゲインがどのように得られるか少し詳しくお話ししましょう。

金融資産

まず、金融資産からのインカムゲイン収入です。先進国の債券の利金が5%で運用できるタイミングでしたので、1.5億円の投資金額× 5%で考えると、利回りベースで年間750万円のインカムゲイン収入になります。外国REITも配当があるので、1,000万円の投資金額×4%で年間40万円です。新興国株式はありませんが、先進国株式も配当利回りが1%出るので、3,000万円投資して年間で30万円になります。このように債券利金、外国REIT、先進国株式を合わせて金融資産からのインカムゲイン収入は、年間で820万円得られることが期待できます。

国内不動産

次は国内不動産からのインカムゲイン収入です。1.2億円の国内不動産に8,000万円の借入で投資しています。実質賃料収入とは、購入した物件に住んでいる方からの賃料収入から、管理費や修繕費など諸々のコストを差し引いた後の純粋な賃料収入をいいます。1.2億円×表面利回り6%×管理費などを差し引いたものが80%、これを計算すると、年間で576万円になります。不動産のインカムゲインを考える際、借入があるときは、ここから不動産借入の元本と利息の返済を差し引きます。そうすると年間のキャッシュフローは、576万円の実質賃料から元利返済331万円を引いて、年間で245万円になります。これが、国内不動産投資の手残りのインカムゲイン収入です。

先ほどの金融資産からのインカムゲイン収入と国内不動産からのインカムゲイン収入を足すと、合計のキャッシュフローは税引き前で約1,065万円になります。この方の年間の給料1,000万円と同水準のインカムゲイン、定期収入を得たいというご希望は、概ね叶えられるということがわかると思います。

まとめ

今回のテーマである「新規上場会社オーナーの正しい資産運用実例【前半・王道編】」をまとめました。ポイントは4つです。

ポイント1)王道は自社株を売却して金融・実物に幅広く分散

保有している自社株を売却して税金を引いた後、金融・実物資産に幅広くリスク分散していくのが、新規上場会社オーナーの王道の資産運用かと思います。

ポイント2)自社株を残すなら金融は主に外貨資産へ投資

自社株を全て売却する方もいらっしゃいますが、今回の事例のようにある程度残す方もかなり多いです。特に現職の方の場合、自社の株式を残した方が、ご自身の会社の業績を上げるというモチベーションにつながることが多いです。そのような方の場合は、売却代金の金融資産の運用に関しては、主に外貨資産へ投資するのがよろしいと思います。

今回の実例もそうでしたが、売却代金の金融資産の運用は、円建ての資産はほとんど海外の株式や債券になっていました。やはり自社の株式が残ると、その価値がまだまだ大きいことが多いので、円資産が圧倒的に多くなります。そこで売却代金をさらに円資産に投資してしまうと、円資産がまた増えてしまいますし、外貨比率が増えなくなります。ですから、自社株がある場合は、残りの売却代金に関しては、外貨資産に投資することによって外貨比率を高めることをした方がよいと考えます。

ポイント3)上場による信用力向上で不動産投資の借入有利に

不動産投資に関してですが、新規上場会社オーナーという前提ですので、会社が上場していることによって、上場前よりもかなり信用力が向上しています。お勤めの方や役員の方、社長の方の銀行からの信用力が向上しているので、不動産投資をする場合は借入が有利にできるようになっています。ですから、このような不動産投資を行うときには、有利な条件で不動産投資できる可能性が高いので、今回の実例のようにご検討される方が多いのかと思います。

ポイント4)主幹事証券ではない本当のアドバイザーを探す

最後はアドバイザーについてです。新規上場オーナーの方の場合、上場するときにメインでお手伝いしてくれた証券会社、主幹事証券に自社の株式を預けていることが多いです。そのまま主幹事証券で運用される方がいらっしゃいますが、本当にご自身が求めて、アドバイザーとして最適であると思って運用しているのでしょうか。必ずしもそうではなく、元々この主幹事証券に預けている流れでお願いしているケースがあります。その主幹事証券がご自身にとって最適なアドバイザーである可能性はそれほど高くはないと思います。

証券会社や私たちのようなIFAなど、世の中にアドバイザーは非常にたくさん存在するので、たまたま預けていた主幹事証券でそのまま何も考えず運用するのではなく、本当にご自身に合っているアドバイザーを探すのが大事かと思います。

命や家族の次に大事なのがご自身の資産かと思うので、そのような資産を任せるのにふさわしいアドバイザーの方を、少し苦労してでもしっかり探すというのが資産運用においてやはり肝要かと思います。

本日は「新規上場会社オーナーの正しい資産運用実例【前半・王道編】」という内容でお届けさせていただきました。

今回の内容については「世古口俊介の資産運用アカデミー」でもご視聴いただけます。

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