【最新実例】5億円の米ドル債券ポートフォリオ設計について解説

皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。

本日のテーマは、「5億円の米ドル債券ポートフォリオ設計【最新実例】」をお届けします。今回は最新実例ということで、実際に私共が最近お手伝いさせて頂きました米ドル債券ポートフォリオの設計例についてご紹介できればと思います。

どういった方がどのようなご要望でどういった投資方針で、この債券ポートフォリオを設計したのかということや、今回は特に、いつもよりも債券の発行体の分散や格付けの分散などの分析を詳細に作らせて頂いておりますので、皆様の今後の米ドル債券投資のご参考にして頂ければと思います。

会社売却資金で債券運用をしたい

まずは、どのようなご要望でご相談いただいたのかを簡単にお伝えします。ポイントは4つです。

会社売却資金での運用

1つ目は、会社売却代金のうち5億円を米ドル債券運用したいというご要望です。会社の売却代金が税引き後十数億円程度あるのですが、そのうち5億円を米ドル債券で運用したいという明確な金額と投資資産クラス、かなり明確な目的を持ったご相談でした。

定期収入(インカムゲイン)が欲しい

2つ目は、これもかなり明確なご希望ですが、前職のご年収の2,000万円を超えるような定期収入(インカムゲイン)が欲しいため、米ドル債券に投資されたいということです。会社を売却し現職でなくなると、その会社から得られる役員報酬などは得られなくなりますので、前職までの年収が基準となり、そこを目指すインカムゲインを会社売却代金で得るということは、よくあるご要望です。

リスクを抑えて運用したい

3つ目も結構よくあるご要望です。会社を売却された方に関しては、売却代金は虎の子のお金になるわけです。現役の方は会社の役員報酬もありますし、会社そのものを持っていますが、会社売却された方は、売却代金以外は何もないので、実は結構無防備な状態になります。またお仕事をされる方は違うかもしれませんが、この方は完全に引退されるので、本当に虎の子のお金となるため、リスクを抑えて運用したいというご希望があります。この方は資産家ではありますが、ご自身のリスク許容度自体も平均よりかなり保守的な方ですので、今回のようなご提案をさせていただくのがいいと感じました。

銀行が発行するような債券の割合は低めにしたい

4つ目は、最近の金融不安が最終的にリーマンショックのような金融危機に発展しないか心配されていましたので、銀行が発行するような債券の割合は低めにしたいというご要望です。最近はこのようなご要望が多いです。

債券投資の方針

このようなご要望を受けて、私たちが米ドル債券ポートフォリオを設計するにあたっての、全体の債券投資の投資方針をご提案をさせて頂きました。4つあります。

発行体の業種・所属国を適切に分散

投資方針の1つ目は、発行体の業種・所属国を適切に分散することです。ポートフォリオで何十銘柄かに投資するのですが、その発行体一つ一つの会社が違うのは大前提です。さらに、その発行体の業種、金融業界なのか保険業界なのかIT業界なのか、その業種を分散し、さらに所属している国も適切に分散するのが投資方針の1つ目です。業種は業種で、全体的な業種にその会社の業績やバランスシートも引っ張られやすくなるわけです。金融業界は金融業界で、厳しい時は全部の会社がそれなりに厳しくなります。所属国でも同じです。日本経済が厳しい時は、日本のどの企業もそれなりに厳しくなるので、やはり業種も所属国もそれなりに分散するのが大事になります。

債券の種類は普通社債

投資方針の2つ目は債券の種類です。債券の種類はいろいろありますが、基本的に今回の投資方針としては普通の社債です。シニア債とも言いますが、その普通社債と、一段階少しリスクが高くてリターンも高い「期限付劣後債」という普通の劣後債です。永久劣後債もありますが、今回は普通の劣後債を中心に選定していきます。この2つがメインで、債券の種類を固めていく投資方針です。

投資適格債に投資をする

投資方針の3つ目は、債券格付けは基本的にBBB以上を中心に選定していくことです。保守的な方なので、基本的には格付けが高い、投資適格債と言われるようなBBB以上の格付けの債券に投資していくのが基本方針で良いと思いました。

