イールドスプレッドとイールドレシオの違いと使い方についてわかりやすく解説します!

はじめに

株式と債券を比較する指標として「イールドスプレッド」と「イールドレシオ」があります。今回は、イールドスプレッドとイールドレシオの違いと実際の使い方について解説します。

イールドレシオとは

イールドレシオは、長期国債の利回りを株式益回りで割った指標です。株式益回りは「1株当たり利益÷株価」で求められ、PER(株価収益率)の逆数になります。

イールドスプレッドとは

イールドスプレッドは、株式の益回りと長期国債など長期的な金利水準を比較したもの。イールドレシオと同じように、株式市場が割高なのか割安なのかを判断する指標として使われます。

イールドレシオは長期金利を株式益回りで割ったものでしたが、イールドスプレッドは長期金利から株式益回りを引いたものです。イールドスプレッドもイールドレシオと同じように、小さくなると株式市場の割安感が強くなります。

イールドスプレッドと同じように、株式と債券を比較して、株式相場の割高・割安を判断するのです。イールドレシオが低い場合は株式市場が割安で、高い場合は株式市場が割高と判断します。

イールドスプレッドとイールドレシオの計算方法は、以下の通りです。

イールドスプレッド=長期金利-株式益回り
イールドレシオ=長期金利÷株式益回り

日米のイールドスプレッド

イールドスプレッドは、株式と債券でどちらが割安かを見るものです。株式では益回り、債券では10年債利回りを用います。 イールドスプレッドでよく用いられるのは、米国の10年債利回りと米国を代表する株価指数であるS&P500種株価指数です。

S&P500種株価指数は、S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス・エル・エル・シーによって算出されている株価指数で、時価総額をベースにしています。工業株400、公共株40、金融株40、運輸株20で構成されていて、ニューヨーク市場の時価総額の約75%をカバーしています。

一方の長期金利とは、貸し出すお金の期間が1年以上の場合に適用される金利。 長期金利の指標は「10年国債利回り」です。

2021年になって米国で長期金利が上昇

2021年の2月から3月にかけて米長期金利が上昇しました。そして、長期金利が上昇したことにより、とくにIT・ハイテク株などのグロース(成長株)が売られやすくなりました。米国ではハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数が2月から3月にかけて調整。4月になり過去最高値を更新しているNYダウやS&P500種株価指数とは対照的に、その後も上値の重い展開になっています。

IT・ハイテク株はPERが高い傾向にあります。PERは株価がEPS(1株当たり純利益)の何倍かを測る指標ですが、株式益回りの逆数になります。PERが高ければ益回りは低くなり、金利上昇によって割高感が意識されやすくなるのです。

日本のイールドスプレッドの水準

2021年4月30日時点の株式益回り(東証1部)と国内の10年国債利回りは、以下の通りです。

TOPIX PER 22.38 益回り 4.46%
国債利回り 0.099%

イールドスプレッドは、

0.099%ー4.46%=-4.36%

になります。

日本のイールドスプレッドは、新型コロナウイルスの影響で急低下しました。しかし、株式市場の回復に伴い、イールドスプレッドの水準も切り上がっています。2020年初めのイールドスプレッドはー7.2%でしたが、コロナショックの3月にはー9.8%まで低下。その後は上昇に転じ、4月30日時点ではー4.3%まで上昇しているのです。

日本の10年債利回りは低金利によりほとんど変化がありません。ですから、イールドスプレッドのほとんどは株式益回りの変化で説明できます。2012年末のアベノミクス以降、日本のイールドスプレッドはー5%からー8%前後で推移しており、現在は上限に近い水準にあります。

今後もイールドスプレッドが縮小するようだと、株式の割高感が意識されやすくなるでしょう。

米国のイールドスプレッド

米国のイールドスプレッドは、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて2020年2月から3月にかけて急落しました。米国株式市場が急落したため、米10年債利回りの低下を大きく上回ったからです。

2020年初めにー3.6%だったイールドスプレッドは、3月にー6.7%まで低下しました。しかしその後はこれまでにないほどの規模の金融緩和と財政政策により、株式市場は大幅に反発。

2021年に入って、S&P500種株価指数は過去最高値を更新しています。4月30日時点のイールドスプレッドはー2.7% となり、イールドスプレッドも大きく上昇しています。

米国のイールドスプレッドは、2013年以降―2.5~―5.0%の水準で推移しており、現在は上限に近い水準にあるものの、極端に株式市場の割高感があるというわけではありません。

ただ、-2%を上回る水準では、警戒感が高まる可能性もあるので、注意が必要です。

まとめ

株式と債券を比較する指標として「イールドスプレッド」と「イールドレシオ」があります。株式市場の上昇によって、日米ともに現在のイールドスプレッドは最近の上限に近い水準まで上昇しています。現在は極端な割高感はありませんが、今後もイールドスプレッドが縮小するようだと株式の割高感が意識されやすくなるので、警戒が必要です。

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