はじめに
皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
今回のテーマは、「【実例】米ドル建て債券を複数証券会社で最適化した方法と手順」です。
会社を売却し、まとまった資金が入ってきたお客様からのご相談のなかで、特に多くお寄せいただくのが「投資を開始した後の不安や悩み」です。
投資に関する知識が十分でないまま、証券会社に勧められた金融商品や米ドル債券を購入されたものの、運用を初めてしばらくすると、「この米ドル債券ポートフォリオは本当に合理的か」「なぜこの債券を持っているのか」「今のバランスで問題はないか」といった疑問や不安を抱かれるケースは少なくありません。
一方で、すでに保有している債券は購入時に手数料もかかっているため、「売却してしまうのはもったいない」と感じるのも当然のことです。そのため、既存の債券は残したうえで、手元にある余剰資金や他の資産を動かすことで、ポートフォリオ全体を最適化したいというご相談も数多くいただいています。
特に、複数の証券会社で米ドル債券を購入している場合、全体像が把握しづらく、特定の期間や格付けに偏りが生じていることも珍しくありません。
今回は、実際のお客様の事例をもとに、複数の証券会社で保有する既存の米ドル債券は維持しつつ、余剰資金を活用してポートフォリオ全体をどのように最適化したのかをご紹介します。資産運用を見直す際の参考にしていただければ幸いです。
本記事の内容は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の推奨や投資成果を保証するものではありません。実際の投資判断にあたっては、ご自身の資産状況やリスク許容度を踏まえた慎重な検討が必要です。
【ご相談実例】
資産配分(当初)
まずは、ご相談者の資産配分や基本情報、そしてご要望を見ていきます。

ご相談者の基本情報
今回ご相談いただいたのは、経営していた会社を売却し、現在はリタイアされている62歳の男性です。家族構成は奥様・長女・次女の4人家族で、主な収入源は投資収入となっています。
当初の資産配分
売却した資金は主に証券会社と不動産会社で運用が進められていました。
金融資産としては、日本株式の割合がかなり多く3億2,000万円、先進国株式が2億1,000万円、新興国株式が6,500万円となっています。今回のテーマである米ドル債券を含む先進国債券には6億円投資されていました。そのほか、日本REITが3,000万円、外国REITが1,500万円、オルタナティブが2,000万円、現預金が3億5,000万円ある状態です。
実物資産としては、自宅や投資用物件を含めた国内不動産が15.7億円、それに伴う借入金が7億円ある状況です。
ご要望
この方の主なご要望は以下の4点です。
- 余剰現預金の有効活用:会社売却代金の一部として、いざという時のために3億5,000万円を現預金で残していましたが、特に使っていない3億円ほどを運用に回したいと考えています。
- 株式から債券への資産シフト:もともと株式を多く持つ意図はなかったものの、株価の上昇により株式の割合が増えていました。すでに会社を売却されているため、安定運用を目指して株式から債券へのシフトを希望しています。
- 米ドル債券ポートフォリオの最適化:勧められるまま投資した米ドル債券のバランスに疑問を感じていたため、株式・債券の資産シフトのタイミングで米ドル債券ポートフォリオ全体を最適化したいとのことです。
- 証券会社で保有する債券は現状維持:現在、2つの証券会社に3億円ずつ、合計6億円の債券を保有していますが、購入時に手数料がかかったこともあり、既存の債券は売却せずそのまま残し、残りの預金や株式からシフトする資金で債券ポートフォリオ全体を最適化したいというご要望です。
当初の先進国債券ポートフォリオ設計における課題
当初保有していた先進国債券(米ドル債券)6億円分(証券会社A社でNo.1〜No.3の3銘柄、証券会社B社でNo.4〜No.6の3銘柄、計6銘柄)の内訳を確認すると、以下のような特徴と課題がありました。

①1銘柄あたりの保有比率の偏重
普通社債や期限付劣後債などに全6銘柄、各1億円ずつ投資されている米国債券ポートフォリオです。このポートフォリオに占める1銘柄の保有比率は16.7%となっていました。この方の資産背景や債券ポートフォリオの規模から見ても1銘柄あたりの割合が大きく、まとまりすぎている印象がありました。
もう少し分散することが適切と思われます。しかし、結果として1銘柄あたりの投資金額が大きい構成になっていました。ご本人も特に考えずに投資されていました。
②残存期間の偏り(バーベル型)
残存期間に大きな特徴があり、No.1〜No.3は3年・4年・8年と短く、No.4〜No.6は24年・25年・26年と長くなっていました。10年台などの中間が無く、極端に短いものと極端に長いものが組み合わさった「バーベル型」の残存期間です。
一般的な債券投資では、数年に一度償還を迎えるように組む「ラダー型」が標準的な考え方です。しかし、ご本人や証券会社に特別な意図があったわけではないものの、結果的にバーベル型になってしまったというお話でした。
③債券格付けと利回り
格付けはBB-からBBB+まであり、平均格付けはBBB-でした。6銘柄中3銘柄が低格付け債、3銘柄がBBB台と、全体的に格付けが低い印象です。平均利回りは5.6%となっており、低格付け債が入っているため平均格付けに応じた利回りとなっていました。
当初の債券ポートフォリオに対する課題
当初の債券ポートフォリオにおける課題をまとめると以下の4点に集約されます。
- 何もわからず投資したが、本当にこのままでいいか不安
- 低格付け債が多いが、追加投資も同様の債券でいいか悩んでいる
- 残存期間の長短が極端だが、このままでいいのか疑問である
- 現在の債券はそのままにして追加投資で最適化したい
資産配分(再配分)
以上のような課題を解決するため、資産の再配分を行いました。

