2021
02/10

はじめに

2020年9月から、厚生年金保険料が値上げされたことはご存じでしょうか?

厚生年金に加入しているサラリーマンの方にとって、家計にダイレクトに影響をもたらす話題ですね。
特に2020年からは新型コロナウィルスの感染が拡大している中、残業代や賞与が削減されて懐事情もなかなか厳しいですよね。

ただ、今回の厚生年金保険料の値上げは、全てのサラリーマン(厚生年金保険加入者)が対象となるわけではありません。

今回の記事では、

・どのような方が厚生年金保険料値上げの対象となるのか?
・値上げの対象となった場合、どんな影響があるのか?

について詳細に解説していきます。

値上げされる対象について

今回厚生年金保険料の値上げの対象になるのは、月収63万5,000円以上の高所得者の方です。

ただ、値上げが始まる9月の時点で月収が63万5,000円以上あるからといって即座に値上げの対象になるわけではありません。

厚生年金の保険料は、給与(通勤費・残業代含む)と賞与それぞれに18.3%を乗じて計算され、その合計額を勤務先と折半します。

このような形で簡易的に計算される数値を「標準報酬月額」と言います。
標準報酬月額に応じた等級に分かれており、支払う保険料の金額は変わります。

2020年8月までは31等級に分かれていましたが、9月から新たに32等級(月額65万円)まで上限が上がることになりました。

4月から6月まで受け取った標準月額の平均が63.5万円を超えると、今回の値上げの対象になります。
つまり4月~6月の給与の合計が190.5万円以上の場合、32等級に上がり、厚生年金保険料は値上げされます。

どれくらい保険料は上がるの?

今回の値上げにより、どれくらい保険料は変わるのでしょうか?

これまでの31等級の場合、実際に労働者が支払う厚生年金保険料は月額56,730円でした。
それが今回の値上げにより32等級になると、月額59,475円になります。

毎月2,745円分、年間で32,940円の負担が増えることになります。

家計が少し圧迫されてしまいますね。
特にコロナ禍で手取り収入が落ちてしまった方が今回の値上げ対象に該当してしまったら、家計にとって痛手になってしまいます。

税金対策にとってはプラスの影響

保険料の負担は増える一方、税金の観点からみるとプラスの効果があります。

厚生年金保険料で支払った分は所得税の社会保険料控除に該当するのですが、厚生年金保険料が値上がるという事は、社会保険料控除も増えるため、支払うべき税金が減額されます。

課税対象となる収入から、控除額をマイナス計上できるので、実質的な税負担額は減少します。
所得税は累進課税となるので、社会保険料控除の額も増えればその分税金の支払い額は減ります。

将来にもらえる年金が増えるというメリットもあります

厚生年金保険料を多く納めることによるメリットは、老後に受給できる年金の支給額が多くなることです。

厚生年金は支払った保険料が多ければ多いほど将来の年金支給額が増える仕組みのため、現役期間中に厚生年金保険料を多く支払うほど、年金支給額は増えるようになります。

目安として、51歳~60歳など、保険料が増額された期間が10年間の場合、標準報酬月額が3万円増えた場合の厚生年金(老齢厚生年金)受給額の計算は以下のようになります。

3万円×0.55%×120ヶ月(10年)=1万9,800円

1年間で約2万円の受給額が増える計算となります。

この期間が20年間になると、

3万円×0.55%×240ヶ月(20年)=3万9,600円

となり、1年間で4万円弱の増額となります。

1年間で支払う厚生年金保険料が3.3万円の増額となるので、10年間32等級の支払いをしたとすると、単純計算で約16年年金を受け取り続ければ元を取れる計算になります。

65歳から年金を受給したとすると、男性の場合は平均寿命である82歳まで受け取れば支払い増加分をペイすることができ、長生きして90歳まで受け取ることが出来れば、25年間の合計で49.5万円の受給増となります。

保険料にも年金にも上限がある

ただ、厚生年金保険料においても、受給される年金についても、上限がある点は留意しておきましょう。

標準報酬月額は32等級(月額65万)が上限であり、それを超えるといくら収入があっても標準報酬月額や年金保険料は増えません。
年収1,000万円の人も年収2,000万円の人も公的年金保険料も支給される年金額も同じ、ということです。

そのため、引退後の備えをより手厚くしたい場合は、公的年金のほかにも、年金保険の加入や投資を行うなど、計画的に資産形成をしておく必要があります。

まとめ

今回の記事では、厚生年金保険料の値上げについて、対象となる方についてと、どれくらい値上がりされるのか・どのような影響があるのか、について詳しく触れてきました。

月給65万円以上を貰う、いわゆる高所得の方が今回の厚生年金保険料値上げの対象となります。
保険料は値上がりになる一方、税金対策効果もあり、将来もらえる年金支給額も増える、というメリットもあります。

ただ、今回の値上げにより年金支給額が増える可能性はありますが、公的年金に頼らずに投資や年金保険などによる計画的な資産運用・資産形成をしておくことで、満足いく老後の貯えを作っておくことが望ましいです。

本記事の著者

世古口俊介
世古口俊介 代表取締役
プロフィール
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者14万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
当社での役割
超富裕層顧客の資産配分と税務の最適化提案。
特に上場会社創業者の複雑な相続対策や優良未上場企業の組織再編に注力。
同社の代表として書籍の出版や日本経済新聞、週刊東洋経済、ZUUonlineなど各種メディアへの寄稿、投資教育普及のために子供向けの投資ワークショップなどを開催。

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