年平均の利回りで5%以上を

4つ目が目標の利回りです。債券ポートフォリオ全体の年平均の利回りで5%以上を目標に設定させて頂きました。以上が債券のポートフォリオ設計の投資方針となっています。

米ドル債券ポートフォリオ設計例

これを基に債券の銘柄を選定し、組ませて頂いた債券のポートフォリオが下記の表になります。20銘柄の構成になっております。少し見づらくて恐縮ですが、左から2列目が発行体です。先程お伝えした業種と国です(個別銘柄はお伝えできません)。業種は、自動車、投資会社、保険、石油、通信、銀行、IT会社などいろいろあります。日本、アメリカ、イギリス、フランスなどの国に所属している会社です。


*格付けはS&Pの格付けを記載。S&Pの格付けがなければMoody’sの格付けを記載。
*繰上償還日が設定されている債券は繰上償還までの残存年数を記載。 *利益に対する税金を考慮しておりません。
*利回りや投資成功を保証するものではありません。

債券の種類は、先ほどお伝えしたように、普通社債と期限付劣後債を中心に選定していますが、ポイントで永久劣後債が少し入っているイメージです。満期はありませんが、利回りが高い債券です。

通貨は全て米ドルです。金額は全て2,500万円で20銘柄ありますので、計5億円です。次に、保有割合とありますが、1債券、1銘柄2,500万円ですので、1銘柄がこの債券ポートフォリオに占める割合は5%になります。

残存年数が短い順に上から並べられて、2.4年から28.5年という超長期債を加えられたポートフォリオです。平均の残存年数は11.8年になります。かなり長期運用のご希望の方ですので、債券ポートフォリオの平均残存年数で言うと、比較的長めのポートフォリオを組んでいる形になっています。

債券の格付けは、基本的にはBBB以上の債券で構成されています。中にはA、AA、AAAの債券もあります。この債券ポートフォリオの平均の格付けはBBB+ですので、平均格付けは、かなり高いような部類の格付けの債券ポートフォリオと言えます。

発行体の格付けは、劣後債が多いので発行体格付けの方が高くなるのですが、平均はA-になります。債券格付けでは一段階上がるようなイメージです。

年利回りが一番右で、4%~6%程度の利回りの債券が多いですが、一部の格付けが低い債券は利回りがもう少し高いイメージになっています。この債券ポートフォリオ全体の年平均利回りは5.4%です。以上が債券ポートフォリオの設計例です。

債券ポートフォリオ分析

ポートフォリオ分析ということで、4つの要素に分解して、今回はより詳細に分析して見ていきたいと思います。

業種

1つ目の要素は業種です。投資方針でお伝えしたように、業種もしっかり分散していますが、分かりやすくここで表しています。上から、銀行、保険、IT、通信、石油、自動車、投資とありますが、それぞれその業種が占める割合は、銘柄数と比率がその右側にあります。銀行と保険で25%ずつ、IT企業が20%、通信と石油が10%ずつ、自動車が5%、投資会社が5%という割合になっています。

この方のご希望としては、金融危機が不安であるということでしたので、銀行の割合は比較的少なめにというご要望でしたので、25%までに留めました。このように銀行が発行する債券が基本的に世の中には多いので、必然的に高くなります。何も考えずにポートフォリオを組むと、結構4割、5割程度が銀行の債券になったりしますが、そこは意識的に落として、その部分を保険会社の債券を増やすことで銀行の債券を減らしているイメージです。特定の業種の割合が多いということはないようにしていますが、必然的に金融機関の業種の割合は、銀行と保険を合わせて50%になりますので、比較的多くなりますが、そこは若干仕方ないと思います。残りの50%が事業会社ですので、金融機関と事業会社で50%・50%の割合です。金融機関の中でも銀行と保険で半々になっているという業種の分散になっています。

所属国

2つ目の重要な要素は所属国です。上から銘柄数が多い順に、アメリカが8銘柄で40%、日本が5銘柄で25%、イギリスが4銘柄で20%、フランス、スイス、メキシコが1銘柄ずつで5%という比率になっています。

