2025
12/05
債券 米ドル債券 債券ポートフォリオ

はじめに

皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
今回のテーマは、「富裕層が注目している?米ドル円ハイブリッド債券ポートフォリオ最新設計例」です。

円高リスクを恐れる富裕層の皆様、お待たせいたしました。このメディアでは、米ドルを中心とした外貨建て債券の話は数多く取り上げてきましたが、日本国債を含めた円建て債券に関しては、お話しする機会があまりありませんでした。日本は長らく超低金利が続き、利回りが0.1%~0.2%台にとどまっていたため、これまでは投資対象としての魅力が乏しかったからです。

しかし昨今、政策金利の引き上げやインフレ基調の高まりを背景に、日本円の金利が上昇しています。その結果、円建て債券利回りも上昇傾向であるため、外貨建て債券だけでなく円建て債券をポートフォリオに入れても、大きく利回りが下がらない状況になりつつあります。つまり、ようやく外貨の利回りに日本円の利回りが追いつき始めたといえるわけです。

このような金利の変化を踏まえ、今、米ドル建て債券と円建て債券を組み合わせた債券ポートフォリオで資産運用することが、多くの富裕層に注目されています。実際に、私たちがご提案させていただく機会も着実に増えています。今回は、米ドル円ハイブリッド債券ポートフォリオの最新設計例についてお伝えします。

今回の内容についてはYouTubeチャンネル『世古口俊介の資産運用アカデミー』でもご視聴いただけます。

日米10年国債の利回り推移(過去5年)

まずは米ドル建て債券、円建て債券の利回りの大元になっている、日米10年国債の利回りの推移(過去5年)を見ていきましょう。青色チャートが米10年国債利回り推移で、橙色チャートが日本の10年国債利回りの推移です。

米10年国債利回りは元々高い水準にあり、2025年11月現在で4.1%と、4%を超える水準で取引されています。一方で、日本の10年国債利回りは、2021年にはほぼ0%、日本債券に投資しても、得られる利回りは0.数%という状況でした。

しかし2022年以降、世界的なインフレやそれ以降の日本の政策金利の引き上げを背景に、10年国債利回りは徐々に上がってきています。2025年11月下旬には1.8%台まで上昇しており、この数年でかなり上昇傾向にあるのがわかります。

さらに期間が長くなると金利は高くなり、20年国債で2.8%、30年国債では3.3%程度に達しています。日本の円建て債券もそこそこの利回りが得られる状況になってきているのが、このチャートから読み取れるでしょう。

このような日本の金利上昇が、「米ドル建て債券だけでなく、日本の円建て債券を組み合わせて運用する」という、米ドル円ハイブリッド債券ポートフォリオの需要が高まったきっかけとなっているのです。

資産配分(当初)

米ドル円ハイブリッド債券ポートフォリオにすることが、“何に最も影響を与えるのか”、そのポイントをお伝えするために、資産配分の実例を用いてご説明します。こちらは、当初の資産配分シートです。

ご本人情報は、40代後半の男性の方で、家族構成は奥様と長女の3人家族。職業は会社経営者ですが、現在は売却済みの会社の雇われ社長として年収1,800万円を得ています。国内不動産はご自宅です。

資産状況としては、会社売却代金が中心で4.5億円をお持ちです。それ以外には日本株式や海外株式を保有しており、国内不動産はご自宅で1億8,000万円、住宅ローンは8,000万円残っています。まさに典型的な会社売却富裕層の資産背景といえるでしょう。

この方のご要望は4つです。1つ目は「会社売却代金4億円の有効活用」、2つ目は「安定的なインカムゲイン収入の獲得」、3つ目は「不動産は除き、金融資産は債券だけに限定したい」、4つ目は、「円高リスクをできるだけ抑えて資産運用したい」ということです。

本来、インカムゲインが目的の場合、海外債券を中心に組むべきです。しかし、この方のご要望は、「できるだけ円高リスクを抑えたい」ということなので、全体の外貨比率を過度に高めずに、インカムゲインを重視した資産運用をする点がポイントとなります。

