皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
本日のテーマは、「富裕層が金融危機に備えて保有する5つの資産例」をお届けします。今年2023年は、アメリカの中堅銀行や地銀が破たんしたり、スイスの大手銀行が経営不安に陥ったり、金融危機とまではいかないかもしれませんが、まさに金融不安真っ只中という状況です。これが最終的には2008年のリーマンショック当時のような金融危機にまで発展するかどうかは分かりませんが、富裕層の方々は発展すると想定して、そういった金融危機に備えられるような資産に投資したり保有したりしています。
私の今までの経験や、富裕層の方々とお話ししていく中で、こういった金融危機に備えて、今、富裕層の方が保有している5つの資産例をお伝えできればと思います。
5つの資産例
金融危機ということで、やはり一番イメージできるのは2008年のリーマンショックかと思いますので、資産例を発表するとともに、2008年当時のその資産クラスのパフォーマンスも同時にお伝えしていきます。
ただ、2008年当時はあらゆる資産が大暴落しましたので、発表する資産の価格のパフォーマンスはそれほど大きくプラスではありません。基本的には他の資産と比較して、相対的にその資産が上がっているか下がっているかが大事になります。2008年は株式などのリスクが高い資産は軒並み40~50%ほど下落し、アメリカの株式は38%、新興国の株式は54%も下落しました。低格付け債と言われる資産はマイナス24%、債券でもその程度下落した年でした。
そのように大きく下落した資産と比較すると、これから発表する資産はそれほど大きく下落していない資産であるということが分かります。富裕層の方が金融危機に備えて保有する資産ということで、パフォーマンスもお伝えさせて頂きますので、それを前提にして頂ければと思います。
ヘッジファンド(市場中立型)
1つ目は市場中立型のヘッジファンドです。株を買っているだけで世の中の株式市場が上昇したら上昇する、下がったら下がるのは市場中立型ではありません。株が上がっても下がっても影響を受けずに運用することを目指すという戦略を取っているヘッジファンドという意味になりますので、ご留意頂ければと思います。
戦略の名前で言うと、例えばアービトラージ、さやを取る戦略です。2つの資産の価格が離れている時に片方を空売りしてもう片方を買うような戦略をさや取り戦略と言います。それ以外には、株式のロング・ショートでも、株を買う方を100、売る方も100とすると、プラスマイナスゼロになります。世の中の株式市場に対しては中立の動きになるので、株が大きく下がってもパフォーマンスもそれほど下がらずに利益を出すことができます。このように市場中立型の戦略を取ってパフォーマンスが悪くないファンドは2008年当時もありましたので、このような戦略は良いと思います。
ヘッジファンド全体の指数で言うと、実は2008年も大きく下落しており、マイナス20%程度になっています。かなり下落はしましたが、先程からお伝えしている市場中立型のアービトラージやロング・ショート戦略のようなヘッジファンドの場合、プラス5~10%、大きく利益を出しているようなファンドではプラス20%のところもありましたので、ファンドによっては非常に良いパフォーマンスであると、むしろ大幅なプラス、このような下落を投資機会にしているようなヘッジファンドもあるわけです。しかし、金融危機の時に、それをチャンスにして上昇していくファンドを選別すること自体が難しいかもしれません。
投資適格債券(格付けBBB以上)
2つ目は投資適格債券です。米ドル建ての債券をイメージしていますが、格付けがBBB以上で倒産する確率が非常に低いというイメージです。2008年に格付けが低い債券はマイナス24%程度大幅に下落していますが、このように格付けがBBB以上あるような高格付けの債券の場合、2008年当時の投資適格債に投資しているETFの価格ベースで言うと、1年間にマイナス3.4%ぐらいしか下落していません。最初にお伝えした株式や低格付け債券というような資産に比べると、2008年のような金融危機の時でもマイナス3~4%で済んでいるので、投資適格債券は非常に有望な投資先ということでご紹介させて頂きました。
現預金(キャッシュ)
3つ目は現預金(キャッシュ)です。2008年の金融危機の時は、私も明確に覚えていますが、新聞では「キャッシュ・イズ・キング」という言葉が毎日出るほど現金崇拝の時代だったわけです。現金が一番偉い、キングであると言われるような状況でした。ですから、キャッシュを持っていれば、大きく値下がりしているような株式などの資産に投資できるチャンスもあります。多くの資産が大幅に下落した2008年当時は当然キャッシュなので、パフォーマンスは0のままです。相対的に見ると、現預金は他の資産よりも優れたパフォーマンスを出していることになります。また流動性が一番高く、下落した株式に機動的に投資できるということで紹介させて頂きました。
富裕層の方々は、やはり2022年までよりも2023年に入って現預金(キャッシュ)の割合を多くしておくという動きをされている方が比較的多く見られます。来るべき金融危機に備えて、大きく株式市場、リスク市場が下がった時に機動的に投資できる現金の割合を増やすという投資行動をされていると思います。
米国債
4つ目は米国債です。世界で一番大きな国が発行している国債ですので、やはり金融危機が起きると、当然、皆が守りの姿勢に入る、リスクを取りたくない状況になると、安全性が高い資産として、いの一番に買われるのが米国国債なわけです。2008年当時の米国国債の1年間のパフォーマンスはプラス2%でした。資産クラスベースで言うと、2008年の中で2番目に上昇率が高かったのはこの米国国債です。当然今もその傾向があると思いますので、今年も金融危機のような状況になったとすると、米国国債は当然買われる可能性が高いので、プラスの上昇、パフォーマンスが良くなるチャンスが高いと思います。
金(Gold)
最後は、金(Gold)です。金は、やはり金融危機や戦争、経済ショック、バブル崩壊、ハイパーインフレなどの危機の時は、国家の信用自体が危ういのではないかと、財政などに対する懸念も出てきたりしますので、そのような時にやはり独自の資産として価値を認められている金(ゴールド)が買われる傾向が高いわけです。
2008年当時で言いますと、資産クラス別のパフォーマンスの中で一番上昇したのが金でした。パフォーマンスで言うと1年でプラス4.9%上昇しています。今年2023年の1月から4月末の4ヶ月の金のパフォーマンスは、プラス8%ほど上昇しています。これは、アメリカが金利を下げるというような見通しになってきたことももちろんありますが、やはり現在の金融不安もあるかと思います。金融機関の信用は国家の信用に基づいています。当時のリーマンショックなどを思い出して、金融機関だけでなく国家すら信用できないという懸念が若干ありますので、やはり金で資産を守りたいという動きになって、今年は8%上昇しているわけです。多くの富裕層の方が、今年、来年、もしかしたら起こるのではないかという金融危機に備えて、金(ゴールド)の資産配分の割合を増やしているという状況は間違いないと思います。
まとめ
最後に「富裕層が金融危機に備えて保有する5つの資産例」をおさらいします。
まず1つめは市場中立型のヘッジファンドです。2008年当時のパフォーマンスは、ヘッジファンド全体ではマイナスでしたが、この市場中立型のアービトラージやロング・ショートというような戦略のヘッジファンドはプラス数%~10%程度で運用できていますので、そのようなファンドであれば良いのではないかということです。
2つ目は、格付けがBBB以上の投資適格債券、
3つ目は現預金(キャッシュ)、
4つ目はアメリカ国債、
最後に金(ゴールド)です。
本日は「富裕層が金融危機に備えて保有する5つの資産例」という内容でお届けさせて頂きました。
株式会社ウェルス・パートナー
代表取締役 世古口 俊介
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。
2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者1万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
メディア掲載情報:「m3.com」「ZUU online」「MONEY zine」「マネー現代」でコラムを連載中