目次
はじめに
皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
今回のテーマは、「投資経験が少ない相続富裕層15億円の資産運用相談実例」です。
当社には、相続をきっかけに富裕層となられた方からのご相談が多く寄せられます。親御様からの相続や配偶者様との死別などにより、多額の資産を承継される「相続富裕層」の方々には、ある共通する特徴があります。それは、これまでに本格的な投資経験がほとんどない「投資初心者」である点です。
投資に詳しくないまま、突然数億円から数十億円という莫大な資産を引き継ぐことになり、ご自身の投資リテラシーと資産額のギャップに悩まれるケースは少なくありません。その結果、資産運用に一歩を踏み出せなかったり、あるいは不適切な金融商品に手を出して大きな損失を被ってしまったりする相続富裕層が後を絶たないのが実情です。
今回は、当社が2026年にお手伝いさせていただいた具体的な相談事例をベースに、投資経験の少ない相続富裕層の方がどのようにして資産運用を実現されたのかを詳しく解説します。
本記事の内容は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の推奨や投資成果を保証するものではありません。実際の投資判断にあたっては、ご自身の資産状況やリスク許容度を踏まえた慎重な検討が必要です。
【ご相談事例】資産配分(当初)
まずは、今回のご相談者の基本情報と資産状況、そしてご要望を見ていきます。
ご相談者の基本情報
60代後半の女性で、旦那様がお亡くなりになり、多額の資産を承継された方です。ご家族は長男と次男の2人のお子様がいらっしゃいます。現在はすでに仕事を辞めており、年収はありません。国内不動産を2物件(自宅と相続した投資用木造アパート)保有しています。
当初の資産配分
当初の資産状況を「金融資産」と「実物資産」に分けて見ていきましょう。資産のほとんどが旦那様から相続されたものです。

まず金融資産の具体的な内訳ですが、日本株式が1,500万円、日本債券が2,100万円、先進国株式が1,000万円のほか、債券や日本のREITも少し保有していました。しかしこれらはごく一部であり、金融資産の大部分を占めていたのは14.7億円という巨額の現預金です。大半の資産を売却・処分して現金化された状態でした。
次に実物資産ですが、国内不動産として「ご自宅」と、相続された「投資用の木造アパート」の2物件、合計で4億2,000万円を保有しています。この不動産に伴う借入はありません。これらに加え、コモディティ金が1,200万円ほどあります。
全体のバランス
純資産は19.63億円です。借入がないので純資産も同額ですが、資産のほとんどが預金に集中しているため、金融資産比率が78%、実物資産比率は22%と、キャッシュに極端に偏った比率となっていました。さらに、外貨比率は1.5%、金融資産に占める株式と債券の比率もそれぞれ1.6%と1.7%程度にとどまっていました。大半の資産を売却して現預金に集中させた結果、全体のバランスがかなりいびつになっています。
ご要望
この方からは5つのご要望をいただきました。
1つ目は「相続した資産の整理と有効活用」です。相続資産を一旦は売却したものの、預金に偏りすぎている現状を認識されていました。このいびつな状況を解消し、正しい形に組み替えて有効活用したいというお考えです。
2つ目は「投資初心者なので堅実な資産運用がしたい」です。これまで株式やNISAなどの経験が一切ない投資初心者であるため、とにかくリスクを抑えて堅実に資産を運用したいというご希望です。
3つ目は「年間3,000万円以上の税引後インカムゲイン収入を得たい」です。ご自身の生活費に加え、2人のお子様への適切な援助を安心して行えるよう、税引後(手取りベース)で年間3,000万円以上の安定したインカムゲイン収入を得られる仕組みを作りたいという強いご要望がありました。
4つ目は「自分の相続では子供に迷惑をかけたくない」です。旦那様が亡くなられた際、遺産分割の話し合いや多額の相続税納付に非常に苦労された経験をお持ちでした。そのため、将来ご自身に万が一のことがあった際には、お子様たちに同様の苦労をさせないよう、相続税を含めた対策をしっかりしておきたいという想いをお持ちでした。