資産配分(先進国債券のみ)

このようなご本人状況と資産状況、ご要望を踏まえて、米ドル円ハイブリッド債券ではなく、米ドル建て債券だけで売却代金4億円の資産運用した場合、全体の資産配分はこのようになります。

減少させる資産は現預金4億円、増加させる資産は先進国債券4億円です。このように米ドル建て債券だけで運用すると、外貨比率は72%になります。つまり、資産全体の約7割が外貨建て債券となり、投資後にドル安・円高が進んだ場合は、マイナスの影響を大きく受けてしまいます。これでは、この方の「円高リスクを抑えた形で資産運用したい」というご要望が満たせません。

では、米ドル建て債券だけでなく、円建て債券、すなわち日本債券も含めて投資するとどうなるでしょうか。まさに今回のタイトルのように、米ドル円ハイブリッド債券ポートフォリオで運用すると、資産配分がどのように変化するのかを見ていきましょう。

資産配分(先進国債券+日本債券)

こちらは、先進国債券と日本債券に投資するケースです。減少資産は現預金4億円、増加資産は、先ほどは4億円全額を先進国債券に投資しましたが、ここでは先進国債券に3億円、日本債券に1億円という配分にしています。

このように配分すると、外貨比率は55.3%になります。先進国債券のみに投資した場合の72%と比較すると、17%低下しています。外貨比率が2割近く下がっているので、投資後に円高に進んだとしても、ダメージを大きく抑えることができます。したがって、この方のご要望である「円高リスクをできるだけ抑えた資産運用」が実現できている状態です。

特に相場観がないのであれば、外貨比率は50%のニュートラルな水準を目指すべきです。今回の55%という比率は、それに近く、バランスの取れた資産配分といえるでしょう。

この米ドル円ハイブリッド債券ポートフォリオに投資する本質的な考え方は、先進国債券に全額投資すると高くなってしまう外貨比率を、円建て債券を加えることによってコントロールすることにあります。外貨比率を高めずに、円高リスクを抑えながら、債券運用ができるという経済効果が得られるわけです。

米ドル円ハイブリッド債券ポートフォリオ最新設計例

今回のテーマである、米ドル円ハイブリッド債券ポートフォリオ最新設計例をお伝えします。このポートフォリオのポイントは、20債券中5債券が円建て債券になっている点です。

具体的には、No. 4(残存期間9.1年)、No. 9(残存期間15.1年)、No. 11(残存期間19.1年)、No. 14(残存期間23.1年)、No. 20(残存期間29.1年)の日本国債です。このように、期間を分散しながら組み入れた円建て債券5債券と米ドル債券15債券のハイブリッド債券ポートフォリオとなっています。

発行体(業種・国)は、米ドル建て債券は、さまざまな業種・国の社債で、アメリカの企業が多く入っています。その他の円建ての債券は、全て日本国債です。債券種類は、普通社債が多く、次いで日本国債、そして期限付劣後債も何銘柄か入っています。

通貨は米ドルと円で、投資金額は、先ほどの資産配分の通り、米ドル建て債券が3億円、日本債券が1億円、合計で4億円の債券ポートフォリオで20銘柄に投資しています。

保有比率(1債券の債券ポートフォリオに対する比率)は5%です。残存期間は、上から4.6年、5.4年、7年、9.1年と続き、長いものでは28年や29.1年のものが入っており、平均の残存期間は17.5年です。

債券格付けは、低格付け債BB+が1銘柄入っていますが、それ以外は基本的に投資適格債となっています。債券格付けBBB台のものからA台、AA台がバランスよく入っており、S&Pの格付けで、日本国債A+のものが結構含まれているので、A台の債券が比較的多く、平均格付けはA-となっています。

全体平均の利率は3.9%、利回りは4%台中盤から後半の利回りの債券が多く、円建て債券は利回りが低めです。日本国債は期間が短いもので1%台、15年くらいの期間のものは2.2%、期間が一番長くて3.1%となっています。平均利回りは4.2%です。以上が米ドル円ハイブリッド債券のポートフォリオ最新設計例となっています。