この所属国の割合をどう考えればいいのかという点ですが、アメリカの割合がかなり多いと思います。ただ、これは致し方ないところもあります。基本的には米ドル建ての債券ですので、当然アメリカの会社が発行している割合が多いわけです。ラインナップを並べると、当然アメリカが発行している会社が圧倒的に多いわけです。また、経済の規模で言うとアメリカが世界でNo.1ですので、世界経済や株式時価総額などで並べると、当然アメリカの割合が多くなって然るべきだと思います。銘柄数ごとに、上から順に経済規模が小さくなっていくイメージです。

アメリカの経済規模が一番大きいので、アメリカの債券の割合が多く、次に日本の5銘柄、25%です。次がイギリスです。残りの3銘柄がその下ぐらいになりますので、比率は5%ずつになっています。このように所属国の分散をしています。これが、極端に日本が50%、60%であったり、フランスが40%、50%であったりしたら、やはり偏り過ぎかと思いますので、この所属国の配分を見る限りは、経済規模に応じて分散されていますし、米ドル建ての債券なのでアメリカが多くて然るべきだと思いますので、この比率は丁度いいと言えると思います。

債券の種類

3つ目はその右側の債券の種類です。普通社債が一番多くて11銘柄で55%、期限付劣後債は6銘柄で30%、永久劣後債が3銘柄で15%ですので、85%が普通の社債と期限付劣後債になっています。投資方針で示した通り、この2債券の種類を中心に選択することになっていますが、永久劣後債が3銘柄だけ入っていて、15%はこういった債券を入れて、全体の債券ポートフォリオの利回りを底上げしているイメージになっています。15%ということで、許容範囲であることは、このお客様との合意の上でご提案させて頂いております。

債券格付け

4つ目が債券格付けです。格付けが高い順に上から並べ、それに該当する銘柄数を入れています。基本的にはBBB以上の債券が17銘柄になっていますので、比率としては85%がBBB以上の投資適格債の債券です。BB以下が3銘柄で15%ということですので、85%以上が投資適格債であれば、かなり高格付けの債券ポートフォリオと言うことができると思います。格付けが若干低くても財務内容が悪くないような債券を入れることによって、全体の利回りの底上げができますので、そういった効果を期待してBBの債券3銘柄は組み込んでいます。

まとめ

「5億円の米ドル債券ポートフォリオ設計【最新実例】」のまとめをさせていただきます。ポイントは4つです。
1つ目が、 今回の事例に関しては、業種は、銀行、保険、ITの3業種が多いですが、その他にバランスよく分散して投資して頂きました。

2つ目が、発行している会社の所属国に関しては、経済規模に応じて分散するイメージで投資して頂きました。アメリカが一番大きく、日本、イギリス、その他という経済規模に応じているイメージで分散しています。

3つ目は、債券種類と格付けに関しては、かなり守りを重視した配分になっていると思います。普通社債が11銘柄で、劣後債が6銘柄ですから、債券20銘柄中17銘柄がそのような債券になっていますので、比較的、保守的な債券種類になっています。

格付けに関しても、BBB以上が全体の85%で、債券ポートフォリオの平均の格付けにおいてもBBB+になっています。また、この方のご要望で、債券の期間が20年以上の超長期債と呼ばれるような非常に期限が長い債券に関しては、より格付けが高いAA以上の債券格付けの債券が良いということでしたので、今回は主に20年以上の債券は、利回りは低いですが格付けが高い債券を採用させて頂いております。やはり期間が長い債券ほど、長い期間でみると倒産リスクが上がりますので、長い債券ほど格付けが高い債券の方が良いというお考えは当然あると思いますので、そのようにさせて頂きました。

4つ目が平均の年利回りです。債券ポートフォリオの利回りで言うと5.4%です。今のアメリカ国債の利回りが3.4%ですので、国債の上乗せ利回りではプラス2%になるでしょう。野心的過ぎず、保守的でもない、やや守りの割合を重視しているような債券ポートフォリオですので、これぐらいの利回りは適切であると考えます。5億円の債券運用ですので、年利回りベースで年間2,700万円が安定的に得られるインカムゲインになると想定されます。この方のご要望である目標のインカムゲイン(定期収入)に関しては、税引き前で2,000万円になりましたので、それを達成するには全く問題のない水準の利回りであると言えます。

本日は「5億円の米ドル債券ポートフォリオ設計【最新実例】」という内容でお届けさせて頂きました。

今回の内容については「世古口俊介の資産運用アカデミー」でも視聴できます。

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