減少させる資産
株式資産のうち、日本株式2億5千万円、先進国株式4,000万円、新興国株式1,000万円の計3億円を減少させました。ご年齢や退職されている状況を考えると、ご本人の運用目的やリスク許容度を踏まえ、株式比率を引き下げる方針としました。それに加え、円の現預金から3億円を合わせた計6億円を減らしています。
増加させる資産
この6億円をすべて先進国債券(米ドル債券)へ投資しました。
先進国債券ポートフォリオ設計(再配分後)
既存の6億円分(A社・B社)はそのまま残し、新たな証券会社C社にて12銘柄(No.7〜No.18)の米ドル債券を各5,000万円ずつ追加投資しました。これにより、当初の6億円(6銘柄)と合わせた合計12億円・全18銘柄のポートフォリオを再設計しました。
追加した12銘柄の詳細は以下の通りです。
業種・国
業種や国については、米ドル建てであるため、米国の会社が多くを占め、業種は様々です。
債券種類
多くは普通社債ですが、一部に米国債も含まれています。
投資金額・保有比率
全て米ドルで1銘柄5,000万円ずつ投資し、この12債券のポートフォリオに占める1債券の保有比率は4.2%となりました。ポートフォリオの平均利回りと同等程度の比率であり、適切な1債券の投資金額となっています。
残存期間
もともと抜けていた10年台~20年台前半(9年、11年、12年、13年、14年、15年、16年、17年、19年、21年、23年2銘柄)の債券を追加しました。これにより、バーベル型から数年ごとに償還を迎える「ラダー型」へ転換しました。平均残存期間は16年となっています。
債券格付け
A台を中心とした格付けの高い債券を組み入れました。これにより、当初BBB-だったポートフォリオ全体の平均格付けはBBB+と、信用力が2段階向上しました。
利回り
格付けが高い債券を入れたため単体の利回りは4%台中心となりますが、ポートフォリオ全体の平均利回りは当初の5.6%から5.3%(−0.3%)にとどまりました。格付けが2段階上がって利回り低下が0.3%であれば許容範囲内と考えられます。
このような追加投資により、債券ポートフォリオ全体が最適化できたといえるでしょう。
まとめ
最後に、今回のテーマである「複数の証券会社に分散した米ドル債券ポートフォリオをどう最適化したか―偏重解消の実例」を4つにまとめます。
ポイント1)期間10年台〜20年台前半の債券を増やし「ラダー型」へ転換
抜け落ちていた期間の債券を補うことで、バーベル型からきれいなラダー型へ転換しました。明確な目的があってバーベル型にしているのではなく、偶然そうなった場合、ベーシックなラダー型へ転換するのが一般的なアプローチと考えられます。
ポイント2)高格付け債券を増やし、平均債券格付けを2段階アップ
このご相談者の目標利回りは平均5%でした。目標が達成できるのであれば、格付けの低い債券をこれ以上増やす必要は低くなります。高格付け債券を重点的に組み入れたことで、ポートフォリオ全体の平均格付けはBBB-からBBB+へ2段階アップし、全体の信用力を向上させることができました。
ポイント3)高利回り環境を利用し、平均利回り低下を0.3%に抑制
高格付け債券を増やしたものの、米国の金利が高いタイミング(高利回り環境)であったため、平均利回りの低下を0.3%(5.6%から5.3%へ)に抑えることができました。
ポイント4)既存債券も含め、ポートフォリオ「一括管理」で最適化を目指す
複数の証券会社で取引している場合でも、自身の資産は一体として考えた方がよいでしょう。債券ポートフォリオも証券会社ごとではなく全体で見渡し、既存の債券を残したまま不足している部分を追加投資で補う「一括管理」の発想が重要と考えます。
本日は「【実例】米ドル建て債券を複数証券会社で最適化した方法と手順」という内容でお届けしました。
私たちウェルス・パートナーでは、富裕層の皆様の資産状況やご要望に応じた個別最適な資産運用をサポートしております。「保有している米ドル債券のバランスに不安がある」「複数の証券会社に資産が分散していて全体像がわからない」など、資産運用に関するお悩みやご相談がございましたら、どうぞお気軽に個別相談へお申し込みください。