皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
目次
はじめに
本日のテーマは、「米ドル債券の人気発行会社TOP5【2023年版】」です。米ドル債券投資において非常に大事な要素として、どういった会社がその債券を発行しているのかという、発行会社選びがあります。債券を発行している会社によって、その債券の安全性の基準である格付けや、収益性の基準である年利回りが大体決まっているので、債券投資においては発行会社選びが一番と言っても過言ではないほど非常に大事な要素であるということが言えると思います。今回は、2023年の1年間を通して、米ドル債券の人気であった発行会社TOP5をランキング形式でお伝えしましょう。
今回は米ドル債券の人気発行会社TOP5ですので、5位から順に発表します。
5位:ソフトバンクグループ
5位はソフトバンクグループです。日本の会社の中では大手の企業で、有名な孫社長というカリスマ的な経営者が経営しており、非常に知名度が高いということで人気があります。業種は投資会社で、発行体格付けはBB、投資非適格の債券です。比較的格付けが低い、いわゆるハイイールド債という、格付けが低くて利回りが高いような債券に分類される格付けであると言えます。時価総額は8.4兆円です。一時期の業績が良かった頃と比べると、株価は少し下がっています。WeWorkの破綻や投資先が上手くいかなかったことなどによるネット企業や投資先に対する逆風が吹いているので、そのあたりが、ソフトバンクグループにとってはマイナスに働いている状況です。格付けがやや低いので、年利回りはそれなりに高い水準で、大体どのような企業の債券でも6~8%の利回りというのが、2023年に一番多かった利回りではないかと思います。
ソフトバンクグループは日本の有名な会社ですので、日本の投資家や経営者の方にとっては馴染みのある会社であり利回りもそれなりに高いので、目標のリターンが高い債券投資家や富裕層の方々にとっては引き続き人気の投資先であることから、5位にさせていただきました。昨年のランキングでは、ソフトバンクグループはもっと上位でしたが、今回は順位が落ちて5位になりました。
4位:オラクル
4位はオラクルです。アメリカのソフトウェア会社です。IT企業の中では歴史があり、規模も大きいというイメージです。ソフトウェアで安定的に稼いでいる企業で、業績は安定していますが、発行体の格付けはBBBになっています。時価総額は45兆円ですので、先ほどのソフトバンクグループと比較しても、何倍も価値がある会社の規模の発行体になるわけです。2023年の年利回りは5~6%が比較的多かったと思いますので、ソフトバンクグループよりも格付けが高い分、利回りは少し落ちるというイメージになっています。
なぜオラクルが人気なのかというと、もちろん格付けがそれなりに高いことや、会社の規模、時価総額もそれなりに大きく、安定感がある点も挙げられますが、実はオラクルは米ドル建て債券を多く発行しています。種類がたくさんあり、期間や利率など、いろいろな利回りの債券のバリエーションが非常に豊富です。日本の証券会社でもたくさん供給されているので、債券ポートフォリオを組む際に組み合わせやすい点があります。債券の期間を分散し、数年ごとにお金が返ってくるような設計でポートフォリオを組むことが多いのですが、そのような時、オラクルのようにたくさん種類があると組み合わせやすく、パズルの穴埋めをしやすいわけです。ですから、そういったポートフォリオへの組み込みやすさや、債券のバリエーションの多さが人気の理由ではないかと思います。
3位:プルデンシャルファイナンシャル
3位はプルデンシャルファイナンシャルです。日本でも営業している保険会社なので有名だと思いますが、アメリカの大手の生命保険会社です。発行体格付けはA-、時価総額は5.1兆円とそれほど大きくはありませんが、保険会社なのでかなり業績は安定しています。それほど赤字になるような業態ではありませんので、安定的に利益を稼いでいるという意味で債券として人気があり、安心感があって投資しやすいという側面で人気があるのではないかと思います。年利回りはオラクルと同程度の5~6%です。
アメリカの2023年に関しては、アメリカの金融不安などがあり、倒産する銀行も出たので、「銀行は大丈夫か?」という風潮になりました。しかし、金融の中でも他の業界を見渡すと、保険会社は業績が安定しています。世の中の米ドル債券は、金融機関が発行する債券が多い中で、銀行よりは保険会社の方が業績が安定していて安心感があるという点で、このプルデンシャルなどが選ばれやすかったということで3位になりました。
2位:三菱UFJフィナンシャルグループ
2位は三菱UFJフィナンシャルグループです。日本で一番大きな銀行です。発行体格付けはA-、時価総額は15.3兆円、2023年の年利回りは5~6%でした。人気の理由は言う必要もないと思いますが、やはり安心感があり馴染みもあります。日本に住んでいる方であれば「三菱UFJが倒産することはない」というほど絶対的な安心感があるわけです。三菱UFJに限らず、三井住友やみずほなどの日本のメガバンクは、全体的に2023年は人気がありましたが、その中でも一番規模が大きい三菱UFJが特に人気だったため、2位にさせていただきました。