ポイントとしては、円建ての日本国債をポートフォリオに入れると、利回りが低いため、全体の平均利回りが低下する点です。そこで重要になるのは、その平均利回りの低下をできるだけ和らげるために、ポイントごとに比較的利回りが高い米ドル建て債券を入れていくことです。

特に、期限付き劣後債や、利回りが高い米ドル建ての長期債、低格付け債を組み入れることで、日本国債による利回り低下を緩和することができます。これにより、平均利回り4.2%、つまり、4%以上の利回りを維持することができているのです。

まとめ

最後に、今回のテーマである「富裕層が注目する米ドル円ハイブリッド債券ポートフォリオ最新設計例」をまとめます。ポイントは4つです。

ポイント1)日本国債を含めた円建て債券は利回り上昇傾向

日本の10年国債は、1~2年前は利回りが0%台で推移していました。投資するには利回りが低すぎる状況でしたが、足元では利回りがかなり上昇してきており、10年国債で2025年11月下旬には1.8%、 20年国債は2.8%、 30年国債は3.3%程度まで上昇しています。円建て債券も投資に値する利回り水準になってきたといえます。このような背景から、米ドル建て債券だけでなく、円建て債券を加えてハイブリッド債券ポートフォリオにする富裕層が増えていると考えられます。

ポイント2)外貨比率を低下させ円高リスクを抑える秘策

米ドル円をハイブリッドにする本質的な目的は、外貨比率を低下させることによって、円高リスクを抑えることにあります。米ドル建て債券のみに投資した場合、先ほどのケースでは外貨比率が70%になってしまったため、4分の1を円建て債券にすることで、外貨比率を50%台にまで引き下げることが可能になりました。円高リスクをできるだけ抑えることができる点が最大のメリットであり、米ドル円ハイブリッドの本質的な意義と考えられます。

ポイント3)劣後債や長期債、低格付け債で利回り低下を緩和

円建て債券を入れると、基本的にポートフォリオ全体の平均利回りは低下してしまいます。それを回避するためには、ある程度のリスクを取って劣後債や長期債、低格付け債、今でも利回りが5%台、高いもので6%程度の債券をポートフォリオに入れることによって、平均利回りの極端な低下を緩和することが可能です。米ドル円ハイブリッド債券の戦略においては、これが重要となります。

ポイント4)円建て債券は日本国債に偏る可能性が高い

円建て債券は、米ドル建て債券ほどラインナップがありません。米ドル建て債券の場合は、何十から何百に及ぶ企業が発行している債券から選定することができますが、円建て債券はそれほど選択肢がないのです。ほとんどが日本国債になるため、ポートフォリオに組み込む円建て債券は、日本国債に偏ってしまう可能性が高くなります。先ほどの最新設計例でも、5債券全てが日本国債でした。

これは、流動性の高さや売り買いのしやすさによるもので、選択肢の少なさから、日本国債に偏ってしまう可能性が高くなってしまうのです。円建て債券を債券ポートフォリオに入れるデメリットといえるでしょう。

本日は「富裕層が注目する米ドル円ハイブリッド債券ポートフォリオ最新設計例」という内容でお届けさせていただきました。

私たちウェルス・パートナーは富裕層の方の資産運用をお手伝いしております。「為替リスクを抑えながら、安定した利回りを確保したい」「ご自身に合ったポートフォリオを検討したい」などお悩みの方は、ぜひ一度無料相談にお申し込みください。

本記事の著者

世古口俊介
世古口俊介 代表取締役
プロフィール
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者14万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
当社での役割
超富裕層顧客の資産配分と税務の最適化提案。
特に上場会社創業者の複雑な相続対策や優良未上場企業の組織再編に注力。
同社の代表として書籍の出版や日本経済新聞、週刊東洋経済、ZUUonlineなど各種メディアへの寄稿、投資教育普及のために子供向けの投資ワークショップなどを開催。

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