目次
はじめに
近年、会社売却を経験した富裕層からの資産運用相談が増加しています。その背景には、「この資産を元に安定した収益を得られないか」という最大の関心事があります。会社売却後の資産を適切に運用することは、将来の安定と資産増加につながります。本記事では、会社を売却して富を得た富裕層が資産運用において重視するポイントに焦点を当て、成功する資産運用のポイントを探ります。
会社売却した富裕層に共通する悩み
資産運用とは、手元にある資産を有効に活用し、その価値を増やすための活動のことです。特に、会社売却を経験した富裕層にとって、資産運用は重要な課題となります。なぜなら、会社売却後に得た資産を適切に運用することは、将来の安定や資産の増加につながるからです。まずは、会社を売却した富裕層に共通する悩みを見ていきましょう。
役員報酬の代わりが欲しい
通常、会社が売却された後、経営者は以前と同じように役員報酬を受け取ることはできなくなります。これは、経済的な安定を求める経営者にとって大きな課題となります。そのため、適切な資産運用により収益を確保し、金銭的な安定性を保つことが重要です。これにより、原資を維持しつつ、生活に必要な資金を獲得することが可能になります。役員報酬に代わる新たな収益源を作り出すことは、経済的な自由と安定を求める経営者にとって必須のステップとなります。
安定した運用がしたい
多くの富裕層は、短期的に高いリターンを追求するよりも、長期的で安定した収益を優先する傾向があります。これは、彼らが資産の安全性を重視し、極端な市場の変動から自分の富を守りたいと考えているからです。だからこそ、資産運用におけるリスク管理が非常に重要になります。これには、適切な資産分散を実施する能力、つまりリスクを最小限に抑えて最大の利益を得るために投資を多様化することが必要です。また、定期的にポートフォリオの見直しを行い、市場の変動に応じて適切な調整を行うことが大切です。そして、状況に応じて投資戦略を調整する能力、つまり市場の変動や個々の投資目標に応じて投資方針を変える柔軟性も要ります。
手間をかけたくない
富裕層は煩雑な資産運用や運用管理に時間を費やしたくないと考える方が多く、効率的かつスムーズな運用方法を模索しています。現代社会では情報が溢れ、金融商品も多様化しています。その中で、資産運用や管理が複雑化し、時間を取られることに対する富裕層の不満が増えています。そのため、効率的でスムーズな資産運用方法の開発と提供が、今後の重要な課題となるでしょう。
たとえば、資産運用だけでなく、税務、相続、不動産など、富裕層が解決する様々な課題に対して、含まれたサポートを提供することが重要です。富裕層の悩みを、ワンストップで解決策を提供できる体制が求められます。
外貨へ分散したい
世界経済の変動性は、富裕層にとってリスク管理が必要な要素となります。その一つの解決策として、資産を外貨に分散投資することが挙げられます。
外貨投資の主なメリットは、以下の4つです。
1.リスク分散
異なる通貨に分散投資することで、特定の通貨の価値下落リスクを軽減できます。
2.収益機会の拡大
金利差や為替差益による収益を得られる可能性があります。
3.インフレ対策
インフレ率の高い国への投資で、資産価値の下落を防ぐことができます。
4.資産の国際化
円以外の通貨で資産を持つことで、国際的な経済情勢の変化に対応できます。
外貨投資により、特定の経済状況による一部の資産の損失が発生した場合でも、他の外貨資産がその損失を補う可能性があります。つまり、外貨投資は、資産全体の安定化を目指す上で重要な役割を果たします。このように、外貨への投資は資産全体の安定を図る上で重要です。
会社売却後の資産運用ポイント
会社売却後に得た資産を適切に運用するためのポイントを以下に示します。
複数の資産クラスに分散投資する
資産運用の一つの重要な戦略は、「分散投資」です。これは、投資先を一つではなく、複数の異なる資産クラスに広げるという方法です。例えば、株式、債券、不動産、商品(コモディティ)など、さまざまな種類の資産に投資を行います。これにより、一部の資産が価値を失ったとしても、他の資産がそれを補うことが可能となり、全体としてのリスクを軽減できます。また、これらの異なる資産クラスは市場の動向によって価格変動のパターンが異なるため、全体としての安定した運用を目指すことができます。このように、複数の資産クラスに分散投資することにより、リスクを適切に管理しながら、より安定した運用を目指すことが可能となります。
ただ、毎年最もパフォーマンスの良い資産クラスを予測することは、大きな運用利益をもたらす可能性がありますが、これは非常に困難です。一方で、国内債券、国内株式、外国債券、外国株式といった主要な4つの資産クラスに均等に分散投資するというアプローチはどうでしょうか。この4資産への25%ずつの投資を行ったポートフォリオは、トップにはなりませんが、2006年からの実績をみてもボトムにもならなかったという結果が出ています。つまり、大きな損失を避けるためには、多様な資産に分散投資することが重要となります。これは、リスクを分散させ、安定したリターンを追求するための基本的な投資戦略です。
出典:GPIF
※上記は過去の実績であり、将来の動向等を示唆および保証するものではありません
プロのアドバイスを受ける
資産運用に関する専門家であるIFA(独立系フィナンシャルアドバイザー)やFP(ファイナンシャルプランナー)からアドバイスを受けることは、資産を最適に運用するための戦略を構築する上で非常に重要です。これらの専門家は、財務状況、目標、リスク許容度などを考慮した上で、最適な投資ポートフォリオを提案してくれます。そのため、専門的な知識を持つ人からのアドバイスを活用することで、安定した資産形成とリスク管理を実現することが可能となります。
リスク管理を重視する
リスク管理を徹底的に行うことは、高いリターンの追求だけでなく、資産を安定的に運用する上で非常に重要な要素です。これは、投資には常にリスクが伴うため、そのリスクを適切に管理し、コントロールすることで、投資した資産を守りつつ、高いリターンを追求することが可能になるからです。したがって、リスク管理の徹底は資産運用の成功を左右する重要な要素であり、その実施には最大限の注意が必要であるといえるでしょう。
まとめ
会社売却を経験した富裕層の方々にとって、資産運用は重要な課題です。ただ、巨額の資金を効果的に運用し、安定した収益を確保するためには、適切な運用方法の選択とリスク管理が鍵となります。
たとえば、資産を分散投資し、長期的な視点を持つことでリスクを軽減できます。また、IFAやFPなど資産運用のプロフェッショナルからアドバイスを受けることで、個人の財務状況やリスク許容度、投資目的に合った最適な運用戦略を立てることができます。
会社売却で得た資産は、将来の夢や目標を実現するための貴重な資源です。賢明な資産運用によってその資産を最大限に活かし、豊かな人生を実現しましょう。
株式会社ウェルス・パートナー
代表取締役 世古口 俊介
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。
2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者1万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
メディア掲載情報:「m3.com」「ZUU online」「MONEY zine」「マネー現代」でコラムを連載中