1位:アップル
1位はアップルです。スマートフォンのiPhoneのAppleで、非常に人気がありました。アメリカのIT企業、GAFAという超巨大ネット企業の一角です。その中でも一番規模が大きい時価総額で、業績も一番良いのがこのアップルです。発行体格付けはAA+ということで、この水準はアメリカ国債と同じ格付けです。一企業ですが、アメリカと同じ格付け信用力というような会社であると言えます。時価総額は超巨大で439兆円ですから、おそらく世界でトップ5やトップ10に入るほどの大きな時価総額の会社です。格付けが高いので、年利回りはやや下がり、2023年の年利回りは4~5%でした。
では、なぜアップルが1位の人気だったのでしょうか。世の中の基準金利、アメリカの長期金利が全体的に上昇していました。多くの富裕層の方々の債券投資で得たい利回りの目標は4~5%程度が多いです。つまり、4~5%程度得られたら十分であると考えている方が多いので、そこまでの利回りが得られるのであれば、安全性の方を重視し、格付けが非常に高くて米国債のような債券で運用できるのであれば、そのような債券に投資したいという需要が非常に高まりました。そのような考えの方が多いため、アップルは最適な投資先と言えるわけです。米国債と同じAA+の格付けで、年利回りは4~5%、高い時は5%程度ありました。AA+の債券に投資して5%の利回りが得られるのは、夢みたいな話です。そのような世の中全体の金利が高まっていることが、アップル人気の追い風になったのではないかと思います。
まとめ
本日のテーマである「【2023年版】米ドル債券の人気発行会社TOP5」をまとめます。ポイントは4つあります。
ポイント1)人気TOP3は、格付けA-以上の高格付け債券
発行会社の人気TOP3は、格付けA-以上の高格付け債券が多かったと思います。先ほどのランキングでもお伝えしたように、世の中の基準金利、米金利全体がかなり上昇しているので、格付けが低い債券に投資しなくても、5%以上の高い利回りが得られるような債券の投資環境にありました。「それならば格付けが高い債券を安心して持っていたい」というご要望がありましたので、TOP3は高格付けのA-以上の債券が占めるに至ったのではないかと思います。
ポイント2)アメリカの会社が多いのは超長期債人気の影響も
アメリカの会社が発行している債券が多かったと思います。2023年は、超長期債という期間が非常に長い債券、期間が10年以上、20年以上、30年などの債券が非常に人気でした。世の中の金利が上がりましたが、この高金利は長続きしないと考え、この高い金利を長期間享受したいということで、超長期債で高い利回りをロックするというニーズが高まりました。期間が長い債券は米ドル建てですから、アメリカの企業が発行している債券が多いわけです。そのような超長期債人気から、アメリカの発行会社の債券に行き着いたと言えます。ですから、ランキングにアメリカの会社が多かったという傾向があったのではないかと思います。
ポイント3)金融不安から銀行債から一般の事業債へ需要シフトへ
まだ記憶に新しいと思いますが、2023年は金融不安の年でした。アメリカの地銀破綻やクレディスイスの経営破綻などがありました。金融機関の中でもやはり銀行の債券は世の中に多いので、銀行の債券だけを持っているのは不安があるということで、一般の事業債、先ほどお伝えしたようなIT企業や一般の事業会社が発行しているような債券の需要が高まった、つまり、需要がシフトしたわけです。先ほどのランキングでも、銀行債だけではなく、一般の事業債も含まれてきているということではないかと思います。
ポイント4)日本のメガバンクや保険会社に安心感
2023年は海外の金融機関の金融不安が中心でした。日本のメガバンクからすると、対岸の火事という印象ではありました。日本の金利が上がっていないのもありますが、金融不安とは全く無関係の位置にいるので、日本の銀行はやはり安心できるという風潮にあったことも、日本の銀行の債券の需要が高まった理由の一つではないかと思います。
ランキングには入っていませんが、日本の保険会社の人気も非常に高かったです。日本の銀行や保険会社など、金融機関に対する安心感が再注目された年が2023年だったのではないでしょうか。
本日は「米ドル債券の人気発行会社TOP5【2023年版】」という内容でお届けさせて頂きました。
株式会社ウェルス・パートナー
代表取締役 世古口 俊介
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。
2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者1万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
メディア掲載情報:「m3.com」「ZUU online」「MONEY zine」「マネー現代」でコラムを連載中