5つ目は「保有中の木造アパートは手間が多く売却したい」です。旦那様から引き継いだ投資用の木造アパートは、すでに築20年以上が経過しており、修繕の手間などが年々増加していました。奥様お一人では対応しきれず、大きな精神的ストレスとなっていたため、早期に売却したいというご意向でした。
資産配分(再配分後)
お客様の状況とご要望を分析し、当社がご提案した再配分案がこちらです。

減少させる資産
減少させる資産は現預金14.2億円と投資用木造アパートを売却した1.1億円、全体で15.3億円です。
増加させる資産
金融資産には計9.1億円を配分しました。株式に9,000万円(日本株式1,000万円、先進国株式6,000万円、新興国株式2,000万円)、債券に7.5億円(日本債券2,000万円、米ドル中心の先進国債券7.3億円)を投資しました。その他、外国REIT2,000万円、オルタナティブ(ヘッジファンド)に5,000万円を配分しています。
実物資産には計12.2億円を配分しました。国内不動産に12億円、それに伴う借入が6億円となっています。この方の年齢やリスク許容度を考慮し、相応の頭金を用意すべきと判断し、借入比率50%で実行しています。さらにコモディティ金に1,000万円、コモディティその他に1,000万円を配分しました。
再配分による投資効果
今回のポートフォリオ組み替えにより、かなりバランスのとれた資産配分になったと考えられます。この再配分による投資効果を、「リスク分散」「相続対策」「インカムゲイン」の観点から確認します。

◎リスク分散の観点
この方の目標達成に適した資産配分を再構築したことで、重要な比率は以下のように変化しました。
借入比率
純資産に対する借入比率は、元々借入はなかったため100%でしたが、6億円借入することにより130%に高まっています。この方の年齢等を考慮した保守的な水準にとどめているため、許容範囲内といえるでしょう。
実物資産・金融資産比率
当初は金融資産が多かったため、実物資産比率は22%でしたが、不動産を増やしたことにより60%まで上昇しました。結果として、金融資産40%:実物資産60%という、資産運用の「黄金比率」のバランスを実現しています。
外貨比率
当初はわずか1%であった外貨比率を46%まで引き上げ、ニュートラルな基準である50%近くまで高めました。
株式・債券比率
金融資産に占める株式と債券の比率は、当初どちらも1%程度でしたが、株式を11%、債券を76%へと高めました。投資初心者である点や年齢を考慮し、保守的かつ堅実に運用することを最優先にした結果、債券はこの程度保有してよいという判断に至りました。同時に、インフレ対策として株式も一部組み入れ、お客様の安心感を最優先した設計になっています。
◎相続対策の観点
都内の一棟RCマンション(約6億円×2棟=12億円)を取得したことで、大きな相続税評価軽減効果が得られています。都内一棟RCマンションは、時価と相続税評価額の乖離が大きく、一般的に相続税評価額を時価から約70%軽減できるケースが多いため、このような物件を保有することにより、評価の軽減ができていると考えられます。
◎インカムゲインの観点
次に、この方の最大の目標であった「税引後3,000万円のインカムゲイン収入」が実現できるかを見ていきます(※あくまで想定値である点にご留意ください)。

金融資産からの年間税引前インカムゲイン収入(想定)
平均利率4.6%となる先進国債券7.5億円からの利息収入は、年間約3,450万円、外国REIT2,000万円からの配当収入は、年間約68万円が想定されます。
実物資産(国内不動産)からの年間税引前インカムゲイン収入(想定)
さらに国内不動産からの年間税引前インカムゲイン収入は、12億円の物件に対して実質利回り3.5%で年間4,200万円の実質賃料が入ります。ここから借入金の元利返済(年間2,416万円)を差し引くと、年間約1,784万円のキャッシュフローが期待できます。
年間税引前合計キャッシュフロー(試算)
