皆さん、こんにちは。株式会社 ウェルス・パートナー 代表の世古口です。
目次
はじめに
ご存知の通り、2023年はアメリカで金利が高くなったために、とても有利な状況で米ドル債券投資を行うことができました。現在(2023年12月後半)では、若干金利が低下したものの、まだまだ歴史的にみても金利の高い状況が続いています。
このような背景から、今回は「2024年の米ドル債券投資・完全攻略ガイド」というテーマをお届けできればと考えました。
今回はお伝えする内容が多いため、まずは簡単にアジェンダをお伝えしたいと思います。
まず1つ目のテーマは、「米ドル債券の基本と投資リスク」です。投資にはメリットだけでなくデメリット、つまり投資リスクも存在するため、メリット・デメリットを知ったうえで投資することが重要となります。
2つ目は、米ドル債投資の基本を押さえたうえで、最新の状況と今後の予想をお伝えさせていただきます。
3つ目は、本題でもあるのですが、2024年はどのように投資を行っていけばよいかという、2024年の米ドル債券投資戦略のポイントをお伝えします。
4つ目は、「米ドル債券ポートフォリオ最新設計例」として、現在(2023年12月後半)で私が考えるベストなポートフォリオの設計例をお伝えします。
債券投資のイメージ
まず、基本的な話として債券投資についてみていきましょう。
債券投資とは、投資家が国や会社などの債券発行体にお金を貸して利息を受け取り、利益を得ることです。
米ドル債券投資の場合、米ドルでお金を貸して利息を米ドルで受け取る、そして元本が戻ってくるのも米ドルということになります。
富裕層が米ドル債券を求める4つの理由
次に、富裕層の方々が米ドル債券を求める4つの理由について紹介します。
ただし、これら4つの理由に当てはまらない場合は、米ドル債券投資がニーズに合わないケースも考えられますので、自分の目的に合っているか確認するためにも、理解していただければと思います。
インカムゲイン
1つ目は、これが一番多い理由だと思いますが、インカムゲイン、つまり安定的な定期収入が得られるということです。
例えば1年間に一定の利息をインカムゲインとして受け取りできるとすれば、生活費に充てたり、生活を豊かにするために充てたりできるということです。
特に仕事を辞められた富裕層の方など、資産はあるが収入がない方などは、現役世代の収入の代わりに、債券投資で収入を得たいと考える場合が多いようです。
外貨の分散
続いて2つ目の理由は、外貨への分散です。
日本の富裕層の方々の資産は大半が円資産で占められているのですが、昨今、急速に円安が進んだことにより、円資産だけを保有することは、大きなリスクだと考える方が増えています。
この課題は昔からあったのですが、やはり円安やインフレが進んだ場合に、円資産だけというのは無抵抗の状態です。
このため、資産も色々な通貨に分散することが望ましいのですが、世界の基軸通貨米ドルへ投資するのがセオリーということで、円に偏った資産配分を見直すために、米ドル債券へ投資したいと考える方が多いようです。
価格の安定
3つ目の理由は価格の安定です。
よく「リスク」ともいいますが、「値動きが安定している」というのが債券の特徴です。
資産は、株と債券に大別されるのですが、株は値動きが激しく、1日で数%動くことも珍しくありません。一方、債券は価格の変動が少なく、比較的価格が安定しています。
したがって大事な資産、虎の子の資産を運用するのに適しています。
特に、会社を辞めたり売却するなどして、資産はあるが、その後の安定収入が得られない方にとって、安定的に資産を運用することは大事な課題となるわけです。
手間いらず
4つ目の理由は、これもかなり大きいのですが「手間いらず」ということです。
インカムゲインなど、投資の目的を得る方法としてよく挙げられる運用方法に不動産投資があります。
不動産投資はインカムゲインとして賃料収入を得られるのですが、かなり手間がかかります。
契約時の物件選びから購入する際の銀行借入れ、購入後も管理が必要など、さまざまな手間がかかるわけです。
これに対して、債券投資はほとんど手間がかかりません。証券口座を開設して入金し、債券に投資をする。あとは、定期的に利息が振り込まれて、債券が満期を迎えると口座に資金が戻ってくる。
したがって、忙しい富裕層の方々や資産運用に時間を割けない方にとっては、米ドル債券を選ぶ大きな理由になります。
米ドル債券の投資リスク
続いて米ドル債券の投資リスクについて説明したいと思います。大きく分けてリスクは4つあります。
倒産すると投資元本の数割しか返済されない可能性
まず1つ目は、これが最も大きいのですが、米ドル債券を発行している国や会社が倒産するリスクです。
倒産した場合、国や会社の財務状況によって、どれくらいのお金が返ってくるかというのは全く異なるのですが、もちろんゼロになる可能性もあります。
過去のデータを平均すると、投資金額の数割くらいしか返済されない場合が多いのですが、全く返ってこないこともあるので、やはり倒産リスクは米ドル債券投資における最大のリスクだと思います。
投資時より米ドル安・円高になると為替評価損が発生
2つ目は、為替リスクです。
米ドル債券に投資した時よりも、為替がドル安・円高に振れた場合は、債券の評価損が生じます。
買った時よりも円高に行った分マイナスになるということなので、この為替の評価損は比較的大きなリスクといえます。
途中売却する場合は債券価格下落が損失になる可能性
3つ目は、債券の価格です。
債券の時価評価額は、2つ目で説明した為替と債券価格で決まります。
このうち、債券の価格は満期まで保有すれば変動がなく、100で発行されたものは100で返ってくるので、リスクはありません。
しかし、途中で売却する場合は時価での売却となるので、価格が下がっている時に売却すると元本割れするリスクが生じます。
つまり、中途で売却する場合に限り、債券の価格変動による元本割れリスクが生じるということです。もちろん、満期まで保有するのであれば、この問題は生じません。
売買の価格が離れているので短期売却には向かない
4つ目は、流動性に関する話になります。
米ドル債券は基本的に流動性が高く、売却注文を行うと1週間程度でキャッシュに戻すことが可能です。
ただし、売り買いの値段は結構離れており、99で買った債券をすぐに売ろうとすると、97や96の価格になる場合が多く、そこに証券会社の手数料が乗ってくるので、数%以上の損失となる可能性が高くなります。
したがって、米ドル債券は換金性が高いのですが、短期売買できるほどの流動性はないということになります。
つまり株式ほど流動性が高くないため、この点がデメリットだと思います。
以上、ここまでが米ドル債券の基本とリスクについての話となります。
次回は米ドル債券の最新状況と今後の予想についてお話させていただきます。
株式会社ウェルス・パートナー
代表取締役 世古口 俊介
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。
2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者1万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
メディア掲載情報:「m3.com」「ZUU online」「MONEY zine」「マネー現代」でコラムを連載中