こんにちは。ウェルスパートナー代表の世古口です。私は大学を卒業した2005年からこれまでの15年間、富裕層からお金をお預かりして資産運用する仕事をしてきました。最初の11年間は日系、アメリカ系、スイス系の金融機関のプライベートバンク部門のプライベートバンカーとして、直近の4年間は独立して資産運用コンサルティングの会社を経営しています。そういった中で、資産運用の相談と同じくらい多いのが資産管理会社の設立・運営に関する相談です。なぜ富裕層は資産管理会社を作るのでしょうか。富裕層が資産管理会社を作る理由から具体的な活用方法、税制までを詳しく連載でご紹介できればと思います。
資産管理会社を作るためには何を決めなければならないこと
資産管理会社(以下、法人)を作るにあたり何を決めなければならないのでしょうか。法人設立には以下の5つの項目を決める必要があります。
1.役員
2.株主構成
3.資本金
4.事業目的
5.会社形態(合同会社か株式会社か)
他にも社名や住所などありますが、税務や運営上重要なのが上記の5つになるので、本記事ではこの5つに絞って説明していきます。
1.役員
役員は法人を運営する代表者のことです。役員の中で最も決定権を持つのが代表取締役(株式会社の場合)です。
法人で不動産の資産形成をする場合、代表取締役は重要です。なぜなら不動産投資を投資するにあたり、法人で借入をするには代表取締役の個人保証が必要になるからです。
個人の収入や資産背景などの信用力が、法人で借入をできるかどうかの銀行審査に影響を与えるからです。
2.株主構成
株主構成はとても重要です。一般的に代表者が株主になることが多いでしょう。しかし、相続を考えると子供を株主にした方がいいことが多いです。なぜなら新たに法人で収入を得たり、資産を保有し成長することが予想されるからです。
その場合、子供が株を持っている方が、資産が成長した分が子供の資産となるので、本人が株を持っているよりも相続上、有利なのです。
子供が資本金を支出することになるので子供には資金がないので、無理だと考える人が多いのですが、なければ子供に資本金を貸付すればいいのです。
3.資本金
資本金は基本的に少額の方がいいです。資本金が大きいと2つデメリットがあります。1つは1000万円以上の資本金になると設立1期目から消費税課税業者となりますが、1000万円未満であれば、早くても課税業者になるのは設立3期目からになるからです。
もう1つは住民税の均等割です。資本金1000万円未満であれば年7万円ですが、1000万円以上1億円以下だと年18万円になります。以上の2つの理由から特別な理由がなければ資本金は1000万円未満にした方がいいでしょう。
資本金が低いと信用力が低くなると考えるかもしれませんが、資産管理会社においてはあまり関係ありません。不動産投資の借入をする場合も、資本金の大小ではなく、保証を入れる代表者の信用力で判断するからです。事業会社ではなく、資産管理会社の場合は資本金は少なめにしていいでしょう。
4.事業目的
法人は事業目的を設定する必要があります。法人はその設定した事業目的を遂行するために存在するのです。事業目的は可能性がある目的、全て設定しましょう。
例えば「不動産投資・管理業務」、「有価証券投資」、「飲食業」、「卸売業」など今のところ計画がなくても、あとで事業目的を増やそうとすると数万円くらいかかるので、最初の段階で入れておいた方がいいのです。
5.会社形態(合同会社か株式会社か)
会社の形態はいくつかありますが、主に合同会社か株式会社を選ぶことになります。この2つの会社形態の違いは主に3つあります。1つめは設立のコストです。
合同会社は10万円から15万円程度で設立でき、株式会社は30万円程度は必要になり、株式会社の方が設立コストは高くなります。
2つめは設立の速さです。合同会社は設立の準備が整ってから2週間程度で、登記完了しますが、株式会社は1ヶ月程度かかります。
3つめは株主と役員の関係です。基本的に合同会社の場合、株主は役員となりますが、株式会社は株主であっても役員である必要はありません。つまり合同会社は株主=役員なので、資本と経営が一体となるのが前提です。株式会社は、資本と経営が分離できることが前提なのです。これはとても重要なことです。
ベンチャー企業を作って、成長させ上場させたいような場合は株式会社でなければ無理です。なぜなら出資してくれる投資家をみんな役員にはしてられないからです。一方で、家族しか出資せず今後も家族だけで所有し続けるのであれば、合同会社でいいのです。完全なファミリー企業であれば合同会社、事業性があるなら株式会社にすればいいでしょう。
まとめ
本記事では法人を作るのに考えなければならない重要ポイントについて確認してきましたが、いかがでしょうか。ご紹介した5つの条件の中でも最も重要なのは株主構成です。
株主構成以外の項目は変更しようと思えばいつでも変更できます。しかし株主構成だけは数年後に変更しようとすると、多額の税金がかかることもあり慎重に決める必要があります。また法人の実質的な支配者は株主ですので、親が株主を子供に設定したとして、子供が権利を出張したら会社は子供がコントロールできることになります。
以上のことを注意して、慎重に法人設立を検討していきましょう。