これらを合算すると、年間の税引前キャッシュフローは合計で約5,302万円になると想定しています。ここに簡易的に20%の一律課税を差し引くと、税引後の年間インカムゲイン収入は約4,241万円となり、目標の3,000万円を大きく上回るインカムゲインを確保できる見通しです。
まとめ
最後に、今回のテーマである「投資経験が少ない相続富裕層15億円の資産運用相談実例」を4つにまとめます。
ポイント1)投資経験少ない相続富裕層における「守り重視」の堅実な資産運用
多くの相続富裕層は投資初心者であるため、一般的な証券会社が勧めるような株式中心のハイリスクな投資や、過度な借入を組む不動産投資、あるいはリスクの高い物件への投資は適切ではないと考えられます。投資経験の少ない相続富裕層は、できるだけ地に足のついた「守り重視」の資産運用―今回の実例のような手堅い運用を選択することが、一つの有力な選択肢となります。
ポイント2)外国債券と国内不動産のダブルインカムゲイン獲得
相続富裕層のなかでも、特に旦那様が亡くなられて奥様が引き継がれたケースでは、それまで旦那様の収入に頼っていた方が多いと思います。そのため、ご自身が相続された後は、引き継いだ財産を適切に運用し、日々の生活費や支出を賄うための「安定した収入」を自ら生み出していく必要があります。
そうした安定収入の獲得を目指すうえで有効な組み合わせの一つとして考えられるのが、「外国債券」と「国内不動産」です。外国債券からは「外貨建て」の利息収入、国内不動産からは「円建て」の賃料収入が見込めます。このように、得られる収入の面においても「外貨」と「円」にしっかりと分散され、ダブルでインカムゲインが入ってくる形になるため、より安定した収入基盤の構築が期待できます。
また、外国債券からの利息収入は将来的な円安局面において、収入が円ベースで増える形になります。一方で国内不動産はインフレ(物価上昇)局面において、家賃収入が上昇する可能性が高いため、インフレに連動して収入を増やすことが期待できます。この異なる性質を持つ2つの収入源をダブルで持っておくことで、補完性が高い形で中長期的に安定した収入基盤を維持しやすくなるでしょう。
ポイント3)国内外株式と国内不動産でインフレ対策
インフレ対策は、資産を持つ富裕層全ての方にとって共通の課題です。特にすでに現役を引退されている方や、多額の資産を相続された配偶者の方などは、当初の段階ではインフレに対応できる資産をほとんど持ち合わせていないケースが少なくありません。
この場合、今回の事例のように、ポートフォリオの一部として国内外の株式を一定程度保有したり、あるいは適度な借入を活用して実物資産である国内不動産に投資をしたりするなど、インフレからしっかりと守る対策を講じておく必要があります。
ポイント4)国内不動産と借入活用による相続対策
ご家族の相続を経験され、遺産分割協議や多額の相続税納税等で、精神的・体力的に苦労された経験をお持ちの方ほど、ご自身の相続では、「子どもたちにできるだけ負担をかけたくない、ストレスを与えたくない」と強く願われる傾向にあります。
このように、ご自身の相続対策をあらかじめ講じておきたい場合は、借入を活用した国内不動産の保有は、検討に値する選択肢の一つとなります。
今回の事例における12億円という投資額についても、借入を使わずにすべて手元のキャッシュ(現金)で支払って投資を完了させることは可能です。しかしあえて適度な借入を活用することで、手元から出ていくはずだった6億円を浮かせる(手元に残す)ことができます。その浮いた資金を流動性の高い金融資産に分散して運用することで、資産全体の投資効率の向上が期待できるだけでなく、急な出費や将来の納税資金確保という面でもゆとりが生まれます。
適度な借入を活用することは、相続対策として重要な選択肢の一つになり得るでしょう。
本日は「投資経験が少ない相続富裕層15億円の資産運用相談実例」という内容でお届けしました。
相続資産の運用やポートフォリオの組み替えに関するご相談は、ウェルス・パートナーまでお気軽にお問い合わせください。お客様の状況に合わせた最適な資産運用・相続税対策をご提案いたします。